カーオーディオの音質を良くする~なぜ大半が満足できずに終わるのか

 カーオーディオに大枚はたいて「確かに音は変わったが、お金をかけた割には良くならない」結果に終わるのはなぜだろう。プロショップの多くは、お客様が選んだ商品をポン付けするだけ。用品店との違いは、制振材を貼る以外あまりないという。
 正しい手順でクオリティアップを検討することで、驚くほど少ない予算で満足いく結果を得られる。今回このノウハウをご紹介したい。

 

なぜ大半の人が満足できずに終わるのか

 カー用品店やプロショップに相談すると、価格別のセットプランを見せられて「どれにしますか?」と聞かれる。「じゃあ、これでお願い」といってクルマを預けてしばらくすると、「できました」と連絡が来る。「調整はしました?」と聞くと「やっときました」というだけ。これで満足いく音が出るだろうか。

 

 この流れには、良くない点がいくつかある。1点目は、クルマに何を付けるべきか、先に決められないものを最初に選ばせていることだ。

 最初に選んだ機器が自分のクルマにマッチするとは限らない。いくつかのプランを試してみて、ベストなものを採用するのが本当だ。ベストが「純正スピーカー+イコライザーチューン」の場合もある。

 

 2点目は、ろくに調整をしないことだ。本来は人が座る座席位置(前席2点+後席2点)の周波数特性を測定してイコライジングなどで適切にレベル調整する必要がある。結果によっては、スピーカーを交換したり、制振材や吸音材の配置を見直すことも必要になる。

 最近はDSPでこの調整(音場補正)を自動でやる仕組みもつ商品がある。これを利用して「やりました」とするショップもあるようだ。このような機能は役に立たたず、意味ない(かえって害になる)ことは以前ご紹介した(後述のリンク参照)。

 

 

プロショップに期待する仕事

 プロショップは、本来こうあるべきだ。

 ・お客様と決めるのは、音創りのコンセプト(後述)と予算。その予算の中で、出来る限りのトライをする。
 ・自分で測定検証した素材(スピーカー、アンプ)しか使わない。
 ・バラックの状態で測定と視聴を繰り返し、本決まりしてから初めてインストール(設置)を行う。
 ・純正スピーカーを社外品に変える場合は、両者の測定データを提示し、変える理由を説明できる。
 ・サービスホールを塞ぐ場合は、塞ぐ前後のインピーダンス測定データを提示して、塞いだ理由を説明できる。

 多くのプロショップは取り付けのプロであって音のプロではない。音を調べたり調整するためには、マイクロフォンや計測機器が必要。しかし、こういった計測器を保有し、きちんと活用できているプロショップは残念ながらほとんどないようだ。

 カーオーディオから出てくる音は、付けた物の合計金額ではなく、技術で決まる。出来るだけシンプルな構成でいい音を出す。それが本当のプロの仕事ではないだろうか。

 

 

仕上がりの問題点

 社外品を取り付けると、コンポーネントやスピーカがチカチカ・ギラギラ目立った、いかにも「取って付けた」ような仕上がりになってしまうことが多い。

 私たちにとって望ましい仕上がりは、インテリアと調和していて目立たないもの。例えば、

 イルミネーションやスイッチの形が周りと整合した、まるで純正のような仕上がり。
 スピーカーは巧みに隠蔽され、ほとんど目立たない。音を出すと、素晴らしい感動の世界に浸れる・・・

 これが理想とする仕上がりの一つだ。

 

 

音創りのコンセプトを明確にする

 クルマには、その車格やキャラクターに応じたふさわしい音色というものがある。室内のロードノイズ、空調ノイズ、走行時の振動も、これを検討する上で無視できない要素だ。
 一番望ましい結果は、クルマに合った音創りをおこない、お互いが引き立て合うようにすること。

 例えば、次のようだ。

・スポーツカーには、走りを盛り上げるパンチの効いた低音と、切れのいい高域を備えたエネルギッシュなサウンド
・オープンカーには、ロードノイズや排気音にマスキングにされないだけの、十分な低音を確保した低重心サウンド
・室内が静かで走りが上質な高級車には、透明感のある上質な音色

 オープンカーのようなロードノイズの大きい環境へ、上質な音色を求めるのは無理なこと。
 いずれにせよ、どのような方向で音創りを進めるのか。それを最初に考えて決めなければならない。

 

 

クオリティアップの順序

 一般に、改善を考える順番は次のようになる。

  1. イコライジング
  2. エンクロージュア
  3. スピーカユニット
  4. デッキ
  5. 外部アンプ

 クオリティアップを考える際、大切なことがある。純正でついているものを出来る限り活用することだ。大抵はここを真っ先に変えて失敗する。

 高級車ではカーオーディオにも力を入れている。エンクロージュアやパネルの振動、室内音響まで考慮した専用たチューニングがされているものを、社外品に換えて純正を越える音を創ることは困難だ。

