重曹歯磨きを改良する~炭酸ソーダ歯磨き誕生

 世間で重曹歯磨きが話題になっている。重曹の粉に少量の水を加えてペースト状にしたものだが、重曹の粉末で歯が削れてしまう課題があるようだ。それに、一時的に口腔内をアルカリにしても意味ないとする意見も見られる。

 そこで、これら重曹歯磨きの問題について改善を検討し、新しく「炭酸ソーダ歯磨き」を考案したのでご紹介したい。

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水溶液にして増粘剤を加える

 重曹を粉末で使わず水溶液にすれば歯が削れることはない。重曹歯磨きが粉末ペーストなのは、水溶液にするとサラサラになって歯磨きに使えない為だろう。この課題は、増粘剤を加えることで解決できる。

 増粘剤の候補は、以前化粧水を作るときに紹介した[1]カチオン化セルロース(ポリクオタニウム-10)、通称カチセロと、アルギン酸ナトリウムがある。

 カチセロはシャンプーや洗剤、化粧品のほか、ライオンのハミガキに添加されている無害な物質。アルギン酸ナトリウムの方はハミガキはもちろん食品添加物に広く利用されている。

 

重曹を炭酸ソーダに代替する

 重曹(炭酸水素ナトリウム)は弱アルカリ。これをもう少し強いアルカリと代替する。

 候補は炭酸ナトリウム(炭酸ソーダ、ソーダ灰ともいう)。これはpH調整やこんにゃくの製造に利用されている。当館でも以前、コーヒーの味を長持ちさせる添加剤としてご紹介した[2]

 紛らわしいものに過炭酸ナトリウム(漂白剤)、セスキ炭酸ソーダがある。間違えないよう注意したい。

 

食塩を添加する

 塩が殺菌に使えることが良く知られている。これは浸透圧に勾配ができて細胞内の水分が脱水されるため。ナメクジに塩をまくとこれがよく観察できる。

 塩分のある中では、塩分の無い状態で繁殖する菌類は生息できない。数%の塩分濃度では別の菌が増えるという人がいるが、その中に有害な菌がいなければ問題ない(このことは最後に詳述)。

 塩分は微弱な電流を流すイオン機能付き電動ハブラシと相性がいい。実感できないイオンの効果が少しは実感できるかもしれない。

 

カチセロで薬剤を停留させる

 虫歯菌はバイオフィルムに覆われている(台所の三角コーナーなどで見るヌメリがそれ)。そのため口腔内を一時的にアルカリにしたり、塩分で満たしても虫歯菌に届かないから意味ないとする意見がある。

 しかし、上記のカチセロを添加するとこの状況が変わる。それは、カチセロが歯肉や歯の表面に吸着する性質がある為。これは手についた洗剤のヌメリが落ちにくい性質と同じこと。

 これにより薬剤が口の中に少し長く留まる。つまり、今まですすぐと綺麗サッパリ無くなってしまったアルカリや塩分を、歯の窪みや歯周ポケットに長く停留させることができる。

 これですぐにどうこうなる、というものではないが、毎日使い続けることで虫歯菌の働きを弱めていく効果が期待できる。

 

フッ素について

 虫歯予防に有効性が検証されている物質にフッ素がある。カチセロと併用することで虫歯予防の効果が高まる結果が報告されている[3]

 ただ市販のフッ素入り歯磨きを使い続けて虫歯がなくなったという報告を聞かない。おそらく市販レベルの濃度では効果がないのだろう。

 写真は歯科医院で使われている塗り用のフッ素(フロアーゲル)。たまたま入手したものだが、一般に流通していないし、毒性が高く使い方が難しいので、紹介にとどめておく。

 

 

塩分の過剰摂取?コピー記事に注意

 重曹歯磨を続けると塩分の過剰摂取になるという人がいる。歯磨きしたら、普通は最後に水ですすぐのではないだろうか。

 重曹歯磨きについて調べると、複数の人が似たような記事を書いてる。内容からして他人の記事のコピーか、コピーのコピー。そのため、おそらくオリジナルには書いてあった前提条件が抜け落ちている。

 例えば、塩分の過剰摂取になる(飲んだ場合は)、歯が削れる(粉で使った場合は)などの、()の中。検索順位と内容の正しさは無関係。間違った情報を鵜呑みにしないよう注意したい。

