5千円の機械時計はロレックスを超えるか~ひぶ朗でタイムグラファー2

時計のテンプが発する振動はたいへん小さい。タイムグラファーではこの微細な振動をいかにS/Nよく検知し、増幅するかがポイントになる。ネット上には市販のアンプや100均グッズを利用した自作記事が見られるがS/N十分とはいえないようだ。前回はネット上の記事を参考にトライしてみたが、出力がBTLだったりゲインが不足するなどして満足いくものを作れなかった。

圧電素子をチャージアンプで受けたい、ローカットフィルが欲しい、電源をUSBから取れるようにしたい、などと考えると100均やキットの寄せ集めでは作れなくなってアンプを自分で設計して自作するしかない。今回はこの方向で検討した。

 

様々な回路を作ってテストした結果以下のことがわかった。

・この用途のOPアンプと周辺回路は、雑音に徹底配慮した設計をしなければらない(汎用OPアンプは雑音が多く使えなかった)。

・圧電素子の初段は電圧を直接受ける方法とチャージアンプ※の2種類がある。JFET入力のOPアンプで直接受けると電荷が飽和してまともに動作しない。バイポーラ形の場合はOKだが誘導ノイズが乗りやすいようだった。電圧入力の感度はC=0.01uFとしたチャージアンプと概ね等しかった。

・丸型圧電素子の感度は大きさに比例するので出来る限り大型が良い。このセンサは中央部垂直方向の感度が最も高い。何かの板にべったり接着してしまうと感度が著しく落ちる。

・PCライン入力直結に必要な増幅ゲインは50dB~60dB(φ27mm圧電素子の場合)。PCライン入力の仕様は最大2.0V0-p(ギガバイトH97マザー)なので1V0-p程度まで増幅すればよい。ちなみにライン入力のゲインはコントロールパネルで調整でき5%位置でほぼ0dB、100%位置で22dBのブーストだった。

・ハイインピーダンス&ハイゲイン回路のため誘導ノイズ(60Hz)が乗りやすい。初段までの配線を極力短くするとともに、回路全体を金属で覆いシールドする必要がある。誘導ノイズはひぶ朗の観測において「うねり」につながり閾値の調節に影響する。

・ECM(マイクロフォン)もセンサーの候補だが圧電素子で振動を直接検出する方が感度が良い。ECMはバイアス電圧の抵ノイズ化が課題で自作のハードルが高い。

・PCから取るUSB電源は汚い。可聴域ノイズのほとんどはノーマルノイズだったので大容量電界コンで除去できた。

・OPアンプの電源はUSBの5VからDC-DCを使い両電源駆動する形が良かった。両電源駆動にするとOPアンプのSVR特性でノイズを除去でき中点バイアスも不要になる。

 

※チャージアンプを使うと電荷の変化を電圧変化に変換できる。出力電圧eは
e=q・A/(C(1+A))≒q/C  q:圧電素子の発生電荷、C:チャージアンプのコンデンサ容量、A:OPアンプのオープンループゲイン
なので出力はCが小さいほど高くなる。
<参考文献>圧電型加速度ピックアップ テクニカルハンドブック

 

 電源ノイズの問題は乾電池駆動で改善する。電池駆動の100均グッズや市販キットの寄せ集めでも何となく機能するものが作れるのはそのためだろう。数次の試作を経て最終的に次の回路を得た。出来る限り部品点数を減らして簡素化してある。

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オペアンプは低雑音型のNJM4580DD、DC-DCはMAU106(試作では手持ちの関係でMAU108)を使用。この手の用途に良好な性能を発揮してくれた。チャージアンプ、ハイパスフィルタ、ゲインアンプの3段構成になっている。ハイパスフィルタは測定に無関係な低周波の雑音を低減しS/Nを向上させる。
ちなみに回路図はBSch3Vを使用。見やすい回路が書ける。ユニバーサル基板の配線図はPasSを使用。これからは5mm方眼を使わなくて済みそう。

 

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左はプリント板の裏側。半田付けさえできれば差し込んだ部品の足を折り曲げるだけのパターン配線で簡単に作れる。右は完成品。アンプとセンサーのセパレート式。電源はUSBから取れて、PCライン入力直結で使える。アンプのケースは100均の木箱を流用。内側に銅板を貼り誘導ノイズのシールドとした。

  6姿勢の歩度を測るためには時計を安定保持する機構が必要。これを自作するのは難しいので市販の保持具を流用した。スマホ用固定ホルダーを利用すれば3脚にセットして自由に向きを変えられる。圧電素子は時計がキズつかない銅合金のスプリングで支持されており5mmのたっぷりしたストロークで時計に確実に接する。スプリングの共振は以前から紹介している不乾性パテで制振。部品代は総額5千円もいかない(工具消耗品等、電子工作のインフラ存在を前提として)

 

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セイコー5測定の様子。スマホ用フォルダーで三脚に固定。十分なS/Nが得られており60Hzの誘導ノイズは問題ないレベルに抑えられている。

 

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左はセイコー5をひぶ朗にかけた結果で前回同様一直線。6姿勢の最大偏差7sec/day※。右は購入してからつけている日差の記録。機械のなじみが必要なのか最初安定しないが直近10日間の平均は+0.2sec/day。たまたまアタリを掴んだ可能性もあるが、この時計なかなか優秀。先日紹介したセイコーのプレサージュは10日平均 +3.0sec/day だった。

※セイコー5測定データ 2014年12月12日 金曜日 19:00 気温20℃
文字盤上4 sec/day 、文字盤下-5、3時下0、6時下0、9時下-3、12時下-7

 

<参考購入先>
時計の固定台
スマートフォン用ホルダー 固定台を三脚に取り付けられるホルダー。6姿勢の測定が容易になります
セイコー5 コストパフォーマンスの高い時計です
Rational001 半永久的に変質しないフッ素オイルベースの時計用オイルです
プラジェットミニ PJ-M10 100均グッズからの圧電素子取外し収縮チューブの加工に。昇温が早く、送風機能が付いた非常に使い勝手の良いヒートガンです

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