 純正で揃えたR32スカイラインのコンソール。純正のメリットは、デザインや音質がバランス良く仕上がっている点にある。
 社外品に変えると、統一感がなくなりデザインが破綻してしまうことが多い。

 

 ボタンやイルミの色を周囲と合わせることの重要性は、液晶画面になっても同じ。
 写真はホンダのフィットにストラーダを組み合わせた例だが、青っぽい表示デザインが周囲とマッチしない。このあたり、メーカーにもう少し何とかしてもらいたいもの。

 

 

 

イコライジングチューン

 最初にイコライジングチューンを試みる。純正スピーカーのままでも音質を劇的に改善できることがある。
 イコライジングチューンをするためには、7バンド以上のイコライザー機能を持つデッキが必要。
 (詳細記事があります。後述のリンクをご参照ください)

 

 

エンクロージュアの改善

 エンクロージュアとは、スピーカの背面を覆う囲いのこと。スピーカの裏から出た音が表に回ると相殺する。特に低音が相殺されやすく、スピーカを裸でならすと、ほとんど低音が聞こえない。

 そこで、スピーカの裏から出る音を遮断する「エンクロージュア」が必要になる。クルマでは、ドアトリムの内側や、天井裏、トランクルームの空間がこれに利用されている。

 エンクロージュアで重要なことは、その空間を形成している壁の「音の通りにくさ」と「振動のしにくさ」。低音を遮断するためには、厚みのある頑丈な壁が必要になる。

 

初級編

 安いクルマでは、エンクロージュアの作りにコストをかけられないため、ペナペナ&スカスカになっている。ここを改善すれば、そこそこクオリティアップが期待できる。

 具体的な改善策は、ドアトリムの内側や、スピーカが固定されている板(バッフル板)に制振シートを貼ることになるが、注意点がある。

 ドアパネルのサービスホールの様子。写真はホンダのフィット。サービスホールを塞いで密閉に近くしてしまう例を見るが、ここはダクト(共鳴器)として作用することも考えられるるので、塞ぐとかえって低音が出なくなる可能性がある。

 何か問題があって、そこが原因である確証がない限り、いじらないのが無難。

 

※インピーダンス特性を測定すると、問題が見えてくる。

 

 安いクルマでは、スピーカのフランジにパッキンが無い場合がある。フランジのあたり面はとても重要な部分だから、パッキンが付いてない場合は必ず追加する。

 

中級編

 ドアの外板内側や内張りに吸音材を貼り付ける。吸音材を入れる目的は、定在波の防止。具体的には、平行な面ができる部分のどちらか片方に20~30mm程度のものを貼る。水を被るので、吸水しやすく乾燥しにくい素材を使わないよう注意。

 エンクロージュアがしっかりしてくると、吸音材の入れ方や量によって音が大きく変わることに気が付く。基本的には、吸音材の量が多いほど音はデッド(元気がなくなる感じ)になっていく。
 試聴を繰り返しながら、トライアンドエラーで適量を探る。良くわからない場合は、必要最小限にとどめておく。

 一般ユーザーやプロショップができるのは、ここまで。

 

上級編

 エンクロージュアにいくら鉛を貼っても、振動(透過音)を完全に押さえることはできない。そこで、ドアトリムの振動特性を考慮に入れてトータル的にチューニングする。

 内部の吸音材や鉛シートの配置、適切な補強によって、ドアトリムの鳴り具合(振動モード)をコントロールし、ドアトリムをきれいに鳴らして音色的にプラスになるようもっていく。

 これをやるには、振動センサーとFFTアナライザなどの解析ツールが必要になる。この調整はメーカーが高級車を対象にすることであって、一般ユーザーが同じことをするのは困難。

 

 

スピーカの交換

 

スピーカーのレイアウト

 4~5人乗りのクルマのリスニングポイントは、前席2点、後席2点、合計4点ある。基本的に、フロントから中高域、後から中低域が出るようにする。後ろから中高域を出すと後ろに座る人がうるさくてたまらず、会話の支障になりやすい。スピーカーはこれに従い、

 フロント2way(ウーファー+ツイーター)+リアウーファ

の6スピーカーとする。これ以上ユニットが増えると音をまとめることが難しくなる。

 低音が不足する場合はリアウーファーの中域をカットする。100Hz以下でクロスさせ、アンプを入れて低音専用にする手もある。このあたりは測定データをもとにトライする内容だが、アレコレ追加せずシンプルにまとめる。