 

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実験

 

アルカリ濃度の検討

 重曹ペーストのpHを測ったところ8.5 だった。この数字は中性(pH7)と大差ないが、 虫歯菌が出す酸を中和するだけなら重曹で十分かもしれない。

 今回は汚れ落としの効果を積極的に狙って、重曹を炭酸ナトリウム水溶液に代替する。

 使う炭酸ナトリウムの濃度は、0.1%。この水溶液の実測pHは11.6。但し、味がちょっと問題。さらに10倍薄めても pH11.4 あるので使えそう。0.1%で違和感のある人は 0.01%まで薄めて問題ない。

 ちなみにセスキ炭酸ソーダのpHは9.8(1%25℃、石鹸百科より)。掃除に使うセスキスプレーの濃度は1%程度である。成分的に問題ないが掃除用の薬剤なので使わない方が無難。

 

カチセロ最適濃度の検討

 カチセロ5%水溶液の感触はシャンプーやボディソープなどと同じ。歯磨きペーストより低粘度だが、歯ブラシに乗せて使える。ところが、これを実際に歯磨きに使うと口腔内に吸着して残る為、残留感がある。

 写真は5%カチセロ溶液を歯ブラシに乗せたところ。

 これで歯を磨いてみると、うがいしても喉の奥に半日くらい残留感が残る。

 

 

 濃度を検討した結果、残留感が許容できる濃度は2%前後だった。化粧水に近い粘度だが、歯ブラシに乗せてすぐに流れ落ちることはない。

 もっと粘度が欲しいときはアルギン酸ナトリウムを追加すると良いが、粘度が高すぎると歯周ポケットに入りにくいかもしれない。できるだけカチセロだけを低粘度で使った方が効果がありそうに思える。

 

塩分濃度の検討

 よくわからないのでとりあえず海水と同じ4%で様子をみていく。

 


 

炭酸ソーダ歯磨きのレシピ

(2018.1.14)

材料

水:50cc
カチセロパウダー:1.0g
炭酸ソーダ:0.05g
食塩:2.0g

 

作り方

1.まず水にカチセロを溶かす。綺麗に溶かすには、水に入れてかき混ぜながら温度をあげる必要がある。
 少量の水に溶いて混ぜながらお湯を少しずつ注ぐか、勢い良くかき混ぜて手早く電子レンジで加熱すると簡単。

2.炭酸ソーダと食塩を入れて溶かす。

これでおしまい。順序を逆にするとカチセロが溶けないので注意。材料費は一番高いカチセロで20円/g。

 

 完成した炭酸ソーダ歯磨き。カチセロパウダーが完全に均一に溶けるまで少し時間がかかる。

 

 

使用感

 心配していた味の方は問題ない。カチセロが薬剤を味覚に直接触れないようにする為とみられる。

 冷たい水ですすぐと口の中に僅かな残留感がある。ラーメンを食べた後、口の中にラードが残る感覚に似ている。これはカチセロのせいだが、しばらく時間がたつと気にならなくなる。

 真っ先に感じる違いは翌朝の口の中。寝る前に磨いた後とあまり変わっていない。今まではどんなにしっかり磨いても翌朝の口の中は良くなかったが、これが改善されている。

 このまま、しばらく使ってみる。

 

常在菌への影響

 アルカリや塩分は虫歯菌だけでなく有用な常在菌にも影響する。虫歯菌が苦しいとき、常在菌も同じように苦しいはず。

 普通、環境が変わると元からいた菌類はいなくなり、新しい環境に適した菌類が自然に増える。このことは、水中でも、土中でも、放射線の下でも、高温高圧の深海でも同じこと。それらが、新しい常在菌になる。

 従い、常在菌が無くなって困る心配はない。

 

インフルエンザの予防に応用?

 カチセロ5%水溶液は上でご紹介したように、うがいしても喉の粘膜に半日くらい貼り付いている。不快な感覚だが、私などはこう思う。

 この性質は風邪やインフルエンザの予防に使えるのではないか?

 いままで無防備だったところにバリヤーを作れるかもしれない。機会があれば検討してみたい。

 

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