ジャズ喫茶ベイシーの音の秘密~ハイレゾ時代のスピーカー選び

 ベイシーとは岩手県一関市にあるジャズ喫茶。音の魅力だけで客を引き寄せる数少ない店の一つだ。スピーカーの構成は軽量コーンの15″ウーファー(JBL 2220B)2発を密閉箱に入れ、中高域にホーンを使ったもので、能率は103~104dBと推測される。密閉箱の容積は1kL近い巨大なものらしい。低域再生限界は計算上50Hzだがそれ以下もダラ下がりに伸びていると見られる。

 

 バスレフポートから出る音の応答は、以前の実験で16ms程度になることがわかっている。密閉箱ではこの遅れが原理的にない。下から上まで共鳴に一切頼らず、能率100dBOverを達成したシステムは、おそらくここ以外に無い。過渡応答を最高にできる解の一つだ。

 私はベイシーに行ったことが無いが、このようなシステムから出てくる音は想像できる。以前書いた高能率スピーカーの特徴が最高レベルで聞けるだろう。ベイシーではJBLでユニットを統一しているが、ブランドは関係ない。スペックが同じなら別のものでも同じ結果が得られるはず。いずれにせよ、良い音を得るために能率が重要なファクターであることをベイシーのシステムが実証しているように見える。

 

 市販されているスピーカーの能率は昔から基本的に90dB前後であり、ほとんどの人が能率の低いスピーカーしか聴いたことがない。

 「オーディオの音なんてこんなもの。ネットがメインだし音楽はこれで十分」

残念ながらそんな考えの人が多いのが現状のようだ。能率の特徴を生かした音が聴けるランクは次のようになる。高能率SPの音に少しでも興味関がある人は、ぜひ参考にして欲しい。

 

クラスS
 15″ウーファー×2を十分大きな密閉箱に入れて100dBを超える能率を達成したもの。ベイシーのシステム。全ての音域を過渡応答を損なわずに出せる。

クラスA 
 15″ウーファー×2をバスレフの箱に入れて100dBを超える能率を達成したもの。ローエンドは共鳴で伸ばした低域なので過渡応答はクラスSより劣る部分があるが、箱の体積がクラスSの半分以下で済む。シネマ用のJBL 4722N、3722Nが該当する。

JBL4722左はJBL 4722N、3722N(JBL2015カタログより)。ベイシーのシステムに一番近いのがこれ。受注生産で価格はペア60~80万円。

 インピーダンス4オーム、能率はなんと104dB。コレを自宅に持ち込んでる人はたぶんいまい。異次元の音がするはず。アンプは数ワットで事足りるので選択が難しい。

 

クラスB
 15″ウーファー×2をバスレフの箱に入れて90dB後半~100dBの能率を達成したもの。レイオーディオのRMシリーズやJBLのエベレストが該当する。個人消費者に縁のない価格(600万円~)とサイズ。

クラスC
 12″以上のウーファーにホーンを組み合わせたSR用スピーカー。低域再生限界を妥協して高能率のまま小型化したもので能率100dB前後の商品を手ごろな価格で入手できる。
 サイキョーを連呼する某サイトの主人が薦めるエレクトロボイスのTX1152は再生周波数が比較的ワイドでホームユースに使える選択の一つ。
 このクラスはームシアターにも好適でエレクトロボイスのSX300Eを使えば素晴らしい結果が期待できる。
 低域が物足りない場合はサブウーファーで補うことになる。口径25cm以上のヤマハYST(SW300など)がお勧め。サブウーファーを使う場合はメインスピーカーのバスレフポートにタオルを詰めてポートを塞いでしまうか、薄い吸音材をパイプの外周に貼りつけてダンプト・バスレフにするといい。

※YSTはコーンの重さを電流FBで補償するので他のメーカ品より過渡応答が良いと見られる。SW1000は口径30cmだが、これを買うならSW300を2本買ってchあたり1本配置にしたほうが良い。

クラスD
 15″ウーファーにホーンを組み合わせた大型システム。クラスBを小型化して一般家庭に導入しやすいサイズにしたもの。ウーファーの振動系が重くなって能率は95dB前後に落ちる。昔からJBLがこのクラスの商品を多く作っている。我が家のJBL S3100もこれに相当する。

クラスE
 中高域にホーンを使って能率90dB前半を達成している小型スピーカー。クリプシュやサウンドハウスのCLASSIC PROシリーズが該当する。パワード(アンプ内蔵型)は除外。低域不足はクラスCと同様にYSTのサブウーファー(SW200以上)と組み合わせて補う。
 限られたスペースに設置するミニシステム、ミニシアターに好適。ミニシアターではサウンドハウスCSP6 にパイオニアS333 の組み合わせがスペースファクターとコストパフォーマンスに優れた一解。

