オーディオマニアはこうして生み出される

 オーディオ機器を求める最初の動機は純粋だ。「好きな音楽をいい音で聞きたい」その好きな音楽とは、アニメの主題歌だったり、アイドル曲だったり、おさかな天国だったかもしれない。オーディオ機器を買った人たちは、その後次のパターンに分かれる。

 

一般的なパターン

 オーディオ機器のことはまったくわからないので、自分の好きなCDを持って販売店に行く。だいたいの予算が頭にあり、予算内で買えるコンポを店員と一緒に選んで決める。

 買った後満足し、その後オーディオのことは忘れてしまう。ほとんどの場合がこのパターン。

 

幸運なパターン

 いきなりショップに行くのではなく、カタログを収集したり、口コミを見たり、オーディオ雑誌を読んだり、入念な下調べを行って買う人たちがいる。この人たちのことを慎重派、アーリーマジョリティ(Early Majority)という[1]

 一通り予備知識を得ると、ショップに出かける。しかし事前に仕込んだ予備知識と先入観が邪魔をして判断ができない。結局、他人の意見(口チコミ、評論家の評価)や価格(高いものほどいい音がするだろう)を基準に選んでしまう。

 最初のコンポを買って帰るが、それは、雑誌ですべての項目に二重丸が付いていたわけではなく、妥協したものである。他人の意見でモノを選ぶと、そのような不満が心の隅につねに残る結果になる。

「これは仮の姿だ。いつかきっと・・・」

 その後、他に興味の対象ができるなどしてオーディオに関する関心が薄れ、雑誌を見ることもなくなる。

 

オーディオマニアになる人

 最初のコンポを買った後、雑誌の評価が気になって不満を抱き続ける人は、いずれ買い換えようと思って引き続きオーディオ雑誌を熱心に読む。読めば読むほど知識が増えて現状への不満が募る。

 雑誌に紹介されている高価なアクセサリやケーブルに興味を持ちはじめ、高価なハイエンドコンポや、評論家が絶賛する舶来製品にあこがれを抱くようになる。

 こうして、泥沼ともいえるオーディオ機器への投資が始まり、本人も気づかないうちにオーディオマニアになっていく。

 

オーディオマニアの特徴

 いろんな所に出かけて試聴を繰り返すうち、自分の耳に絶対的な自信を持つようになる。そして自分が聴いた結果を、確かな事実だと思い込む。違う意見に出会うと、そっちが間違っている、耳が悪いんだと考える。

 自分の考えを否定する客観的なデータには目を背ける。測定やデータは理屈に過ぎず、音の世界は複雑で人間にしかわからないと考える。

 雑誌がバイブルになっていて、販売サイドの売り文句や、評論家たちの論評が正しいと信じている。機器は高額で見た目が良いものほど音がいいと考える。そのような機器やアクセサリーが資産に見え、エントリークラスがゴミに見える。

 

どこで間違えたのか

 雑誌(評論家が描く主観的な世界)を信じてしまったところにある。特にアーリーマジョリティには慎重な人が多いので下調べをするが、ここで間違った知識を得てしまうことが不幸の始まりだ。

 

まっとうな世界に戻るには

 自力で元の世界に戻る人もいるが難しいと思う。そこで、まず雑誌を読むことをやめることをお勧めしたい。雑誌の代わりに理論派の意見に耳を傾ける。これを続けていけば、次第に認識が変わってくるはずだ。

1995年頃の雑誌 Stereo Sound Stereo Soundは海外の高額なオーディオ機器を紹介する雑誌。

 オーディオ雑誌は読まないようにする。これが、間違った道から戻る方策の一つ。

 

 

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オーディオ雑誌 は読まないことです

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