フェアレディZはロードスターに比べてどのくらい運転がダルいのか

新しいスポーツカーが発売されると、「何キロ軽量化しました」とか、「ホイールベースを何mm縮めました」とかいう話を良く聞くが、それがハンドリングや応答性にどの程度影響するのか、素人には理解不能である。結局、馬力やトルクなどの動力性能や、シフト段数といった、わかりやすいスペックに目が行ってしまうようだ。その結果、大パワーのスポーツカーをフンパツして買ったが、「確かに速い。ものすごい加速をするが、応答がダルくて運転がつまらない」という悲劇も起こりうる。そこで今回は、応答性について考察する。

ハンドルを切ったり、加速したときの応答性は、ニュートンの運動方程式と、その解(固有値)から判断できる。すなわち、ハンドルを切ったときのクルマの応答性Rθ、直進加速した刹那の応答性をRsとすると、それぞれ次式で概略の検討が可能だ。

Rθ ∝ SQRT(Kt/I)     (1)
Rs ∝ SQRT(1/M)     (2)

Iはヨー慣性モーメント、Ktはタイヤの横剛性、Mは車体質量である。これらはいずれも、動力性能とは無関係に、メカ系が持っている純粋な応答を示している。直進応答に関してはタイヤのばね剛性はあまり関係しないとした。慣性モーメントは、最大の重量物であるエンジン質量me およびホイールベースLhを使って次のように近似できるだろう。

I=me・Lh2     (3)

あとはタイヤの横剛性と、エンジン質量を求めればよい。エンジン質量はデータがないので、文献を元に近似式を作成した。実際は、気筒数、方式の違い(直列、V型)によって多少ブレるが、概ねグラフのようである。
タイヤばね定数は実測データを元に近似式を作成した。タイヤの横剛性は、このばね定数に比例すると考えて差し支えない。

eg_graph

参考文献:参考文献:トヨタ自動車「サスティナブル・モビリティの実現に向けて」

 

以上の式を使って、実際に計算した結果を次に示す。なお、応答性の絶対値は意味を持たないので、グラフはロードスターの応答性を1としたときの相対比で示した。なお、ダルいクルマの代表として「クラウン ロイヤルサルーン3L)を参考にプロットした。グラフの縦軸は、いずれも小さいほど鋭い応答が期待できることを示す。

outou_graph

左のグラフから、新型Zはロードスターより20%応答がダルいと予測できる。ちなみに応答計算にはエンジン質量しか入れていないから、かなり贔屓目である。段数が多いトランスミッションを積んでいたり、ターボが付いているとその分重くなるから、この格差はさらに開く。

注:応答性はステアリングジオメトリ(足回りのセッティング)によって変わり、BMWのように重たいクルマでも応答を鋭く「見せかける」ことも可能だし、コンパクトカーではスタビリティを主に考え本来鋭い応答を殺すこともできる。このグラフで示される応答は、あとからどうやっても変えることができない、慣性と質量だけで決まる本質的な応答である。

 

Zのダルい応答をロードスター並にするにはどうすればよいか。逆算すると、ホイールベースを45cm短くするか、タイヤを30サイズの超扁平にすればよいようだ。ホイールベースを45cmも縮めることは不可能だが、タイヤサイズを30にすることはできそうだ。しかし、同時にバネレートもあげる必要があり、乗り心地やステアリングフィールが著しく犠牲になることが予想される。結局、重量級のスポーツカーは「スポーツ風のラグジュアリーカー」にしかなれないことがわかる。

右のグラフはメカ、それも純粋に質量だけの影響を示している。GT-Rがクラウンよりダルいのは、クラウンより140kgも重いせいだ。クラウンより重たいスポーツカーを計画するとは、日産は何を考えているのだろう。
実際の直進応答は、メカ系のほかエンジンやパワートレイン系の過渡応答も関係してこの通りにならない。これについては以前詳しく考察した。一般にはターボよりはNA,ATよりはMTの方が応答に優れている。

 

注意点がある。ハンドルを切った応答がいくら良くても、ステアリングフィールが悪いとその性能を生かせない。ロードスターはこれがいつまで経っても改善されず、大きな損をしている。
いくら応答がすぐれていても、動力性能がある程度ないとその特性を生かせない。軽やコンパクトカーがそうだ。
たとえ、応答に優れて動力性能を満足していても、シフト操作にひっかかりがあると、操る楽しみは半減してしまう。最近増えた6MTのほとんどにその傾向が見られる。これは、シフトは多段であるほど、高級orスポーティであると多くのユーザーが勘違いしている為だ。

スポーツカーにとって一番大切なことは、応答性と、それが生み出す意のままに操る「人馬一体感」だろう。スポーツカーのすべての構成要素は、この一点に向けて計画されなければならない。しかし、この点で満足いく商品はほとんど存在しない。

 

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