鍋の選び方

 一口に鍋と言っても沢山の種類がある。皆、値段や重さなどをみて「なんとなく」選んでいるのではないだろうか。効率などの違いはあまり気にせず「鍋とはこんなもの」「どれも大差ない」と思われている。買ったときにちょっと大きすぎた(小さすぎた)と思うことがあっても「ま、いいか」で済まされ、それが使えなくなるまで買い換えない。
 鍋の効率は沸騰時間に現れる。麺類を茹でるとき大量の水が要る。説明書き通りの水を使うと沸騰まで時間がかかりすぎてやってられない。説明書よりずっと少ない量で茹でている人が多いのではないか。効率の良い鍋を使うとこの沸騰時間を短縮できる。今回は効率に注目して鍋を選ぶポイントをまとめてみた。

 

鍋の材質

 お湯に早く熱を伝えるためには熱伝導の良い素材がよい。材質は必然的に銅、アルミが候補になる。比熱の違いもあるが、水が圧倒的に高いので問題にならない。
 熱伝導は板厚にも関係している。鉄鍋に対し熱伝導が2倍でも、板厚が半分しかないと相殺され変わらない結果になる。同じ材質なら重いものほど板厚があって熱伝導が良いと考えていい。

 アルミの熱伝導率が良いといっても、それは純アルミの話(1000系アルミの熱伝導率は鉄の約3倍)。アルミ合金では落ちるが、それでも鉄の2倍くらいある。アルミはIHで加熱できないが、底面に鉄や磁性ステンレス(SUS430など)を貼ることでIH対応を実現している。
 銅の熱伝導率は鉄の4倍以上ときわめて良い。しかし材料が高価で重いため板厚を薄くした商品が多い。そんな事情から銅鍋の実質的な熱伝導はアルミ鍋とあまり変わらないものが多いようだ。

 アルミをステンレスで囲んだ多層構造の鍋が市販されている。これは熱伝導に優れたアルミの良さを生かしつつ、アルミの欠点(強度、腐食、IH加熱不可など)を補った優れたものだ。この構造の商品はビタクラフトが有名だが、国産にgeo PRODUCT(宮崎製作所)の商品がある。

 

鍋の取っ手

 熱くならず、持ちやすくするためにプラスチックが使われていることが多い。その多くはフェノール樹脂。熱に強い特徴があるが、膨張収縮を繰り返すうちに亀裂が入ったり割れてしまう。耐久性が問題になる部分で、買い替え需要の喚起に繋がることが多い。

 鍋を長く使うなら、取っ手を含めオール金属で出来たものを選ぶことがポイントになる。但し、フッ素コートの鍋は使い捨て消耗品。取っ手の材質を気にする必要はない。

 

鍋による沸騰時間の違い

 「沸騰時間なんて大差ない」そう思う人がいるかもしれない。geo多層鍋の評判がいいのでこれを購入し、今使っている他の鍋と沸騰時間を調べてみた。

 写真はgeo片手鍋(GEO-18N 左)、ステンレス片手鍋(右上)、アルミ片手鍋(右下)。geoは純アルミやアルミ合金使った7層構造。一番外側にSUS430を使いIH対応を実現している。

 右下のアルミ片手鍋の底には発熱板が多数の穴でカシメてある。こういう形にならざるを得ないのは、異種金属の接合(接着や溶接)が困難なため。

 

 これらの鍋を使って500ccの水を火力強(2.5kW)で加熱し完全に沸騰するまでの時間を調べた。次が実験結果。

表1.鍋の素材とIH加熱部面積による沸騰時間の違い

鍋の種類 サイズ(cm) IH発熱部面積比 500cc沸騰時間(Sec※2)
火力強(2.5kW)
沸騰時間比
geo片手鍋 18 90 1
アルミ片手鍋 18 0.81※1 150 1.7
ステンレス片手鍋 16 0.71 150 1.7
ステンレスパスタ鍋 20 1.2 90 1.0

