スピーカケーブルの長さはどの程度まで許されるか

ダンピングファクターと周波数特性の変化 出典:「強くなる!スピーカ&エンクロージャー百科」誠文堂(1980)

 スピーカーケーブルによってアンプのダンピングファクター(DF)が変化する。使うケーブルが長いほどDFが小さくなる。

 DFが下がりすぎると、スピーカのf0やクロスオーバー付近で制動が効かなくなり、音に締まりがなくなり、図のようにその部分の周波数特性が盛り上がる。

 そこで、スピーカケーブルの長さはどの程度まで許されるか、検討してみた。

 

 

ダンピングファクター(DF)の計算式

 スピーカをケーブルで接続したときのDFは次式で表される[1]

 

DF=Rs/(R0+R1)              (1)

 

 Rsはスピーカの公称インピーダンス、R0はアンプの出力インピーダンス、R1はケーブルのインピーダンスである。実際はこれらに端子の接触抵抗も加わる。

 

 

3mのスピーカーケーブルを付けたときDFはどうなるか

 DFが100のアンプがある。これに3mのケーブルを使うとDFはどうなるだろうか。

 式(1)のR0はアンプのカタログスペックから逆算できる。例えば、DFが100のアンプの場合、R1=0、Rs=8として式(1)に当てはめれば、0.08Ω。
 R1は、太さ1.25スケア、長さ3mのスピーカーケーブルを使って接続した場合、ケーブルの直流抵抗が約17mΩ/mだから

R1 = 3×0.017×2 = 0.10 Ω

最後に2倍しているのは、プラスマイナスの往復分。以上求めたR0,R1を式(1)に当てはめると、

 

DF = 8/(0.08+0.10) = 44

 

を得る。アンプのDFが100あっても、3mのケーブルで50以下に落ちてしまうことがわかる。

 

 

DFは最小どのくらいまで許容できるか

 DFは一般に10以上とされる[1]。最初の周波数特性の図を見ても、確かに10あれば元の特性とあまり変わらない。
 そこで、DF=10を最小値として太さ1.25スケアケーブルの長さを逆算すると、26mの結果を得る。Rsが6オームとしても、19m。これは一般家庭では十分な長さだ。

 

 

Qの上昇からDFの最小値を導き出す

 DFによる音質への影響を知るもう一つの指標に、Q(共振倍率)の上昇がある。DFとQの関係は、次式で表される[1]

 

Q = Q0 (1+1/DF)              (2)

 

Q0は、スピーカシステムのQ値で、通常は0.7前後で設計されている。正確な値はf0付近のインピーダンス特性から求めることができるが、少々違っても大差ないのでQ0=0.7として差し支えない。

 DFが10のとき、式(2)からQ0に対しQは約10%上昇する。耳のいい人は聴感でわかるかもしれない。ここでケーブルを5mとすると、DF=37、Qの上昇率は3%未満になる。このくらいなら「変わらない」と考えてよさそうだ。

 この計算値は、ケーブルの直流抵抗が17ミリオーム/m (1.25スケア)、という仮定がある。太さが違うと結果が異なるので注意したい(後に明確な指針を導出しました。詳細は下の関連記事をご参照ください)。

 

 

端子の接触抵抗でDFが上昇する

 R0やR1の大きさから考えると、アンプやスピーカ端子の接触抵抗が無視できないことがわかる。剥いた電線を裸で繋ぐと良くないのはもちろん、Y端子やバナナプラグを使う場合もその選択に慎重を要する。

 スピーカーケーブルの端末処理は、スズメッキされたごく普通の圧着端子(JIS規格品)を使うのが、接触抵抗を最も小さく接続できる手段の一つだ。

 

<関連商品>
スピーカーケーブル一覧

接点の接触抵抗を安定化させるためにコンタクトオイルが有効です。
潤滑保護剤(Rationalシリーズ)

<関連記事>
スピーカーケーブルの関連記事

<参考文献>
1.「強くなる!スピーカ&エンクロージャー百科」誠文堂(絶版)