ガンガン使える~丈夫な鞄、財布の選び方

 すぐ角が破れてしまった、高かった皮革の鞄がカビだらけ・・高い鞄が長持ちするとは限らない。毎日使う鞄には高い耐久性が求められる。見た目だけでなく、毎日のハードな使用にも耐える丈夫な鞄の選び方をご紹介する。

 

いいデザインの商品が少ない鞄市場

 アマゾンには非常にたくさんの鞄や財布が出品されているが、いくらページをめくっても欲しいと思えるものが無い。共通して言えるのは、どんなファッションに合うよう考えて作ったのか、どんなライフスタイルの演出を意図して作ったのか、皆目わからないことだ。そんな状況なので丈夫さに関係するKWで絞り込むと候補がほぼ「無し」になってしまう。

 高品質な鞄や財布を作る国内メーカーのパンフレットを見ると

「モノは確かに立派だが、デザインがちょっとね」

そんな印象を持つことが多い。

 鞄や財布のようなファッション性の高い商品の場合、モノづくりの技術よりデザインの比重が高い。いくら高い縫製技術を持ち、機能に優れた商品を作っても、デザインが伴わなければ「魅力ある商品」は生まれてこない。鞄や財布を作る製造元の多くが零細企業。デザインまで気を回せないのかもしれない。

 個人のレザークラフト販売でも同じで、創作性の高い分野では同一個人に技術と感性の両方が備わっていないと成功は難しい。このことは、レザークラフトに限らず、絵画、小説、料理にも共通している。

 

色の選び方

 メンズ鞄の色は黒~ブラウンが基本。靴かスーツ、ベルトに合わせる。レディスならこれにベージュ~白がプラスされる。ジーンズに合わせる場合、ダークブルーも候補になる。

 これ以外の彩度の高い色は、服に合わせて使うことになり、服と組み合わせを特定した「専用アイテム」になる。財布は特別なので後述する。

 身に着けるアイテムに黒やグレー、白などの無彩色が好まれるのは、どんな服にも合うため。ブラウンだけ例外なのは肌の色に合うためと考えられる。

 

素材は何が良いか

 鞄や財布に使われる材質には、皮革、化学繊維(ナイロン、ポリエステル)、天然繊維(綿、麻)、ビニール(PVC)などがある。それぞれ素材の強度に違いがあるが、強度は「厚み」で容易に補える。従い丈夫さを求める場合は、素材よりも生地の厚さを重視して選ぶことがポイントになる。

 具体的には厚手の皮革や帆布(キャンバス)が候補になる。帆布には1号~11号まであり、密度、厚みは数字が小さいほど増す[1]

 文献2,3によると引張強さは皮革21.5Mpa、綿帆布35Mpa程度。このことから強度は帆布1mmと皮革1.6mmが強度的に同じと考えられる。つまり、同じ強度を求めると皮革は帆布に対し1.6倍厚く、重くなる

 皮革はオイルをたっぷり染み込ませた「オイルレザー」が候補になる。これ以外の皮革、たとえばヌメ革は手入れが難しい。使うほど汗や皮脂が染み込んで汚れ、カビておしまい、という結果になりやすい[1]

 

長持ちしない材料

 長期的に持たない材料がある。紫外線で劣化しやすいウレタン、PET、アラミド繊維(ケブラー)や、化学繊維を圧縮し樹脂で固めた人工皮革がこれに該当する。同じものを長く使いたい人は、このような材質を選んではならない。

人工皮革で出来たファスナー取っ手が破断した様子

 写真は破断したファスナーの取っ手。一見本物の皮革のようだが人工皮革。

 

 丈夫な素材というと他にズックとデニムが候補になるが、ズックの実体は7号帆布と推測され、デニムにははっきりした規格がない。

 

角、エッジの作りに注意

 作りの部分で見ると、継ぎ目、底面4角、コバ(エッジ部)、持ち手は痛みやすい部分になるので、ここの処理に注目する。これらの部分が薄材で「ヘリ返し」「パイピング」された商品は避けた方が良い

 

パイピング処理部が破れた様子

 写真は破れてしまったパイピング処理部。生地は布にPVC(塩化ビニール)をコートしたもの。素材が薄いので使ううちに磨耗してしまう。 

 厚みが十分あれば耐久性の課題は改善するが、そういう商品がほとんどない。革製品では薄い生地でパイピング処理されるより切り口を磨いたものの方がいい。

クラリーノFでへり返しされているランドセルの角部 6年持たせないといけないランドセルには耐久性の高い鞄作りのノウハウが詰まっている。写真は5年使った様子。スレやすい端部は1mm厚のクラリーノFでへり返しされている。

 

 

高価なブランド品は長持ちするか

 ブランド品は耐久性よりデザインを重視して作られている。例えばヴィトンのモノグラムは薄手の布に塩化ビニールをコートしたものだから、耐久性は安く売られているビニール製の商品と同じ。

 そんなブランド品を庶民が1個だけポン買いし毎日持ち出せばすぐに痛んでしまう。痛んだブランド品を大事そうに使う姿はセレブではなく貧乏庶民をイメージさせる

 ブランド品を普段使いできるのは、沢山持っていて、1個あたりの利用頻度を個々の傷みが問題にならないくらいまで減らせる人「お金持ち」に限られる。庶民がブランド品を持ち出すのは、パーティやイベントに限定しておきたい。

※:ブランド商品の値付けは異常に見える。材料や作りから推定される原価に対しゼロが2つ多い。庶民が手を出すシロモノではない。


 

実例

TIDING 潮牛皮具(中国)

 潮牛鞄の外装は厚さ2mm~3mmの牛ヌメ革オイルレザー。頑丈、実用本位の作りで、よくある皮革の高級鞄とは異なる方向の商品価値を獲得している。

潮牛皮具の鞄 3021(ウエストバッグ)と3108(ショルダーバッグ)

