個人は大手と契約してはいけない!自動車保険の選び方~契約者が泣きを見る自動車保険の実態

 クルマをぶつけてきた相手は外資系の損保と契約していた。それを相手にしてみて日系損保との違いに驚いた。私が経験した日系損保は「契約者の為に働かない」組織だった。そんな苦い経験から導き出した自動車保険の選び方をご紹介したい。

 

最悪だったT海上の対応

 私が最初のクルマを買ったとき契約したのは、日本の大手損保「T海上」だった。契約時には「大きい会社にしておけば安心」くらいの考えだった。

 ある日、運悪く事故が起こって契約に基づきお世話になることになった。ところが、その対応が最悪だった。

 

名ばかりの示談交渉サービス

 T海上の担当は基本的に受け身で動かない。こちらは次に何をアクションしたらいいのかわからず、苦労の連続だった。

 示談交渉サービスとは名ばかりで、交渉らしいことは何もしなかった。保険手続のための連絡を契約者に代わってすることが「示談交渉サービス」の実態だった。

 

最低の手抜き修理

 T海上の名前でディーラーに板金修理を任せたら、細かいデコボコが目立つ仕上がりになって帰ってきた。聞くと水性塗料を吹付けただけ。焼付塗装も、ミガキもしなかった。

 塗装が柔らかく、ワックスをかけると塗料が削れてふき取りのタオルに色がついた。

 修理で手抜きされないためには、修理内容の事前打ち合わせが欠かせない。そして「納得いくまで印を押さないぞ」という姿勢を示すことが重要だ[1]

 

安く上げることが第一

 結局、T海上にとって第一に重要なのは、できるだけ何もしない、できるだけ安くあげる(顧客への支払額を抑える)ことらしい。「契約者のために働いてくれた」と感じたことは一度もなかった。

 


 

手ごわかった外資系保険会社

 T海上と対照的だったのが、外資系の保険会社。このとき私は相手方(100%被害)だったので、外資系の担当者と直接相手をしたが、とても手強かった。

 すぐ電話がかかってきて、相手から一報もないうちに、ああしましょう、こうしましょう、と言ってくる。

「まだ相手から連絡が無いのに、保険会社と話をする気はない。順番がおかしいじゃないか」というと、「それなら代車も出せないし修理もしない」と言うのだ。

 

外資系保険会社は契約者の為に行動する

 外資系保険会社は、担当を評価する仕組みがあるのか、契約者様の為に動く。

 契約者様にできるだけ負担を掛けないよう、契約者様に代わって何から何まで全部やる。自分が相手方の場合は、補償の内容などこちらの要求が通らず、保険会社の言いなりになってしまうだろう。

 そんな外資系保険会社の対応を見て、私は「相手にすると手強いが、自分が契約者であれば頼もしいパートナーになる」そう思った。

 

外資系保険会社に対抗する方法

 自分が相手方で100%被害の場合は、自分が保険会社の相手をしなければならない。そこでもし、保険会社が提示する補償の条件に納得いかない場合は

「自分で費用を立て替えて、相手に直接請求する」

と言えばいい。これによって、最大限の要求を通すことができる。なぜなら、外資系保険会社は契約者様が勝手に保障内容を決めたり、契約者様に直接請求が行くのを一番嫌うからだ。

 

大手保険会社に共通する問題点

 自動車保険にしろ、健康保険にしろ、私たちが支払う保険料は、

保険料=純保険料+経費(付加保険料)

から成る。前者は実際に保険の支払いに使われる分で、後者は社員の給与や広告宣伝費などに充てられる。両者の割合は今まで謎で、聞いて教えてくれるような情報ではなかった。

 ライフネット生命はこれを業界で初めて公開したことで話題を呼んでいる。同社のホームページで純保険料と経費の割合を知ることができる。それによると、掛け捨ての定期保険では概ね3割が経費であることがわかる。

 1社の内訳が公開されると、他社の推算ができるようになる。これをやったのが「ライフネット生命、出口社長が語り尽くす生命保険のカラクリと原価開示のスゴさ(マイナビニュース 2009/3/16)」だ。大手損保ではどうやら、保険料の概ね半分が保険会社の懐に入って消えているらしい。他の掛け捨て商品、例えば自動車保険や地震・火災保険についても、これと大きく違わないことは容易に想像つく。

 経費の割合は、保険会社の大きさ比例するのが普通だ。昔からある大きな有名保険会社は、ほぼ例外なくサービスが悪く、高コスト体質に違いない。

 

