史上最大のミステーク?~鉄骨・木造の外断熱は結露する

 RCを内断熱するのは間違いで、外断熱にすべきだという意見がある。調べたところそれなりに理屈が通っているようだ。しかし世の中は鉄骨、木造まで含め、何でもかんでも外断熱の方がいいとする風潮があるようだ。RC以外の建物を外断熱にするのは正しいのだろうか。家を売るためのセールストークに過ぎない気もする。

 住宅の物理的寿命は構造体と基礎で決まる。構造体の寿命に影響する最大の悪要素は「結露」で、特に問題なのは断熱材や躯体内部で起こる結露だという。逆の見方をすると、ここが結露しなければ、木造とか鉄骨とか関係なく、同じように長持ちすると考えてよいだろう。
 では、どのような構造なら結露しにくいのだろうか。これに関しては、住宅のカタログやメーカーの能書きをいくら眺めてもわからない。そこで、熱計算を行い定量的に比較できるものを作ってみた。

 計算には次の環境を想定した。

環境条件

季節 場所 外気温(℃) 相対湿度(%)
夏場 屋外 28 80
  屋内 25 70
冬場 屋外 0 80
  屋内 22 60

 

 相対湿度は、夏場はエアコンによる冷房、冬場は石油暖房の使用を想定して決めた。外壁表面の熱伝達率は微風を想定して23W/m2℃、内壁表面は9W/m2℃とした。断熱で部材の熱伝導率は、末尾の添付ファイルを参照して欲しい。換気されない空気層は空気だけの熱伝導率で計算しており、熱伝達率は考慮していない。
 壁面温度の計算は、Q = (T1-T0)/R より次式を用いた。

T1 = R・Q+T0


Q:単位時間の熱量 (W/m2)、R:熱抵抗(K/W)、T1,T0:温度(℃)、λ:熱伝導率(W/m・℃)、h:熱伝達率(W/m2・℃)、A:通過面積(m2)、熱抵抗 R は、壁面の場合 R=1/(h・A)、物体の場合 R = L/(λ・A) で計算する。

 ここでいうQ値は住宅性能表示のQ値とは定義が異なる。今回の計算では、室内外の環境温度が上記の想定条件と一致するよう、この値を調整した。こうして求められるQ値は、壁を通過する熱損失そのものを示し、絶対値が小さいほど断熱に優れることを意味する。
 結露するかしないか最終的に判定するには、露点温度を求めて比較するく必要がある。この計算は複雑だが、公開するワークシートではこれも求めた。

 

 計算した壁の構造と温度分布を次に示す。壁の構造は展示場や施工現場の実測値を元にしているが、モデル化の誤差もあるから参考程度にして欲しい。赤の線が青の線を下回るとそこで結露が起こる。

RC内断熱
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 史上最大のミステークと叫ばれるRC内断熱の例。グラスウールは100mm入れてあるが、防湿層はない。冬場では、グラスウールの内側(4,5,6のポイント)で温度と露点温度が逆転し結露が起こると予想される。マンションでこのような施工がされていると非常にまずい。グラスウールが防水されていたり、ポリスチレンが使われていても、安心は保証されない。コンクリートには調湿作用がほとんどないため、断熱材に少しでも隙間があれば、コンクリートに触れたところで水が出てしまうだろう。

I-DEAS工法の外壁
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 一条工務店のI-DEAS工法と呼ばれる木造内断熱外壁構造の例。断熱材に90mmのポリスチレンを使っており、夏季、冬季ともに露点温度と各部温度がほぼ平行になっている。
 こういう壁構造では結露が起こりにくい。心配なのは冬季に7-8(空気層 約20mm)で露点温度が接近する点。この空気層は電線を通すために必要なものらしいが、空気だけの層は結露に対して不利だ。

外断熱二重通気
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 木造外断熱(外貼り断熱)二重通気工法と呼ばれる凝った工法の例。断熱材に40mmのポリスチレンを使っており、インナーサーキット(6-8)の温度は、夏場で外気-1℃、冬季で外気+4℃に設定した。この工法では夏季、冬季で基礎換気口の開閉が条件としてあるため、上のグラフもこの条件で計算している。

 夏季は換気口をあけてインナーサーキットに外気を通す。すると断熱材は関係無くなってしまい、8-9の石膏ボードだけの断熱となる。これは冷房の点で不利だ。換気口は閉じたほうが冷房がよく効きそうだ。

 冬季は換気口を閉じる。この場合断熱材の表面(ポイント6)で結露が起こる可能性があるようだ。また、断熱材が薄いため熱損失が多い。二重通気でない外断熱工法でも全く同じことが言える。