クラスF
 能率90dBに満たないスピーカーすべて。ハイレゾ対応と称する高級スピーカもここに入る。高度な技術を投入しどんなに工夫を凝らしても、能率を犠牲にしたシステムでは限界があることをこのクラスの高級ピーカーが実証してくれるだろう。

 

 ベイシーのソースはアナログレコードという。アナログレコードでこれだけいい音が聴ける。ということは、今でもオーディオのボトルネックが音源(ソース)ではなくスピーカーにあることを示している。そのソースをハイレゾに替えたところで、違いが見えないのは当然といえる。今のスピーカーに一番欠けているもの、次の進歩に繋がるKWは「能率」ではないかと考えている。

 

<参考購入先>
ジャズ喫茶「ベイシー」の選択

<関連記事>
創造の館リスニングルームの完成
スピーカの音の良さは能率に比例するか
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アンプの出力はどれだけあればよいか 高能率SPを大出力アンプに繋ぐのはNGです
ホームシアター

 

<参考>
スピーカーの能率、低域再生限界、過渡応答の関係について
 能率を高めるためには振動板を軽くすればいいが、軽くすると低音が出なくなる。能率を高めつつ低音を出すためには振動板を大きくしてf0を下げるしかない。
 能率と過渡応答は密接な関係にある。能率の低いスピーカーは振動板が重い。重い振動板は動きが鈍く過渡応答が良くないことは容易に想像つく。空気の「共鳴音」は最も過渡応答が悪い。バスレフポートから出る音のほか、室内で発生する定在波も過渡応答を悪くする要因になる。

 

ジャズ喫茶ベイシーの音の秘密~ハイレゾ時代のスピーカー選び」への15件のフィードバック

  1. haruki

    久しぶりのコメントになります。

    悩みに悩んで、とうとう先日、JBL 3722Nを発注してきました。
    商社のヒビノに確認したところ、4722Nと3722Nの違いは、「最大入力レベルの違い」ぐらい」とのことでしたので、3722Nを選びました。
    受注生産品とのことで、納期まで数ヵ月を要するそうです。待ち遠しいですね。
    あとは、そのスピーカーに合わせるアンプだけです。

    返信
    1. 創造の館 管理人 投稿作成者

      おお!とうとうやりましたね!!素晴らしいご決心です。たぶん104dB級は日本で始めて・・近隣であれば見に行きたい。。。です。
      アンプ選びもたのしいですね。いずれにせよ、レビュー楽しみにしております。

      返信
      1. haruki

        埼玉県戸田市に住んでおりますので、近くに寄られたときは、ぜひいらしてください。

        記入しているアドレス宛にご連絡下されば幸いです。

        返信
  2. haruki

    ソニーのTA-A1ESというアンプは、10Wまでの領域では、純A級動作するらしいです。

    これも、トーンコントロールがないのですが。

    返信
    1. 創造の館 管理人 投稿作成者

      TA-A1ES ですがこれはすごいですね、これまで当サイトで書いてきたアンプの課題、バッファアンプとかギャングエラーとかまで含め、すべて対策されています。アナログアンプでは史上もっとも理想に近い仕上がりではないでしょうか。
       やってないのはスピーカー端子の接触抵抗安定化くらい。ここはスピーカー端子に締め付けトルク管理機構(クルマのガソリンキャップのように、カチカチするやつ)が付いていれば完璧だったのですが、まあバナナが刺せるみたいなのでそっちを使えばいいでしょうか。
       バイアス可変のA級動作も合理的ですね、アナログ買うならこれからはこれ一択になりそうです。

      返信
  3. haruki

    アキュフェーズは憧れますが価格が高いです。
    TA-F501は、私もJBL 4425MKⅡと組み合わせて使用しています。
    SONYのホームページで、仕様を確認したら適合インピーダンスは6Ω~、とありました。
    同じソニー製のTA-DA9000ESなども、4Ωから使用できるのに残念です。

    テクニクスのSU-C700も4Ωから使用できるらしく、ルックスも気に入ってるのですが、トーンコントロールがないので、これも候補から外れます(テクニクス製のプレーヤーと接続した時に限り、スマートフォンからトーンコントロールできるらしいです…)。

