スピーカの電流駆動は理想か

ネット上には簡単な改造でアンプに電流帰還を追加し、「こんなに音が良くなりましたよ」という実験記事をみかけることがある。

フルレンジスピーカを電流帰還して駆動すると、f0や高域などインピーダンスの高いところで音圧レスポンスが上昇し、図のようにドンシャリ型の周波数特性になる。レンジの狭い小型スピーカに電流帰還をかけると、低域と高域のレスポンスが改善され、レンジが伸びたかのように感じるだろう。

teidenryu しかし、ほとんどのHi-Fiスピーカは定電圧駆動したときに音圧レスポンスがフラットになるよう作られているから、電流帰還をかけると特性そのものが崩壊しまう。レンジが不足する安物スピーカでラウドネスをかける替わりにやるのは弊害が少ないかもしれないが、周波数特性の広いHi-Fiスピーカにそのまま適用するのはムリである。

 

定電流、定電圧駆動の違い 
誠文堂新光社「強くなる!スピーカ&エンクロージャー大百科」(絶版)より

 スピーカケーブルを細くする(抵抗を増やす)と定電流駆動に近づくから、グラフのように低域と高域の制動が悪くなってレスポンスが盛り上がるとともに、音も華やかになる。逆に、ケーブルを細いものから太いものに変えると、低域と高域のレベルが落ちて、落ち着いた感じに変化するだろう。結局ケーブルによる音の変化は、定電圧駆動と定電流駆動の間の、どこかになるだけの話である。

 現代のHi-Fiオーディオでは、アンプはスピーカ端子のところで「電圧波形」を保証してやればよく、あとは「つないだ負荷次第」という形をとっている。負荷の応答をどうにかして!というと、「それはスピーカ側の問題でしょ」ということになっているのだ。

 電流帰還すると電圧帰還で改善できなかった「過渡応答」を改善できるメリットがある。しかし電流帰還は「加速度」ないしは「力」の補償なので、先に書いたようにスピーカーの特性が崩れ、フラットでなくなってしまう。

 

 電流帰還と電圧駆動、どっちがスピーカの駆動に適しているかと問われれば、現状ではやっぱり不完全ながらも速度帰還(ダンピング)が作用する電圧駆動だろう。f0やクロスオーバ付近ではインピーダンスが上昇しDF(過渡応答)が悪化するうが、スピーカシステムは、そういうこともすべて折り込んだ上で設計され、音決めされている。

 スピーカが電圧駆動を前提として作られている以上、設計通りの音で鳴らすには、ユーザー側としては、スピーカーケーブルの抵抗を減らすなど、限りなくDFが損なわれない努力をするのが正解といえる。

 

 オーディオ技術では、スピーカが最も進歩が遅いと言われているが、電流帰還はそれを打開する有力候補であることには間違いない。しかし、スピーカを電流駆動するには、スピーカもそれ専用の設計をしなければならず、接続するアンプも専用でなければならない。しかし、ヤマハのHi-Fi YSTが失敗したように、アンプとスピーカーの組合わせが限定される商品は消費者が受け入れない。
 「応答はスピーカ側の問題よ」と言われることから、スピーカーの中だけで完結する構成(例えばスピーカーに専用アンプを内臓し、その中で好きなようにやる等)であれば、可能性ありそうだ。

 

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