ピンコードで理想的な接続ができるか~その3

前回の記事はこちら。 再度書くが、信号ケーブルは「コンタクトの信頼性」と「耐ノイズ性能」の2つが重要であり、その他の要素は関係ない。ケーブルの価値はプラグで決まり、ケーブルはシールドで決まる。ピンケーブルで物理的に音が変わるとしたら、差し替えたときに接触状態が変化したこと以外、考えにくい。

高級プラグに期待されるのは接触部がいつまでも錆びることなく性能が安定する点だろう。しかし、これまでの調査によると、金メッキしたもので錆びないものは一つもなく、高価なプラグでもラジカセ用に売られている安価な金メッキ品と同程度だった実態がある。だから、新品のケーブルを買ってきて取り付けても、次第にプラグが錆びて劣化してしまう。

マメな人は時々プラグを抜いて洗浄するかもしれない。このときメッキの色艶が何となく悪いことに気が付くが、「金メッキしているものが錆びるわけ無い」という先入観からか、汚れと勘違いしたり、このことをあまり気にとめる人はいないようである。

錆の進行は開封後の経過時間や、置かれた環境で左右される。たとえ同じケーブルであっても、開封時間や環境が違えば同じものでなくなってしまう。そんなケーブルを比較試聴しても、何の意味もない。「私はオイルを塗っているから大丈夫」という人もいるかもしれない。しかし、防錆剤が配合されていなければ防錆効果がない事がわかっている。

高級プラグが塩水噴霧や腐蝕ガスによる耐蝕試験をパスしていれば、価値を認めることが出来るが、そのような試験データを掲げたプラグはこれまで見たことがない。

RCAのプラグで接触の信頼性を求めるとチャッキング式となる。このようなコネクタはMonitor,WBT,FURUTECHなどから市販されているが、異常に高価であるし、錆びない保証はどこにもない。そこで、チャッキングできるRCAプラグで安価なものを求めて調査したところ、DAYTON AUDIOのLOCKING RCA PLUGと、ZAOLLAのRCGシリーズが見つかった。国内販売価格はいずれも500円/個程度と、WBTの半分以下であり、形状もWBTとよく似ている。これを使えば、適正価格でRCAケーブルを求めることが可能だ。そもそも性能的に全く申し分ないカナレのXLRケーブルが2000円前後で手にはいることを考えると、それよりもポテンシャルの劣るRCAにコストをかけるのは不適当だろう。

connect 各種プラグを並べて比較した写真。
(左からWBT-0147 , ZAOLLA RCG-1R , カナレF-09 , F-10)

重さやサイズでみると、WBTが最も小型軽量であり、ZAOLLAが最も大きくて重い。
センターポール(+端子)の寸法を測ったところ、直径に1割近い寸法のばらつきがある。これだけRCAの形状がマチマチだと接触不良や相性問題が発生するのは当たり前といえ、RCAに信頼性を求めること自体が間違いなのかもしれない。

 


 仕上げについてみると、ZAOLLAだけが全体が鏡面仕上げされていてピカピカである。残りはすべてバイト痕が残る仕上がりであり、写真はないがDAYTON AUDIOも同じように表面が荒いことがわかっている。

センターポールについてみると、ZAOLLAが4分割でφ3.05、WBTが2分割の先開きになっておりφ3.35だが溝の隙間が0.5mmもある。カナレはただの棒でφ3.20だが、写真からわかるようにこの部分の全長が長めに作られている。
センターポールに分割のあるものはバネ特性があるが、相性問題を起こす恐れがある。それは、相手側の端子がこちらの3Aや3Bのような形になっている場合があるからだ。こんな相手に、溝のあるポールを差し込んでくるっと回せば壊れそうなことは容易に想像できる。

RCAではホット側のバネ要素は相手側に持たせてあるのが普通であり、プラグ側には不要である。もし両方にバネ要素があると、お互いのバネ定数が干渉して設計通りの接触圧が得られなくなってしまう。ZAOLLAはφ3.05と細めであり、接触が弱く感じられる場合があった。

