アンプの出力は大きいほど音がよいか

 アンプのスペックの一つに全高調波歪率(THD)というものがある。パワーアンプのTHDは、横軸に出力をとると「レ」の字を左右反転したような形になっている。

 

 パワーアンプの中には低出力から低歪でフラットになっているものもあるが、大抵は低出力の歪率が大きい。そしてアンプが大出力になるほど、その傾向が大きくなる。これを知らず

「海外製の超弩級アンプを買ってみたら、ラジカセ並の音しか出なかった」

という噂話[1]がある。「アンプの歪率は十分小さく問題にならない」とする意見も聞かれるが、大出力アンプの場合これが当て嵌まらないケースもあることを知っておいて欲しい。

 

 一般的な傾向として、

「同じ音量なら、出力が大きいアンプほど音が悪い」

ことを知って欲しい。例えば、THDが同じ100Wアンプと200Wアンプがあるとする。同じ音量で鳴らした場合は、大抵100Wの方が音がよい(歪が小さい※1)。

※1: カタログデータにみる全高調波歪率は、特に断りがない場合は1kHzにおける全高調波歪率曲線の最も低いポイントを指しているようで、それが何Wの時のものかが、不明なものが多い。音楽鑑賞する上で重要なのは、数Wまでの歪率であるから、ほとんど使わない出力の歪率がいくら小さくても参考にならない。

 

「アンプは出力が大きいほど音に余裕がある」

 オーディオ雑誌でよく見るこの論評は、本当だろうか。トランジスタアンプで音の歪みが聞き取れるほど大音量を出すと大変なことになる。このような大音量ではスピーカの歪みの方がずっと大きいのが普通だ。
 「音の余裕」は大出力アンプの貫禄ある見た目と、数字上のスペックからくる主観にすぎず、理論的な根拠はない。アンプの場合大が小を兼ねることは少なく、過剰な出力はコストや小音量再生の面で不利になるだけで、音質面で得することは基本的に無いと考えておきたい。

 

 NEC A-10 TypeIV(写真は1987年当時のカタログ)。強力な電源部を備え2オームの低負荷駆動に対応。2オームまで駆動できるといっても、そういう負荷を繋がなければ関係ないこと。しかし評論家がオームの法則どおり電流を流せる点を「アンプの理想」などと褒め称えるものだから良く売れた。

 

 私はこのTypeIVを所有していたが、肝心の音がソニー製の小形軽量アンプ(当時ヒートパイプ放熱だった)と聞き比べて差がなかった点と、ボリウムのギャングエラーが大きい点が気になり手放した。

 

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<参考文献>
1.オーディオのナゾ(メインアンプ編) 今日の必ずトクする一言