クライオ処理はオーディオ機器を痛める

 星の数ほどあるオーディオ機器やアクセサリを低温にさらすだけで、全く新しい付加価値をもった商品に生まれ変わる。おいしい商売のネタだが、その危険性をご紹介したい。

 

極端な低温は機器にストレスをかける

 電子機器は様々な材質で出来ていて、熱膨張率が違う。特に接着やモールド剤などの樹脂材料は銅などの金属より熱膨張率が高い。高温では金属より樹脂が膨張し、低温ではその逆の現象、つまり樹脂が縮んでいく。

 トランスやコイルなど、銅線を樹脂で固めたものを極端に冷やすと、樹脂が縮んでその強度限界を超えてしまう。その結果、樹脂がヒビ割れて部品がダメになる可能性が高い。

 オーディオコンポーネントを構成している多くの電子部品は、ハンダ付けされる関係上、短時間の高温に耐えるよう作られている。しかしマイナスに対しては保証外。

 クライオ処理すると霜が付き、常温に戻す過程で水になる。これによって接点が錆びたり動作不良を起こす可能もある。

 一度クライオ処理したものは元に戻せないという話がある。確かに、一度ストレスをかけて痛めてしまったものを元に戻すことはできない。

 

ドライアイスを使った、なんちゃってクライオはどうか

 液体窒素を使うとマイナス170℃以下の処理ができるが、取り扱いが大変。そこで、ドライアイスを使ってこれをマネした、「なんちゃってクライオ処理」をするショップが出てくるかもしれない。これは、マイナス80度前後の処理になる。

 ドライアイスを使えば、ケーブルからアンプ、スピーカまでなんでもかんでも処理して、音が良くなりましたよ、といって商売ができる。

 アンプやスピーカを丸ごと低温処理しても機器を痛めるだけで、メリットは何もないと考えられる。

 

クライオ処理で音が変わる理由

 これについて科学的に説明できる根拠が見当たらない。この場合「変わらない」と考えるのが妥当だ。

 理屈はさておき、心理的な効果は期待できる。すなわち、クライオ処理することで精神が涼やかになり、音質が向上するように感じるというのであれば、結構なことだ。

 

どーしても体験してみたい人へ

 金属だけなら好きにやっていい。ケーブルなら中の電線だけ。コネクタなら金属部分だけ。冷やすとき霜を付けたり、常温に戻すとき結露させないよう注意したい。錆びてしまったら本末転倒だ。

 

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