    やはり、こちらで紹介されているデノンが最有力候補になりそうです。

    ジェネレックのデジタル入力インターフェースは、やはりプロ用ですから、AES/EBUでしょうか。

    古い機種だと思いますが、EVのTS9040Dは8Ωらしいです。

    返信
    1. 創造の館 管理人 投稿作成者

      アキュ以外の純Aクラスアンプを探してみましたがヘッドフォンアンプしかないですね 純Aクラスアンプ
      真空管アンプはAクラスといっても論外だし、手ごろな市販商品はやはりデノンしかなさそうです。
      私たちのF501ですが、もしかしたら使えるかもしれません。

      デジタルアンプの出力回路特性は
      http://sim.okawa-denshi.jp/RLClowkeisan.htm
      ここの上から3つ目のシートにで回路定数を入れて計算できます
      たとえば R=8 c=0.1u、L=10u (TA2020用参考)とするとカットオフ約160kHz
      ここで Rを落としていくとロールオフの特性がなだらかに、Rを増やしていくとカットオフのピークが盛り上がります。インピーダンスを高くすると弊害が出ますが低い分には、さほど問題なさそうです。実際の回路定数はこれと違うと思いますが、それを考慮しても想定される最悪の弊害は20kHzが僅かに落ちるかどうか、といった話で、アンプが壊れるとか、スピーカを焼くとか、そういう心配はなさそうです。

       

       ご紹介いただいたジェネレックについて調べてみました。まさに理詰めで正確な音を追求したシステムで、隅々までその考えが浸透しています。驚き。ここまでくると、モニターとホームオーディオはもう方向が違います。モニターは広帯域とフラット、正確さが重要で、内臓マルチアンプ+ソフト校正といったようにハードの構成からホームオーディオと違うものになっています。

       ホームオーディオの終着点がスタジオモニターという話は、もうないでしょう。録音を正確に再現しても、面白くも何ともないはず。おそらくは、モニターは正確さ、ホームオーディオは感動、といった別々の道を追求する形になると思います。

      返信
      1. 毎度お世話になっております。
        そういえば、M-CR611も4Ωからいけます(4~16Ω)が、出力高すぎますかね?
        とはいえ、PMA-50とは10WくらいしかMaxは変わりませんが。

        返信
        1. 創造の館 管理人 投稿作成者

          ゆさんいつもお世話になります

          M-CR611ですが、確かにインピーダンス的には問題なさそうです。しかしデジタル信号処理の中身について、技術的な解説記事が見当たりません。
          サンプリングレートコンバートとか、音量調節の桁落ちとかが、気になります。

          返信
      2. haruki

        インピーダンスを高くすると弊害が出ますが低い分には、さほど問題なさそうです。

        ↑ここら辺りが、アナログアンプでの常識とは真逆なんですね。

        最悪の場合でも、20kHz付近が僅かに落ちるぐらいであれば、聴感上はわからないでしょうか。

        確かにおっしゃるように、スタジオモニターとホームオーディオでは、方向性が違うのでしょうが、その「感動」というのが、オーディオに、オカルトがはびこったり、正当な進化をしないのかもしれません(低能率スピーカーばかりが、もてはやされるのもそう)。工業製品なのですから、まずは原点に戻って、純粋に特性を追及してほしいとも思ってます。まぁ、しょせん趣味なので、それでも良いという考えもあるかもしれませんが。

        余談ですが、スピーカーの技術的ブレイクスルーは、デジタルスピーカーであるDnoteだと思います。
        このDnoteを搭載した、ハイエンドオーディオ用のスピーカーをどこかのメーカーが出してくれることを私は期待してます。

        返信
  4. haruki

    クラスAで紹介されている、JBL 4722N、3722Nですが、ペアで60~80万円という価格は、異常にコストパフォーマンスが高いですね。
    映画館用のスピーカーを家庭に持ち込むという発想がありませんでした。
    しかし、いまだに根強いファンがいる、Altec A7などは、もともとは、映画館やホールで使用する目的のスピーカーだったわけで、なぜ半世紀も前の、映画館用スピーカーは、今もファンがいて、その当時のものより特性に優れる、現代の映画館用スピーカーが、オーディオファンに注目されないのか不思議です。

    38cmのダブルウーファーを積むようなスピーカーといえば、ここのクラスBで紹介されているように、600万円オーバーなどと、縁の無い価格帯のものというイメージがありました。

    国内メーカー製のスピーカーも、16~20cm程度のスピーカーを搭載したトールボーイ型で、ペアで100万円を越えるモデルがいくつかでています。
    ソニーやテクニクス、TADなど。