 

サブウーファーは必要ない

 サブウーファーは50Hz以下の低音再生を受け持つが、この帯域はロードノイズに埋もれやすいため、再生できても聞こえにくい。それに、50Hz以下に重要な音が含まれる音楽ソースそのものが少ない。
 50Hz以下をきちんと再生するためには口径25cm以上必要なので、配置すると収納が犠牲になりやすい。

 

再生周波数限界はエンクロージュアとセットで考える

 低域の再生限界は、エンクロージュアの容積と、スピーカのf0(最低共振周波数)で決まる。カタログに書かれている裸の再生周波数帯域は、エンクロージュアによって変わる点に注意したい。

 低域再生限界はスピーカの口径が大きいほど有利だが、いくら大きいスピーカーを用意してもエンクロージュアの容積が小さいと低音は出ない。

 逆に、容積に対して小すぎるスピーカをつけた場合、同じようにスピーカの能力が発揮されない。

 

能率(出力音圧レベル)に注目する

 能率が高いものほど応答が良く、生々しい音が飛び出すスピーカーだ。最低ラインは90dB。何を付けるにせよ、これ以下の商品は避けた方がよい。能率の高いスピーカーを使えば、外部アンプも不要になる。

 スピーカーの音色はこの能率と、振動板の材質、サイズなどでだいたい決まるもの。ブランド固有の音色を期待したりセールストークに感化されないよう注意したい。

 

ウーファーはごく普通の商品を選ぶ

 紙を使った、ごく普通の地味な顔をした商品が音質的に優れていることが多い。
 スペックは低域側ではなく、高域側の再生限界に注目する。これが高いほど、ツイータとの音のつながりを自然にできる。

 コーンの素材は、紙などの天然繊維系がベスト。コーンを軽く指ではじいてみて、プラスチック的、金属的な音がするものは避けたい。

 リアウーファーを純正で後部ドアにマウントできる場合はまずはこれを優先する。トランクや後部座席の後ろは、できるだけ避ける。

 

ツイーターは音のキャラクターを決定づける

 上で書いた音創りのコンセプトはツイーターの選択で反映させる。ツイーターの音色は主に振動板の材質で決まる。これを、音創りのコンセプトに即したものを選ぶ。例えば、

 上質な音色を求める場合は、ソフトドームなどのソフト系の振動板を持つものを選ぶ。
 エネルギッシュな音色を求める場合は、アルミやチタンなどハード系の振動板をもつものから選ぶ。

 スペックは高域側ではなく、低域側の再生限界に注目する。そして、できるだけ低いクロスオーバーで使うことがポイントになる。

 

コアキシャルタイプはNG

 カー用スピーカではウーファとツイータが一緒になったコアキシャルタイプをよく見る。このタイプはまったくお勧めできない。特性のアバレがひどく、まともな音が出ないスピーカーだ。

 

スピーカーケーブルは純正ケーブルをそのまま使う

 ケーブルに固有の音というものは存在しない。ケーブルの抵抗でアンプのダンピングファクター(DF)が変わるだけ。カーオーディオの配線は短いので素材や電線の太さこだわってもほとんど意味がない。

 先行配線されている純正ケーブルがあればそのまま利用すればよい。こういうところに無駄なお金をかけないよう注意したい。

 

音像定位はあきらめる

 2chステレオ再生では音の位相差による音像定位が期待できるが、カーオーディオでは制約が多すぎて良好な定位はほとんど期待できない。前方定位させようとAピラーにツイーターを配置してもドアパネルのウーファーと離れてしまい中途半端な結果しか得られない。

 

 

外部アンプの選び方

 

 外部アンプが必要なケースは、出力素子に音質的に不利なICモジュールが使われている場合だけ。最近のナビ一体型システムでは良質なアンプが内蔵されるケースが増えている。これに能率のいいスピーカーを組み合わせれば、外部アンプは必要ない。

 アンプを選ぶ際、最大出力に目が行くかもしれない。アンプの出力は、スピーカーの能率に合わせて決めるのが本当だ(後述のリンク参照)。半導体アンプは出力の大きなアンプほど小音量の音が悪いので、むやみに出力の大きな商品を選ばないよう注意したい。

 最近、デジタルアンプが普及しており、カーオーディオへの展開が期待される。スペースが厳しいDC電源のカーオーディオには、デジタルアンプがベストマッチする。

 

<参考購入先>
FOCALスピーカ一 良質なスピーカーを求めると海外になりそうです
HELIXのスピーカー
モレルのスピーカー
クルマの制振材一覧 レアルシルト、レジェトレックス、オトナシートは勧めの制振材です

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