プラグを選ぶ際、外観検査だけでなく実際にはめ合いテストをしてみることが重要である。無理なく適度な力でスムースに抜去できるか、何度も抜去して相手に傷を付けないかどうかがチェックポイントだ。

connect2

写真は、RCAジャックとはめ合いのテストをしている様子。見た目ではわからない寸法精度や工作精度を確認できる。相手に傷を付けてたり、きつすぎてメッキを削ってしまうものは論外。そんな高級ケーブルも多いのではないか。

 

金属同士の勘合では、磨耗や傷を防ぐために潤滑油(コンタクトオイル)を併用することが望ましい。今回のはめあいテストではRational001を使用した。テスト結果を次に示す。

品名 抜去力 相手の傷つきにくさ スムースさ
WBT-0147 やや強 ×
RCG-1R(ZAOLLA) 非常に強 × ×
F09(カナレ) 適度
F10(カナレ) やや強

 チャンキング式プラグをテストする場合は、外側のスリーブを十分ゆるめた状態で行う。ZAOLLAはホット側の勘合が緩すぎ、コールド側の勘合が最初からきつい。無理に差し込んでしまうと、チャッキングする以前にペンチがないと抜けず、抜いた後ジャックは傷だらけになった。WBTはホット側は問題ないが、コールド側の切込部内側にカエリがあり、はめ込みが少しきつくて一度抜去しただけで相手に傷が付いてしまった。

 カナレの2種はいずれも相手に傷を付けなかった。F-10はやや引っかかりを感じる場合があり、これはコールド側のテーパーがややきついせいだろう。F-09はどんな相手に対してもスムースなフィーリングであった。

この結果は、高級ケーブルでも相手に傷を付けるものがある可能性が高いことを示している。傷が付くようなプラグの付いたケーブルに高いお金を払う価値はないし、買ってみなければわからないようでは、買う気にもなれない。こういうことを誰も問題にしないことが、品質の低いプラグがはびこる原因の一つだろう。

次に信号ケーブルの候補を挙げる。信号ケーブルは「耐ノイズ性」だけが重要であり素材や純度の違い、構造の違いは音質とは無関係である。以下はいずれも耐ノイズ性とコスト重視して選んだ、コストパフォーマンスに優れたものである。

品名 外径(mm) 耐屈曲 耐ノイズ 経年変化 中心導体(スケア) Imp(ohm)
S4CFB 6.0 0.50 75
L-4CFB(カナレ) 6.1 0.50 75
S5CFB 7.7 0.87 75
S5CFBL 7.7 0.87 75
L-5CFB(カナレ) 7.7 0.87 75
GS-6(カナレ) 5.8 1.0

GS-6以外はシールド線がスズメッキされており、錆びに強く経年変化が少ない。GS-6以外は中心導体が単線であり、屈曲に弱いが、設置すれば動かさないので、問題にならない。
耐ノイズに関しては、長く延ばして使う場合か、出力インピーダンスが高い機器(安い機器)に接続する場合に要求され、高級機ほど出力インピーダンスは低いから、シールドに性能を要求されなくなる。
プラグを選ぶ場合はケーブルの外径に注意して欲しい。カナレのF-09、F-10の適合は最大φ7.5までだが、F-09はφ7.7でも問題なく結線できる。F-10は内径が小さいため、ケーブルは通っても結線ができない。

結局今回はチャッキング式のプラグでまともなものはなかった。今回のベストは、カナレのF09とGS6もしくは L-4CFB の組み合わせである。マニアならプラグにF-10を選ぶだろうが、私は小型軽量で全長の短いF-9の方をお勧めしたい。機器に負担をかけないし、切込部の大部分が隠れるので、埃や腐蝕に対しても有利である。この組み合わせは安上がりなだけでなく、能書きばかりで高価なケーブルと実質的な性能は大差ない。本来RCAはこれがコスト的にも妥当といえるだろう。

散々苦労して調べたあげく、RCAも結局カナレに行き着くのだろうか。

 

<参考購入先>
CANARE(カナレ) F-09
カナレ GS6

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