保険会社の選び方~大手は避ける

 個人は大手損保との契約は極力避けるべきである。保険一括見積のサービスなどを利用して、最も安いところと契約すべきだ。つまり私たち個人は

大きい保険会社とは契約しないこと

が重要だ。その理由は3つある。

 

1.収益の多くを企業や法人の契約から得ているため、個人契約を重視しない。
2.人件費が高いため支払いに充てる元本が安い。そのため出来るだけ何もしないで、支払いを抑えようとする。
3.お世話になるときは大企業対個人。個人は弱い立場になってしまう。

 

 大きい損保社にとって、個人契約者は自分の木に勝手に繋がってきた小さな「養分」に過ぎない。思い返せば、私はまさにそんな立場だった。私が「T海上」と名の付く保証会社と契約することは、今後一生ないだろう。

 保険会社を選ぶときは、国内の小さな地元系か、外資系、実店舗を持たないダイレクト系から選びたい。事故後の顧客満足度を自社調査しているところなら安心だ。

2018年追記: ちなみに私はダイレクト系のソニー損保と契約してます。

 

第三の選択肢

 保険は損保以外の選択肢もある。共済などの非営利団体だ。例えば住宅ローンを組むと火災保険に入らなければならないが、共済の場合は年間2万円の掛け金で、余剰金が出ると割戻されるため毎年1.6~1.7万円で済んでいる(木造で)。

 掛け捨ての火災保険は、本来このくらいのコストで契約できる。大手損保に年間5万円以上払っている人は、見直しをお勧めしたい。

 


 

保険会社の手抜き修理を回避する方法(2006/2/2)

 保険によるクルマの修理は「元通り」が原則。ところが板金の場合、どこまでやれば元通りなのかが曖昧だ。保険を使ってオマカセの修理をすると、手抜きできる所はできる限り手を抜いて、最低限のことしかしない。素人が見てわかるような、修理の痕跡を残すのが通常だ。

 粗悪な塗料を使われことがある。特に、ソリッド系のカラーは手抜きがされやすい。数年後問題が出てきて、売るときに大きな「評価損」を被る。保険を使って板金に出すときは次の点について、自分で直接、修理する業者と打ち合わせすることが重要だ。

 

  1. 塗装は、品質の良い塗料を使ってきちんと焼き付け、ミガキがされるか?
  2. フェンダーなど一枚ごと交換する場合は、排水溝にかけてのボカシや下回りのチッピング塗装(アンダーコート)がキチンと元通り再現されるか?
  3. 塗装工程を、板の取付前後に分けてくれるか?(取付ボルトごと仕上げ塗装をするか)

※:メタリック塗装は手抜きがしずらい。私がソリッドを避けるのは、過去手抜きされた苦い経験があるためだ。

 

 ボディの凹みは出来るだけ交換せずに板金補修にした方がよい。これは評価損にも影響する重要なことだ。交換してしまうと、エンジンルームにかけてのボカシ塗装や、下回りのチッピング塗装は手抜きされる場合が多い。

フェンダーの排水溝

 フェンダーの排水溝。外側と違う色でボルトと同時塗装されていることがわかる。フェンダーを交換すると外側と同じ色で塗られてしまい、ボルトだけ色が合わず目立ってしまう。

  もし板金補修ではなく交換になってしまう場合は、ボルトを付けてから左右同じ仕上がりになるようリクエストしよう。

 

下回りのアンダーコート 下回りのアンダーコート。ゴム系のチッピング塗装がされている。フェンダーを交換するとこれが省略されることが多い。

 これが無いとタイヤが巻き上げる砂埃等で塗装が削れ、錆びてしまう。

 

 

 自分のクルマを大事に思うなら、絶対に、修理業者や保険会社の「お任せ」はダメだ。修理代を保険会社が支払うのなら、事前に板金業者とよく打ち合わせしてから修理をお願いしよう。

 最後に、修理が終わってクルマを受け取るときの注意を書いておきたい。このとき、何も説明がなく「ここに印を押して」とハンコを要求されることが多い。

それを押したら最後である。

押した後で、「そんな大事な印とは知らなかった」と後悔する人がいる。その場で押さずに書類を持ち帰って、修理結果や保証内容が、納得できるものか、本当にこれでおしまいにしてよいのか、よく考えてから結論を出すべきだ。「自分が納得いくまでハンコは絶対に押さないぞ」そんな姿勢で臨みたい。

 

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