蔓延するデング熱〜蚊の対策に決め手はあるか

代々木公園を起点にデング熱の感染が広がっており、蚊の対策に関心が集まっている。これについては当サイトでも過去紹介したが、あらためて考察してみよう。

蚊のライフサイクル

蚊のライフサイクルは図のようになっている[1]。どの時点で減らすのかが最初の検討課題になる。このサイクルには「水」が不可欠のため、水溜りをなくせばライフサイクルそのものを消滅できる。

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成虫を誘引捕獲する方法

 成虫を減らすためには誘引の性質を利用することになるが、これには「吸血誘引」と「産卵誘引」の2種類がある。人を刺す蚊は紫外線に誘引されないのでよくある紫外線の電撃殺虫機は役に立たない。

 吸血の誘引物質にはCO2 の他に人体臭(乳酸+α)が知られている。蚊はこれらによって付近に人がいることを検知し、体温(赤外線)でターゲットの詳細な位置を知る。直射日光の下で蚊にあまり刺されないのは他の熱源により人間が見えにくくなる為と見られる。
 吸血誘引装置を作るためには少なくともCO2 の発生器と人肌相当の赤外線発生装置(ヒータ)などが必要で、一方が欠けると効果がない。

 この装置の課題はCO2 の連続発生にある。以前炭酸水やイースト菌+砂糖で実験したが成果を上げることが出来なかった。失敗の原因はCO2 の量が少なすぎた為[2]とみている。
 代々木公園に設置されている誘引装置にはドライアイスが使われているそうだ。現状十分なCO2 を長期間安定して発生させる手軽な手段がないことから、家庭で使えるような吸血誘引装置は実用化されていない。

 「産卵誘引」は卵を産むために水辺に寄ってきたメスの蚊を捕獲する手だ。オスに対しては効果が無いが、人を刺すのはメスなので問題ない。産卵誘引ではCO22 や温熱は必要なく、ボウフラが好みそうな腐った(栄養豊富な)水があればよい。捕獲手段は「粘着」が適している。タライや水鉢の上に裏側にガムテープを張ったスノコなどを設置しておく。
 産卵誘引物質は十分解明されていない[3]が、それを作るのは比較的容易で長期維持もできそうだ。

 

ボウフラの対策

 水中にいる幼虫(ボウフラ)を対策する方法にはいろいろある。薬剤(デミリン)を使い脱皮を阻害する、メダカを使って幼虫を捕食させる、一方通行の容器に卵を産ませて成虫を外に出さない(ボウフラキャッチャー)などだ。これらの詳細は以前紹介している。

 

寄せ付けない対策

 蚊が嫌う匂いを設置して寄せ付けないようにする。問題は持続性とコストにあり、広いエリアを対策することは困難だ。蚊取草、蚊連草(ゼラニウムの一種)が売られているがあまり効果がないようだ。我が家も蚊の集まるデッキ周辺にたくさん植えて実験中だが、効果は実感できていない。

 

発生源対策

 発生源(水たまり)を無くすのは根本対策になる。見落としやすいのが雨水マスの下にあるバケツで、以前紹介したように目皿にネットを被せる方法が有効だ。最近では雨水浸透マス(水がたまらない構造のマス)もあるのでこれから新築する人は検討してほしい。

 

いろいろ書いたが蚊の行動範囲は数百メートルに及ぶため、どの方法も自宅だけで実施してもほとんど効果がない。蚊の対策は地域全体での取り組みが必要で、住人の理解と協力が必要だ。
 発生源対策は自宅を中心とした半径数百メートル範囲を同時に行う必要がある。蚊は繁殖力が強いため1世帯でも協力拒否して発生源を放置されると十分な効果がない。このことが地域の蚊の対策を難しくしている大きな要因といえる。

 

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 <参考文献>
[1] 蚊のライフサイクル 図を転載させていただきました。
[2] 炭酸ガスと温熱を用いた新しい蚊誘殺器 真喜屋清,岩尾憲三著 Med .EntomoL Zool.Vol.52 No .3 p 241-247 2001
実験機のCO2は1.5L/min。人の呼吸では0.25L/minなので、少なくともこの程度のCO2を連続発生させる必要がある。
[3] 蚊の誘引物質 生物と化学Vol14,No8 P538-541

 

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