クラッシックは演奏を選ぶか録音を選ぶか

クラッシックのCD選びは難しい。それは、同じ曲に対し、複数の異なる演奏があるのが原因である。特に有名な曲になると、非常に多くの演奏が存在し、そのレベルや録音も様々である。中には演奏を間違えていたり、なんでこんなものがCDになっているのかと思えるほど内容の悪いものもある。同じお金を出すなら、できるだけ失敗のない選択をしたいと考えるのが人情だろう。

そういう実状も考慮してか、クラッシックのCDには、レコ芸推薦とか、どこそこ視聴室推薦とか言うお墨付きと、寸評が付いている。しかし、それが必ずしも自分に気に入るとは限らない。だから、CDを買うときは勇気が入る。期待も大きいが、ハズレをつかんだ時のショックは、もっと大きい。

これらのCDには、演奏は素晴らしいが、録音がノイズだらけというものもあれば、録音は素晴らしいが、演奏がタコというのも存在する。私はこれまで、演奏と録音がいずれも素晴らしいというものに出会ったことは、一度もない。結局どちらかに妥協しなければならない。

クラッシックファンは演奏を重視し、マニアが問題にするような録音のクオリティにはこだわらない。しかし、特定の楽器の音にこだわる人はいる。私の友人は、弦の音を聞くことでアルファ波が出るらしく、ひたすら弦の音を追い求めて、CDを買いまくっていた。
「弦の音の美しさは特筆に値する」などという論評を目にすることがあるが、CDに録音されている音は所詮、加工された音であるから、それが美しく再生されるかどうか、という議論は「再生の美学」とでも言おうか。

クラッシックファンは、クラッシックを聞くことで、心地よいと感じている。ただ、どの部分に対して心地よいと感じるかは、人それぞれであるようだ。しかし、いくら演奏や音がよくても、全体の音域バランスが悪かったり、他の問題で鑑賞に堪えない部分があれば、やはりボツになってしまうのである。

以下に紹介するCDは、多くのハズレをつかまされた中から抜き出した、気むずかしいクラッシックファンでも納得するであろう、選りすぐりの1枚である。しかし音や音楽には好みもあるので、保証はできない。少なくとも、同じ曲を探している人にとっては、参考になるだろう。

cd1モーツァルト ビアノ・コンチェルト第26番 ニ長調K.537「戴冠式」
モーツァルト ビアノ・コンチェルト第23番 イ長調K.488
マレイ・ペライヤ、イギリス室内管弦楽団、CBSソニー 32DC-567

戴冠式と23番はこれがベストといえる。ペライヤのピアノ演奏はとても美しく、音はハイ落ちでこもったような感じだが、独特の深みと響きのある音色である。

cd2

モーツァルト フルートとハープのための協奏曲 ハ長調 KV299
モーツァルト クラリネット協奏曲 イ長調 KV622
ランパルほか、パイヤール指揮、パイヤール室内管弦楽団、エラート R32E-3001

とかく変な演奏の多いフルートとハープである。まだイマイチ満足できない部分もあるが、総合的にみると今のところこれか。クラリネットのほうはベストに近い。演奏だけでいえばもっと良いものもあるが、音のバランスが悪いので外した。

cd4

マーラー 交響曲 第5番 嬰ハ短調
レナード・バーンスタイン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、グラモフォン(ポリドール)F32G 20247

トランペットのでだしが重要なマーラー。ここにこだわる人は多いのではないだろうか。このCDは、でだしにこだわった一品。録音もなかなかいい。

cd8

月の光/ドビュッシー&ラヴェル・ピアノ曲集
パスカル・ロジェ、ロンドン(ポリドール)F00L-23074

ラヴェル、ドビュッシーのピアノはとても選択肢が少なく、演奏で選ぶとロジェが唯一に近い。このCDは「夢」、「月の光」、「2つのアラベスク」など、人気の曲がすべて入ったベスト版であり、お買い得。

cd7

ドヴォルザーク 交響曲 第9番 ホ長調 作品95 新世界より

ヴァーツラフ・ノイマン指揮、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団、スーパーフォン 33C37-7702

新世界は、第4楽章のでだしが重要である。私は、ドコドコドコという大太鼓からトランペットに続く部分を特に重視している。私の希望としては、大太鼓が力強くわき上がり、すかさずトランペットが堂々と、ハギレよく響くというものである。ずいぶん昔から探しているが、この部分が完璧と思えるものはいまだにない。このCDは、太鼓がちょっと弱く、トランペットも間延びしてイマイチである。しかし、第二楽章は完璧だから、総合的に見ると、いまのところこれがベストである。

  cd3cd6

ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」/交響曲第4番 CBSソニー 22DC 5581
ドヴォルザーク 交響曲第8番 ト長調 作品88 CBSソニー 28DC 5046
ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団

ワルターの作品はどれをとってもハズレがない。録音が古く、ノイズだらけだが、ふくよかな低域と伸びやかな高域のバランスがなかなかいい。このCDを聞くと、音楽鑑賞する上で重要なのは、S/N、透明感といったHi-Fi的な要素ではなくて、バランスなのだなと感じさせる。

 

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