 結局この工法のメリットは、夏季に冷房しないなら、換気口を開けることによって他の工法より涼しいかもしれない、ということだけのように思える。この工法はとても複雑なので計算だけで結論付けるのは難しい。本当にメリットがあるのか、結露するか否かは、実測で検証する必要がある。また、この工法は将来にわたり換気口の開閉作業が必要になることにも注意したい。 

 

 下のグラフは、上記環境条件における壁の通過熱量(断熱性能を表す)と、各部温度と露点温度との差の最小値(結露余裕温度)をメーカ別に比較したものだ。

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 RCと外断二重通気を除けば各社大きな差はなく、結露に関しては、現実において防湿層がどれだけきちんと施工されるかで決まるといえそうだ。
 断熱性能は断熱材の厚みで決まると考えてよさそうだ。冬季にミサワの損失が最も多いのはグラスウールが80mmと薄い為だ。
 結露に関してはダイワのDC Wallがやや危険であり、これは室内側にある空気層が30mmと厚いためである。
 柱(熱橋)部分については別の検討が必要だが、柱も防湿層できちんと室内空気と隔離される構造になっていれば、たとえ鉄骨であっても結露の心配は少ない。

 木造住宅では、実際に結露する条件下でも水滴がみられないことが多い。それは、木材の調湿作用によって、水分を吸い込んでしまうことによる。しかし、長期間このような環境に置かれると、強度が低下したり、カビ(黒く見えることが多い)が発生することがある。水滴が目に見えないからと言って、安心は出来ない。

 以上の結果から次のことがいえる。

  1. 断熱性能は断熱材の厚みのみで決まる
    断熱材は種類によって性能(熱伝導率)に違いがあるが、少々の性能差は厚みで補えてしまうので厚みだけで決まると考えていい。
  2. 通気層があると外壁の熱伝導率は関係しない
     外壁のすぐ裏に外気に通じる通気層があると、そこの温度が外気に等しくなるため、外壁の断熱性能が関係しなくなる。従い、厚い発泡コンクリート(ALC)も通気層がある場合は断熱のメリットはない。
  3. 通気する断熱層は結露の温床になる
     断熱層では大きな温度勾配が出来るため、グラスウールのような通気性がある断熱材を詰めただけでは簡単に結露してしまう。グラスウールの内部が結露で水びたしになるのは、このせいだろう。グラスウールを使う場合は、必ず室内側に防湿層を設けなければならない。2×4では同様の理由から防湿シートの施工が重要となる。断熱材にポリスチレンを使ったのものは、それ自身が防湿層を兼ねるため結露の面で有利だ。
     空気だけの断熱層は結露に対して最悪の層だ。これは電気配線用のスペースとして設けることが多いが、この層は可能な限り薄く(20mm以下)するとともに、断熱材も出来る限り室内側の壁に密着させて配置するのことが望ましい。
  4. 鉄骨、木造の外断熱にメリットはない
     鉄骨、木造の外断熱は外壁を固定する都合上厚みのある断熱材が使えず、50mm程度に制約されることが多い。
     木造の二重通気工法は通気層を二重にしたものだが、断熱材の厚みが僅か40mmしかとれず、内側の通気層に外気を通せば「無断熱」に等しくなってしまう。普通に内断熱すれば構造が簡単な上に100mm以上の断熱層が設けられるものを、わざわざこのような複雑な構造にするメリットが本当にがあるのか疑問だ。

 

 結局、木造の外断熱にはっきりしたメリットは見当たらなかった。また、構造体の断熱は次のポイントを押さえればよいようだ。

  1. 断熱材の厚みは十分か(断熱材は厚ければ厚いほどよい)
  2. 断熱材の室内側に、防湿層が隙間無く施工できる構造か(熱橋部も含めて)
  3. 断熱材が室内側の内壁に密着しているか(内断熱か、電線部の空間がどうなっているか)

 結露を防ぐには、どのような構造でも現実の施工において防湿フィルムが隙間無くキッチリ施工されることが最も重要だ。窓やダクトなどの開口部や、コンセントまわりでこれが損なわれやすいので、この部分をどう施工しているか、しっかり確認することが大切だ。
 また、これら開口部の仕舞いについて図面やルールがあっても、それが現場で守られなければ意味がない。最終的には、現場で作業をする職人さんの防湿層に対する認識と、丁寧な作業で決まるといっていい。無造作にブスブズ穴をあけてほったらかし、断熱材が脱落しても知らん顔。現場監督さん何してたの?現実にはそんな施工が多いのではないだろうか。

 

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<外壁の断熱計算ワークシート>
gaihekical 今回の計算に使ったエクセルのワークシートです