バクテリア商品は役に立つか

 安定した水槽には沢山の種類のバクテリアが住みつき、多様な働きをしているという。人間社会に例えていうなら「菌社会」だ。水を浄化するバクテリアとして、「ニトロソモナス」「ニトロバクター」が知られているが、これは菌社会全体から見れば一部に過ぎないという。

 これらのバクテリアは空気中からやってくる(魚や水草を購入した場合は、それらにも付いてくる)。そのためバクテリアの付いていない新品の器具を使って水槽を立ち上げても、その環境に適したバクテリアが自然に増えて菌社会が形成されていく。これがいわゆる、水槽の立ち上げだ。
 水槽が立ち上がってからも空気中から様々な種類のバクテリアが入り込むが、いったん形成された菌社会が変わってしまうことは、ほとんど無いらしい。何らかの原因で水槽の環境が大きく変わった場合は、新しい環境に適合する菌社会が自然に形成されていく
 菌社会の中身(菌相)は、地域によって異なる。北海道と沖縄では、立ち上がった水槽の菌相が必ずしも等しいとは限らない

 以上まとめると次のようになる。

 

  • 水槽の中の菌社会は、多種のバクテリアによって成り立っている(数種類の菌だけではない)。
  • バクテリアの種菌は空気中にある。
  • あとから入り込んだバクテリアによって、菌社会が変わってしまうことはほとんどない。
  • 水槽の環境が変わった場合は、新しい環境に適合する菌社会が自然に形成される。
  • 菌社会の菌相は、地域によって異なる。

 

 以上の知識を前提に、市販のバクテリア商品を考察してみる。市販のバクテリア商品の多くは、現実の水槽の環境とは異なる環境で純粋培養された単一の菌、あるいは、その組み合わせであることが多い。その菌が、ある特定の化学物質、例えばアンモニアや亜硝酸に対して高い浄化能力を発揮するというのはおそらく事実だろう。
 多くのバクテリア商品が「定期的な投入が必要」としているのは、その菌が水槽内の環境で生きられないことを意味している。

 仮に、短期間能力を発揮したとしても、その効果は菌社会の働きに比べ限定的だ。市販のバクテリア商品を定期的に投入しても目立った改善効果が認められないのは、このためだろう。無論、市販のバクテリア商品だけで水槽を維持することはできない。

 水槽システムが何らかの原因で破綻した場合のリカバリーで役に立つだろうか。この場合、水槽内には、それまでの菌社会が存在する。そこへ特定の化学物質だけに働く市販のバクテリア商品を投入しても、改善がほとんど期待できないことが想像付く。

 

 水槽をセットアップした初期に投入することで、早く濾過が立ち上がると称する種菌はどうだろうか。このような種菌を使うのは有効に見える。しかし最初に投入した種菌が、そこで順調に増殖していく保証はない。水槽が立ち上がってみたら、最初に投入した種菌は死滅してしまい、まったく別の菌相になっていることも十分ありうる。

 水槽セットアップ時に投入する種菌は、工場で培養された菌ではなく、その場で育った菌社会をそっくり保存したものが一番良い。濾材を乾燥させるとバクテリアの数が激減するが、死滅するわけではない。乾燥した濾材の中に菌社会の構造が保存されるという。使い古しの砂や以前使った濾材を使うと水槽の立ち上がりが早いのは、そのためだろう。

 水槽内の菌社会は、管理の仕方によって良くも悪くもなる。水槽内の環境を適切に管理し、菌社会を維持することは、安定した環境を維持する上で大切なことだ。

 

<関連商品>
バクテリア商品一覧 あまり役に立たないバクテリア商品