手持ちのレンズをテストしよう

カメラで旅行の記念写真や子供の成長を撮るだけなら、レンズの描写などどうでもよいだろう。しかし、ある程度思い通りの写真を撮ろうと考えた場合、自分が持っているレンズの描写力やクセを、あらかじめ知っておく必要がある。これを知ることで初めて、自在な作品を作ることが出来るといえよう。

 ネット上で見ることのできる撮影サンプルは、周辺部にほとんど何もない背景の真ん中に被写体があって、十分な光量の順光で撮影された物が多い。このような撮影条件下で撮れば、どのレンズ、カメラで撮っても綺麗に撮れるのが当たり前であり、何の参考にもならない。レンズのテストというと、特殊なパターンや撮影機材が必要と思われがちだが、身の回りにある物を使うことである程度調べることが出来る。

 この評価方法は簡易的手法であり、正確さについてはあまり望めないが、アマチュアが自分のレンズを比較したり、傾向を掴むだけなら十分役に立つだろう。また、このような手法が一般に広まれば、レンズの描写力に関する議論が有意義なものになり、レンズ選びの有力な手がかりになると思う。


ピント精度のテスト

 

pintest レンズのテストをする前に、ピント精度をテストしなければならない。ピントが合っていることは、レンズの評価をする上での大前提である。現代ではネット上に多くの写真サンプルを見ることが出来るが、ピント精度を検証していないものは参考にならない。

 このテストは簡単で、雑誌や新聞を斜め撮りして、自分がピンをあわせたところに撮影結果のピンが来ているか、見るだけである。レンズはF解放とし、撮影距離は最短近くで行う。

 デジタル一眼レフでは、ピントがずれていることが多い※。コントラスト検出式ではこのような問題は原理的に起こらないので、テストの必要はない。

※デジタル一眼では、ピント誤差を自動補正する「オートキャリブレーション機能」の登場が待たれる。デジ一眼のピント問題は、CCDのゴミ問題よりも深刻であるにもかかわらず、未だ対策されていない。この機能はいろいろな方法があると思うが、最も簡単で確実なのはコントラスト検出式のAFとの併用だろう

 


収差のテスト

準備

 エクセルの図形描画機能を使い、画面いっぱいに四角形を描いて格子(大)の塗りつぶしパターンで塗りつぶし、A4用紙に印刷する。面倒なら細かい文字が書かれた大きな印刷物でもよい。これを壁に貼り付ける。

撮影のやり方

カメラをしっかりした三脚に固定し、この塗りつぶしパターンがフレームの中から少しはみ出る程度に距離を調整する。画角が広くてパターンが収まり切れない場合は、図のようにフレーム枠の1/4で中央部と端部をカバーするように構図を決める。それも収まらない場合は、中央部と、端部を別々に撮るようにすればOKだ。
 撮影距離が決まったら、レンズの距離リングからこれを読みとるか、コンベックス(金属のメジャー)でテストパターンからフィルム面(CCD面)までのだいたいの距離を測って控えておく※。

※レンズの収差は、被写体との距離によって変わり、近距離になると像面湾曲が増大する。広角レンズでA4用紙を対象とする近接撮影はかなり厳しいテストとなる。

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 レンズとパターンの間は、出来る限り平行になるようにする。レンズには歪曲収差があり、これによるパターンのゆがみをファインダーや液晶モニタ上で上下左右がほぼ同じ歪みになるようにすればいい。照明はこれまでの経験からすると天井にある蛍光灯で十分である。

 テストパターンにピントを合わせたとき、中心にピンを合わせると周辺がボケ、周辺にピンを合わせると中心がボケるのは像面湾曲である。このようなレンズで周辺部の他の収差を評価をする場合は、周辺部にピンを合わせて撮影する必要がある。周辺部がボケている場合は、マニュアルでピンを合わせられるか、撮影時にチェックしてほしい。

 カメラの設定は絞り優先オートにして、偽輪郭を防ぐため輪郭強調はOFFにする。
 撮影は、レンズの絞りをF解放から段階的に絞りながらシャッターを切っていく。シャッターはレリーズが必要で、ない場合はセルフタイマーを利用してほしい。

 ズームレンズの場合は画角ごとに絞りを変えて撮影しなければならないため大変だが、最低限を、望遠端のF解放、広角端のF解放の2枚とし、あとは自分の目的や必要性に応じて条件を追加すればよい。

