金のなる木は作れるか

FX取引が流行っている。競争激化により手数料ゼロ、スプレッドも数銭(実質数百円)という安さであり、インターネットで24時間注文ができる。そんな利便な環境が人気の要因だろう。手数料が高いうえ、電話で取引員を呼び出さないと何も出来なかった昔に比べると、夢のような環境だ。

FXには億万長者への道がある。それは、宝くじやロトを当てるよりずっと現実的だ。実際、主婦が数億円稼いだという話を聞く。

ところが、FXを始めた大半の人は、損をしているという。簡単そうに見えて、意外に難しい。相場の値動きは、大勢の思惑や欲望の結果だ。値段が上がるか下がるか、本来確率50%だが、素人が日常の相場観で参加すると、高い確率で損する仕掛になっている。

FX取引の実際は、実に退屈だ。じっと値動きを眺め、時折キーボードを叩くだけである。取引している間、ずっとパソコンの前に拘束されて、好きなことが出来ない。24時間、自分に代わって自動売買するソフトが欲しいと思うのは人情だろう。

決められたルールに従って売買する方法を、「システムトレード」という。FXの自動売買も、システムトレードの一種だ。いくつかの証券会社は、自社サーバのAPIを公開して、自ソフトで自動売買できるサービスを提供している。中には、ソフトそのものを提供しているところもある。

システムトレードを運用するには、有効な売買ルール(ロジック)の存在が絶対条件だ。世の中にシステムトレードのソフトはたくさんあるが、有効なロジックが最初からプログラムされていて、未調整で使えるものはない。大抵は、テクニカル指標と、それらを組合せる仕組みを提供するだけで、肝心のロジックについては「自分で作ってね」というものだ。

私はこのツールの一つを入手してロジック作りにトライしてみた。移動平均、MACD、ボリンジャーバンド等、世の中には様々なテクニカル指標があるが、実際の値動きを使って何日もバックテストを繰り返すうちに、こういう指標はあまり役に立たないことがわかってきた。役に立たない道具を使って、解のないロジック作りに励むのは無駄である。「錬金術」といおうか。
シストレツールの販売元には「いいロジックが出来たら買い取りますよ」と言う所がある。これは、「ロジックが無い」ことの裏返しだろう。

市販ツールがうまく機能しないことがわかったので、独自にソフトを開発することにした。私が考えている売買のルールは、テクニカル指標ではなく、値動きの基本的な性質を利用した物だ。パラメータの最適化も、コンピュータにやってもらう。複数のパラメータを変えながら解を探すことを「同時最適化問題」というが、そもそも人間がやれるような作業ではない。でも、もしうまく機能するものが出来たら、それはまさしく、「金のなる木」である。

私が考えるようなことは、既に誰かが考えてトライしているだろう。現在、経済が破綻していないのは、そのようなツールが存在しないか、あっても秘匿されているか、結局これも錬金術(無駄な努力)なのかもしれない。