 写真は潮牛の鞄。3021(ウエストバッグ)と3108(ショルダーバッグ)。外装、ステッチ、金具の色が統一されていて、見た目に高級感がある。

 外装に厚みがある分、収納は少ない。500mlペットボトルは一応入るが、入れると他があまり入らない。ペットボトルはこちらのようなフォルダーを使って外にぶら下げる形がよい。

 

潮牛皮具のショルダーバッグ 3106と3108

 3106(左)と3108(右)。三角錐のショルダーバッグはカッコいい、ワイルドなライフスタイルの演出にぴったり。
 3108には収納ポケットが沢山あるが容積が小さくティシュやカードくらいしか入らない。
 3106は収納に余裕があり下ポケットに財布が入る。上のファスナーはマグネットフォルダーの下を通っており開閉のとき邪魔。

 

ウエストバッグ3021の接続金具

 3021はお勧めできるウエストバッグ。接続金具は金属製で高級感がある。Rational003などの潤滑剤を少し塗っておくことでスムースに開閉する。

 

キズ付きやすい革に対しキズで絵を描いた例

 レビューに「新品なのにキズだらけ!」という評価をみることがある。ヌメ革はツメなどで簡単にキズ付くが、それが本物の証。

 左は潮牛販売サイトの商品写真。傷つきやすい性質を利用して絵を描いた例。キズなど気にせずガンガン使いたい。

 潮牛皮具にはもっと大きな商品があるが、厚革なので重い。A4サイズが入る鞄は重さ1キロを超え、リュックは2キロに達する商品もある。大きな鞄は素材に帆布を使ったものも候補に入れたい。

 

潮牛皮具の品質

 中国製なので作りや品質はそれなり。ステッチがズレていたり、傷があったり、色の濃い商品(オイルレザー)にはキツい匂いがある。匂いは次第に薄らぐが、気にならなくなるまで半年以上かかる。

 同じ形で色違いの商品がある場合、薄い色の方を選んで自分でワセリンを染み込ませる[1]と匂いを少なくできる。

 元々、国産のカバンと比較するものではない。少々のことは気にせず耐久性の特徴を生かしてガンガン使っていきたい。

 

帆布の鞄

 アマゾンで帆布をKWに検索すると沢山の商品が見つかる。大抵、生地の厚みが不明だが重いものほど厚い生地を使ったものと考えていい。

帆布で出来たショルダーバッグの例 Cai P-6003

 ポリエステル帆布のショルダーバッグ(Cai P-6003)。あまり見ないシンプル&スタイリッシュなデザインでビジネスにも使える。

 幅45cmとかなり大きいが普段は写真のように上1/4を折り曲げてコンパクトにできる。

 

厚い綿帆布で出来たトートバッグの例

 厚い綿帆布のトートバッグ。ジーンズに良く合う。幅45cmと結構大きい。内張りがあり、中にポケットが3箇所あるため小物の収納もある程度可能。

 

 

本革の財布

厚革で出来た二つ折り財布の例 ベルトラボ製

 100% 厚革でできた二つ折り財布 (ベルトラボ取扱)。13×10cm。一見ヨレヨレに見えるが、現物の質感はかなりいい。コバはパイピング処理せず磨きで仕上げられている。

 これにオイルを含浸させてオイルレザーにして使う(関連記事1参照)。

 欠点は使われている革が厚いこと。薄いところでも1mm以上の革が使われていて小銭とカードを入れただけで厚みが3.5cmになってしまう。財布は収納と携帯性の両立も大事。厚すぎるのも考え物。

 

二つ折り財布(ベルトラボ製)のお札を入れる部分

 カードは5枚程度しか入らないが、お札を入れるところに折り返しがあり、ここにカードを挟むことができる。収納が少ないので、アレコレ詰め込まず、良く使うものを選んで収納したい。

 

ブライドルレザーの財布

 Amazonで見つけたブライドルレザーの長財布(GRACIAブランド)。収容量、小銭の取り出しやすさ、ファスナーの動作など完璧。とても使いやすい。

 


 

財布で金運が変わるというのは本当か

 財布はお金に対する意識が表れるアイテム。財布を見れば、普通のサラリーマンか、経済意識の高い人か、お金持ちかどうか、わかるという。

 大多数のサラリーマンはデパートに並ぶ数千円の黒やブラウンの商品を買い、沢山のカードを詰め込んで持ち歩いている。お金に対し特別な意識・価値観を持つ人はこういう財布を持たない。色も様々で、中身も整理されていることが多いようだ。

 「財布で金運が変わる」という話を聞くことがある。お金持ちが持っている財布を真似して持っても、意識が変わらなければ、金運も変わらないことが想像つく。

 

<参考購入先>
潮牛の鞄 数少ない厚革オイルレザーの鞄を作るメーカーです
デニムのショルダーバッグ 重さは丈夫さに比例すると考えられます
本革の財布 ライフスタイルにマッチした商品を選んでください
コバ塗りされた財布 サラリーマン財布のボトムはこれ。外装が丈夫な牛革。コバが塗り仕上で収納も多いです
コバ磨き コバを磨くための液と道具。中身は木工用ボンドと同じ成分のようです

皮革商品の入手先はメーカーと個人が作るレザークラフトがあります。メーカー製にいいデザインのものがない場合は個人作品の販売サイト(Creemaやminneなど)を覗いてみるといいでしょう。

<関連記事>
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<参考文献>
1.帆布サイズ表 丸進工業㈱(リンク切れ)
2.DSP L4768D 帆布 防衛省仕様書改正票(リンク切れ)
3.皮革の知識 日本皮革技術協会