 テストパターンにピントを合わせたとき、中心にピンを合わせると周辺がボケ、周辺にピンを合わせると中心がボケるのは像面湾曲である。このようなレンズで周辺部の他の収差を評価をする場合は、周辺部にピンを合わせて撮影する必要がある。周辺部がボケている場合は、マニュアルでピンを合わせられるか、撮影時にチェックしてほしい。

 カメラの設定は絞り優先オートにして、偽輪郭を防ぐため輪郭強調はOFFにする。  撮影は、レンズの絞りをF解放から段階的に絞りながらシャッターを切っていく。シャッターはレリーズが必要で、ない場合はセルフタイマーを利用してほしい。

 ズームレンズの場合は画角ごとに絞りを変えて撮影しなければならないため大変だが、最低限を、望遠端のF解放、広角端のF解放の2枚とし、あとは自分の目的や必要性に応じて条件を追加すればよい。

 


 評価

収差の判定

 レンズの収差には、色収差のほか、ザイデルの五収差(球面収差、コマ収差、非点収差、歪曲収差、像面湾曲)が一般に知られているが、格子状のテストパターンを見ることで球面収差と像面湾曲以外のすべてと、絞りによる解像度の劣化(小絞りボケ)も、観察できる。  テストパターンがA4なので、広角レンズでは近接撮影になって像面湾曲が出やすい。周辺がボケる場合はピントの調整で改善できるか、試して欲しい。風景などの撮影では、改善した方の収差が参考になる。

 下記に各収差の症状と区別の方法を示すが、一般には見た目のイメージと絞りとの関係がわかれば十分である。どの部分にどの収差が出ているとか、これは何の収差とか言う細かいことは気にせずに、作品作りの方に専念してほしい。

球面収差
 中央部のピンが甘くなる収差である。ピント精度(後述)と小絞りボケも考えられるから、これらを先にチェックして、関係なかった場合は球面収差である。この収差が多いレンズはソフトフォーカスが特徴だが、ボケが汚く、二線ボケもこれが原因である。この収差は絞り込むことで改善されるが、ボケ味は改善されない。

歪曲収差
 格子パターンの曲がり方で評価できる。非球面レンズを使ったレンズでは単純な樽型、糸巻き型にならず、両方を組み合わせたような複雑なカーブになることがある。建造物などの撮影で問題となるが、それ以外では問題にならないのであまり気にしなくても良い。この収差は絞りには関係しない。

コマ収差
 周辺がボケる形で観測される。像面湾曲や非点収差の可能性もあるから、ピントが合うかどうか、絞り込んで改善するかどうか、先にチェックする必要がある。ピントが合わず、絞り込むと改善する場合は、コマ収差である。この収差は絞りによってコントロールできるので、作品に取り入れて表現に活用できる。この場合、どこまで絞ればどの程度になるか、知っておくことが必要。

非点収差
 周辺がボケる形で観測される。像面湾曲やコマ収差の可能性もあるから、ピントが合うかどうか、絞り込んで改善するかどうか、先にチェックする必要がある。ピントが合わず、絞り込んでも改善しない部分が、非点収差である。この収差は汚い背景の流れの原因になる。

軸上色収差
 被写体のエッジに青や赤の色が付く現象で、青(デジカメではGreenに近い)の反対側には、赤が色づくという特徴がある。望遠レンズで出やすく、絞り込むことで改善される。これ以外の状態で色づく場合は、CCDのブルーミングや、パープルフリンジなど、他の原因が考えられる。 倍率色収差  波長によって像倍率が異なることで発生する色にじみで、広角レンズの周辺部で出やすい。この収差は絞り込んでも改善されない。

小絞りボケ
 一般に絞りは絞るほど収差が小さくなるが、絞りすぎると光の回折によって像がぼやける現象をいう。受光素子の小さなコンパクトデジカメで問題となる。これはF最小の条件で撮影したものを、他の条件のサンプルと画面中央部を比較することで観察できる。格子パターンのサンプルで区別できなければ、実用上問題ないといえる。

 レンズの収差で特に問題になるのは球面収差と非点収差である。これらはいずれも、ボケを生かした作品作りがしずらく、背景がシンプルでないと問題が目立つことから、撮影用途が限定されてしまう。