スピーカー台の選び方

 スピーカー台はスピーカーのセッティングに欠かせないアイテムだ。この選び方や使いこなしについて、理屈を元に針を示した記事が見当たらないのでご紹介したい。

 

スピーカー台を選ぶ際は次のポイントを押さえる必要がある。以下順番にご説明する。

  1. スピーカーの高さ
  2. スピーカー台の構造
  3. スピーカー台の材質
  4. スピーカの支持
  5. インシュレーターの使い方
  6. 土台の剛性

 

1.スピーカーの高さ

 最初に考えなければならないのは台の高さだ。これはツイータが耳の高さに来るようにすればいい。高さで低音のレベルが変わるが、高さはあくまで耳の高さとの整合を第一に考え、低域のレベルについては、周辺の壁との距離によって調整するのがベターである。

 座布団に座って聴くような使い方ではウーファが低くなりすぎる場合がある。このようなケースでは、試聴位置の方を高くすることを検討して欲しい。

 

2.スピーカー台の構造

 スピーカー台の構造は、定在波、気柱共鳴、バッフル板延長効果の3つについて考えればいい。気柱共鳴は空洞で発生し、定在波はお互いに平行な二面間で発生する。従って、スピーカー台には、このような構造がないものが適している。

 ブロック形の台を積んだときに出来る平行面の問題はハの字にすることで容易に解消できる。
 コンクリートブロックには穴が空いており、ここの共鳴を気にしてタオルを詰める例を見かけるが、ブロック表面の凹凸が減衰に作用するため実際は問題にならない。

 ブロック形の台の平坦な面を前面に向けると、バッフル板を延長する効果がある。後ろに回り込む低音を前面に反射することで低域の放射効率を若干向上させることができる。

 

3.スピーカー台の材質

 スピーカー台の材質は、 ヤング率によって石系、金属系、ウッド系に大別される。ヤング率の順に並べると次のようになる。

yungsozai これら材質の違いは、エンクロージュアの構造減衰に影響し、エンクロージュアからの放射音を変化させる。

 例えば、硬くて密度が高い台は、響きが豊かで、音が明るくなる。逆に、ウッドなど柔らかくて減衰の大きい台では、ほとんど変わらないか、振動が押さえられて響きの少ない音になる。

 この材料と響きの関係は、ワイングラスの実験結果が参考になる。

 

 一方、スピーカー台はエンクロージュアの振動を受けて音を出す。但し表面積が小さい場合が多いので、ほとんど無視できる。

 

4.スピーカの支持

 どのような支持をするにせよ、ガタがあると音が濁る。第一に、ガタの出ないセッティングをしなければならない。

 スピーカーとスピーカー台が接触する面積は、構造減衰に影響し、エンクロージュアからの放射音を変化させる。スピーカーの底面と台との接触面積が多いほど、摩擦が働いて減衰が増えるため、響きの少ない音になる。

 十分剛性の高い平らな台(石のブロックなど)の上にベタ置きした場合にこの響きが最小になる。逆に、スペーサなどを挟んで接触面積を小さくした場合はエンクロージュアの構造減衰が減り、響きが豊かで、音が明るくなる。この場合のスペーサーの役割は接触面積を減らしているだけで、その材質や形状はあまり関係ない。

 

5.インシュレーターの使い方

 インシュレーターとはオーディオ機器とその台との間に挟んで使うスペーサーのようなものを指す。

 インシュレーターの設置位置は、エンクロージュアの底面の振動モードの腹の位置になる。これはスピーカを傾けた状態で鳴らし、底板を手で触れて振幅の大きい位置を探ることで判明する。インシュレーターをこの腹の部分に設置するとで、エンクロージュアのモードを最も大きく変化させることができ、エンクロージュアから出る音を若干コントロール(サウンドチューン)出来る。

 なお、インシュレーターをエンクロージュアの角に3点または4点敷くような使い方をした場合は、単なるスペーサーとして機能するだけになる。

 

 インシュレーター効果の度合いは、インシュレーターの硬さ(ヤング率)で多少調整できるから、ステンレス、アルミ、ウッドなど、ヤング率が離れた材料を段階的に用意しておくと便利。