    これらのモデルを、メーカーのショールームで試聴したことがありますが、「えっ?これが数百万円の音?」と、正直、拍子抜けしたことがあります。
    では、B&Wなど海外メーカー製はどうかというと、こちらもオーディオ店で試聴しましたが似たような印象でした。

    どこが、不満かというと、ここのブログでも、たびたび指摘されていることですが、低音再生能力に不満を感じているのだと思います。

    私も、つくづく感じるのですが、音楽再生や映画再生で、臨場感や感動を左右する要素は、20kHzを上回る高音域ではなく、低音の豊かさが大事なんじゃないか、と感じています。

    前置きが長くなりましたが、場所さえ確保できれば、民生用のハイエンドスピーカーを買うより、映画館用のスピーカーを購入した方が、はるかに安上がりな上に、音への満足度も高いと言えそうですね。

    返信
    1. 創造の館 管理人 投稿作成者

      いつも記事をご愛読くださいましたありがとうございます。

      スピーカーは結局能率なんだと気づきましたが、低音再生は能率と背反し、低音に能率を求めるとシステムが大型になり、手の届かない高額になる・・
      普通はここで手詰まりですが、映画館用やSR用なら手が届きます。

      JBL 4722N、3722N 大変魅力的で、第一号になってレビューを書こう、そう思いました。でも実際検討すると課題があります。ひとつは能率が高すぎて組み合わせるアンプが難しい点です。4Wもあれば十分で10Wは大きすぎます。微弱出力でいい音が出るアンプがないのです。

      あとインピーダンス4オームもネックです。デジタルアンプはアナログと違って負荷のインピーダンスが特性に影響します。メーカー保障範囲外で使うことはできません。手持ちのソニーのTA-F501はs-master pro(パルスハイトボリウム)なので微弱出力は問題ないですがインピーダンスで引っかかってアウト。ここで断念してしまいました。

      返信
      1. haruki

        インピーダンス4Ωに関しては、真っ先に、何故?と思いました。

        そういえば、ソニーやTADの高額スピーカーも4Ωであることに疑問を感じていました。
        ダンピングファクター値は不利になりますし。

        映画館用のスピーカーは、今一番気になっています。
        SR用スピーカーも良いのでしょうが、やはり見た目がちょっと、というのと、低音再生能力も弱そうです。しかし、ここで紹介されているJBLの映画館用スピーカーの見た目は、すごくカッコいいと思います。
        四角い巨大な箱に、2つの38cmドライバー。箱の上の巨大なラッパ。好きです。

        8Ωのものが、エレクトロボイスやクリプシュから出てないか、調べてみます。

        スピーカーに関しては、以前は、レコード会社のコントロールルームにある、あの巨大なラージモニターが最終回答か、と考えたこともあります。ジェネレックのラージモニターは、アンプも内臓しており、アンプに悩まずに済むし、いいんじゃないか?と思うのですが、あれは、数百万円もし、それこそ、JBLのエベレストと同等か、むしろ、それらより高価でした。

        因みに、スピーカーの筐体にアンプを内臓する、パワードスピーカーを、なぜかオーディオマニアはバカにしてるといいますか、敬遠する傾向があるようです。

        しかし、半導体アンプでは振動の影響は、ほとんど問題にならないとおもいます。
        それよりも、次の理由から、パワードスピーカーの方が音に有利と考えます。
        ・アンプからドライバーまでの距離を最短に出来る。
        ・バイアンプ方式であれば、ものによっては、ラインレベルまたは、デジタルの領域で帯域を分けるので、通常のネットワークを通過させるものより有利

        余談ですが、20年ほど前は、コントロールルームのラージモニターに、レイオーディオのスピーカーが、多く採用されてたと思いましたが、今はそのほとんどが、ジェネレックに置き換わってるようですが、気のせいですかね。

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        1. 創造の館 管理人 投稿作成者

          8オームのシアター用というのは、たぶん無いかと思います。私が調べたときもJBLしか見つかりませんでした。アンプ側でなんとかするしかないですが、以前調べた結果はPMA-50が一応4オームから使えることまでは確認済み。アナログでしたら純Aクラスアンプ(アキュフェーズAMPLIFIERE-600)あたりが小音量でも問題なく使える候補になるようです。中国や韓国の、数千円の小型デジタルアンプは除外です。

          アンプ内臓はアンプやSPをアレコレ交換したい人に受け入れられないのでしょう、
          私的には、デジタルアンプ内蔵でデジタル(光など)接続なら、歓迎ですが光でRL分わかれてつなぐ形の商品があれば、候補になると思っています。

          レイオーディオが採用されなくなったのは、たぶんコストが原因ではないかと思います。

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