※1:発熱板に見える穴の面積を除いた値。※2:水温15℃、気温20℃、沸騰時間の誤差は±10Sec。

 geo片手鍋の沸騰時間は圧倒的に短い。これはIH発熱部と熱伝導の良い素材の相乗効果によるものと見られる。
 表の一番下のパスタ鍋の性能はgeoと同じ。これはIH発熱部が大きいためと見られる。発熱部面積は、ほぼ同じ構造のステンレス片手鍋に対し1.7倍あり、沸騰時間比と一致する。
 geoと同じ性能が期待された18cmアルミ片手鍋の成績が良くない。カシメ穴のせいで発熱板の面積が小さいうえ、渦電流の発生効率が落ちているためかもしれない。IHでは熱伝導に注目してアルミを選ぶ意味はなさそうだ。

 以上の結果から、出来るだけ大きな発熱部面積を持つ鍋が効率の面で有利なことがわかった(但しIH加熱コイルの直径より大きくしても意味ないので注意)。

 

大きさの選び方

 鍋の大きさは調理に使う水の量が基準になる。3~4人家族ではだいたい、次のようになる。 

表2.煮物、麺類の調理で必要な水の量

  必要な水の量 備考
パスタ 3~4L (1L/100g)  麺の全長 25cm
うどん、そば できるだけ多く  1L/100g が最低ライン?
おでん 1.8L おでんパック(900g/2人前)
 鍋料理  0.75L  鍋つゆ(750cc/3~4人前)

 

 前項では直径が大きいほど有利と書いたが、水深に注意しないといけない。あまり直径が大きいと水深が浅くなりすぎて具材が露出してしまう。これが問題になるのが「おでん」で、タマゴ(4cm)が一つの目安になる。タマゴの大きさを基準におでんを調理する場合の鍋の直径を逆算すると、直径24cm~25cm(3~4人前)が大きさの上限になる。

 

 写真は25cmの浅形鍋(GEO-25M)。蒸し器とセットになった商品。取っ手が熱が伝わりにくいよう細く出来ているため、加熱後、素手でテーブルまで持ち運べる。実に良く出来ている。蒸し器なしの単品はGEO-25S

 

 この鍋で加減が難しい親子丼を作ってみた。左はその調理例。浅形25cmは数人分の親子鍋の代わりになる。その他、おでん、鍋、3Lまでの麺茹で(25cmのパスタが入れやすい)に活躍中。

 

 

 沢山の水が必要なうどんやそばについてはどうするか。他の麺類より多くの水が要る理由は、麺から出る成分によって品質が落ちることにあるらしい。僅か数人分を茹でるために大量の水を使うのは経済的でない。うどんやそばについては、既に茹でてある商品を使うことを検討して欲しい。

 茹でに大量の水が必要なうどんやそばは冷凍を買ってきてレンジでチンするといい。凍っているものは加熱効率が落ちるうえ角にマイクロ波が集中しやすいので、弱い電力でゆっくり解凍するのがコツ。

 

 

その後

 気に入ったので追加購入。家の鍋はほぼ全部geoに置き換えた。手前は18cm片手鍋(GEO-18N)、煮物に便利な両手鍋(GEO-20T)。
 geoはオール金属製で破損する部分がない。作りからしておそらく一生モノ。少々高価だが、長く使えるので値段は問題にならない。

 奥はパスタ鍋(GEO-21P)。5Lまで余裕で対応できる。湯切り(中子)はメッシュになっている。よくあるパンチ穴の開いた中子ではなく、ラーメン店で見かけるデボ(取手付深ザル)に近い。穴に麺が引っかかることがなく、衛生的で使い勝手が良い。

 

 

最後に

 料理の出来は使う鍋の特性によって左右される。ためしてガッテン[1]やクックパッドのレシピには再現性のないものが多い。原因は条件の記載が足りないためで、鍋などの道具もその一つ。料理の世界では実験観察を工学的知識のない人がまとめているせいか、多くのレシピが役に立たない報告になっていて勿体無い。

 

<参考購入先>
geoの鍋 久しぶりに、いいモノに出会えました
冷凍麺類 いろんなものが売られています
ルクルーゼの鍋 筋肉を付けたい人にお勧め。私的にはそれほどいいモノには見えません。どーしてもコレが欲しいならダッチオーブンが安いです
つゆの素 2倍濃縮が使いやすいです

<関連記事>
IHで鉄のフライパンを使う
茶碗1杯(0.5合)の炊飯を極める

<参考文献>
1.ためしてガッテン