 インシュレーターはオーディオ専用品を使う必要はなく、ホームセンターや東急ハンズのDIYコーナーにある金属円柱もしくは半球で十分である。

 金属製のインシュレーターににゴムやフェルト、コルクが付く場合の硬さは、柔らかい方の材料で決まってしまう。この手の商品はサウンドチューンしたいのか、防振したいのかがはっきりしない。おそらく外観チューンが主体だ。

 真鍮と木のインシュレーター。ヤング率が一桁違うので調整に便利。

 ポイントは底面に余計な貼物がない(素材無垢)であること。左のように両面が平らなものより、右のように半球になっているものが安定しやすい。

 

 

 柔らかいゴム系のインシュレーターは防振を目的として使うアイテムであり、上記とはまったく異なる作用になる。スピーカーの振動を床に伝えにくくするものだが、スピーカー台から下の影響をスピーカーと切り離す作用がある。すなわち、ゴム系のインシュレーターを使った場合はスピーカー台から下の構造や材質の違いが音に無関係になる。

 

6.土台の剛性

 スピーカー台やインシュレータで音をチューニングする場合、それらを設置する土台の剛性とヤング率が、置くものより高いことが必要になる。この条件を満たさない場合は、チューニングの効果がほとんど表れない。

 土台で問題になりやすいのが床で、ここが弱いとその上に何を置いても大して変わり無い結果に終わる。理想的には建物の基礎に直接メカニカルアースするのが理想だが、一般家庭では叶わない。大抵はフローリングの床や畳の上に乗せて使うことになる。
 この場合、ピーカー台の質量と剛性を十分大きくして、それを動かない基準とする方法がある。何百キロもある石のブロックがその例

 この他、ある程度の面積を持った頑丈なベース板を敷いて、みかけの剛性を高める方法がある。これは畳のような柔らかい床の場合でも有効だ。このような商品は以前から市販されており、オーディオボードやサウンドクリエイトボードが該当する。曲げ剛性は高いほどよく、できるだけ厚いものを選ぶのがポイントだ。

 

DSC03349-1 スピーカー台による音の変化といった余計なことを考えたくない場合は、高さだけ耳に揃えるための台を、スチールシェルフなど金属パイプを組み合わせて作ると良い。スタジオモニターの台にもこのようなものが存在する。

 フロア形か、トールボーイタイプのスピーカを選べば最初から台のことを考えたり試行錯誤しなくて済む。低音再生の面でも有利。

 

 

※スチールシェルフや金属製の台は共振しやすく、その対策が課題になる。発泡PVC(滑り止めシート)をはさんでガラス板や木板を載せると改善するが、音を出しているとき「鳴き」が起こらなければあまり神経質になる必要は無い。クロムメッキ品は使用の前に防錆処理が必須である。写真のラックはローバルのジンクリッチ塗料でさび止めコートしてある。

 

 なお、上述した台やインシュレーターを使った音のチューニングは、エンクロージュアの響きを音作りに積極的に利用した海外製のスピーカなどで有効だが、エンクロージュアの剛性が高く、響きを押さえる方向で設計されたスピーカでは効果が出にくい。

 例えば高密度MDFを使ってガチガチに組まれた構造のスピーカー(国産の中級以上のスピーカーに多い)では、台やインシュレータを使ったチューニングはほとんど無効なので注意したい。このようなスピーカー台を選ぶ際は、耳の高さとデザインで選び、セッティングではガタを無くす程度でよい。

 

<参考購入先>
オーディオボード 床の改質に必須のアイテム
サウンドクリエイトボード 厚いものを選んでください
インシュレーター 値段は音と関係ありません。材質だけに注目してください
スピーカー台 大抵はデザインと高さで選べばいいでしょう
ルミナスのスチールラック
代表的なスチールシェルフ。セット品がお買い得。円形アジャスタを使って床面の面圧を下げるのを忘れずに。
ルミナスは防錆処理が必須です。こちらを参照して処理ください。

<改定>
2015/10 全面的に加筆訂正しました