アクアリウム用濾材の選び方(シポラックス、パワーハウス、etc..)

市場には多くの濾材があって次々に新製品が出てくる。能書きには、「PHを安定させます」「○ミクロンの微細な構造により△に匹敵する広大な濾過面積を確保しています」などと書いてある。「今度の濾材はよさそうだ」能書きを信じ込んで高価な濾材を買っては見たものの、結局今までと大して変わりない。むしろ、安直な濾材交換によって魚の調子が悪くなってしまった、なんて経験はないだろうか。濾材の能力が何によって決まるのか、知っていればこのような結果にはならないはずだ。

濾材の能力について、これまでに判明したことを次に示す。

・生物濾過能力は、水との接触面積によって決まる
・長期的な有効面積は、微細なおうとつを無視した表面積だけになる。 (微細な構造は発生するバクテリアによってすぐに詰まり、ろ過能力と無関係になる)
・生物濾過膜の表層から5ミクロンより深い部分は、酸素が届かないため機能しない。
・多孔質の濾材はツルツルのものよりバクテリアの定着が良い。

 

以上のことを押さえておくと、市販されている濾材の濾過能力をある程度推測できる。こちらで計算した結果を次に示す。オリジナル濾材=洗車スポンジ濾材だ。

graph

 グラフの縦軸は単位体積あたりの濾過能力で、薄い色のバーが初期性能、濃い色のバーが長期性能を表す。

 まず「初期性能」から見ていこう。初期性能とはインストールしてから最初の濾過膜が完成した時点の性能をいう。この時期は濾材表面の1ミリ以下の細かいおうとつも濾過に寄与するため、このような凹凸の多い濾材ほど性能が高い。
 シポラックスなどのリング状濾材は真ん中に穴がまるまるムダであり、粒のサイズも大きいため無駄な隙間が沢山出来る。これらのリング状濾材は砂やスポンジ類に比べ単位体積当たりの濾過能力は低いと見られる。

 大磯砂やサブストラットなどの粒状濾材の一粒の表面積は小さいが、粒が小さいほど隙間が狭くなるので体積あたりの表面積が大きい。

 洗車スポンジ濾材は、スポンジの細かい気泡の表面積と、濾材の内部まで水が通り内部も気泡の表面積まで濾過に寄与することから、粒の大きさが同じでもサブストラット等の粒状濾材より濾過能力が高いと見られる。バイオキューブよりも洗車スポンジ濾材の方がいいのは、洗車スポンジ濾材の方が単純に粒が小さい(隙間が狭くなって体積あたりの表面積が大きくなる)ためだ。

 ウールマットはマットの内部まで水が浸透し、細かい繊維の表面にバクテリアが取り付きやすいため初期性能はかなり優れる。同じ内部まで水が通るスポンジ濾材と遜色ないと考えられる。

 

 次に「長期性能」を見てみよう。長期性能とはインストールしてから半年前後経過した頃の状態を示す。この時期は増殖したバクテリアによって細かいおうとつがすべて埋まっている。その結果、1ミリ以下のおうとつを無視した形状の表面積だけが濾過に寄与すると考えられる。

 リング状濾材でエーハイメックよりもシポラックスの性能低下が大きいのは、シポラックスのほうが多孔質になっていて初期に作用したであろう細かいおうとつがバクテリアで埋まってしまったことによる。

 粒状濾材でも細かいおうとつがあるものは詰まった分だけ性能が落ちる。もともと表面がのっぺりしている大磯では粒が小さすぎるため粒同士のスキマにバクテリアが詰まって性能が落ちてしまう。

 洗車スポンジ濾材でも細かい気泡が詰まることで性能が落ちる。単一サイズの気泡しか存在しないバイオキューブでは表面が詰まることで内部への水の通りも悪くなることから性能低下が大きい。
 洗車スポンジ濾材の性能低下が小さいのは、小さな気泡と大きな気泡が入り交じっている構造に関係している。すなわち大きな気泡は詰まらず、その表面積がそのまま濾過に作用することを考慮した結果だ。

 最後にウールマットだが、当初高い性能を発揮したものの、すぐに詰まって急激に能力が落ちる。内部が完全に詰まってしまい、マットの表面だけが濾過に寄与する形になるだろう。当然、濾過能力は最低となる。

 

 ウールマットは繊維が細かいため、一度詰まると再生できない。また、ウールマットの実体はナイロン繊維であり、吸水性があって水に漬けておくと著しく劣化する。これらの点から、ウールマットは濾材に適さない材料といえる。ウールマットを使うと最初は調子よいが、半年くらいで急激に性能が落ちて破綻。この繰り返しになりやすい。

 生物濾材はメンテナンスをできるだけしないで済むようにすることが大切だ。生物濾材に発生するバクテリアは水槽の命である。これを触ると水質が不安定になり、病気の発生など様々なトラブルの原因となる。「1ヶ月で交換が必要」と書いてある濾材があるが、とんでもない話である。まじめに交換していたら、1ヶ月毎に水槽の調子が悪くなってしまう。1ヶ月で交換を薦めるのは、消費を促すためにほかならない。

 リング状濾材のメリットは通水が良く詰まりにくい点であり、これは水族館や水処理施設などの大きな濾過層で大量に使うのに適していて、一般家庭で使う小さな濾過層には適さない。

 濾材の材料はセラミックやスポンジ、プラスチック、石など様々だが、材質と濾過能力にはなんの関係もない。値段の高いものほど高い濾過能力が期待できると考えるのは間違いだ。

 

こんな商品は避けたい

 溶出物によりPHを安定させるという商品。濾材が水質影響を与えると、水槽システムの管理が難しくなる。 濾材からアルカリ成分などの溶出物があり、面倒な前処理や熟成が必要な商品は使いにくい。 天然繊維でできたもの。バクテリアの酸化作用により溶けてくる。溶けてしまうような濾材は基本的に使えない。 定期的な交換や目詰り再生の必要性をうたった商品。

 一般的なアクアリウムの濾過システムでは、物理濾過と生物濾過を分離し、生物濾材については洗わない、交換しないことを原則として運用すべきだ。定期的に交換が必要な商品は、最初から使えないものと考えておきたい。

 

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