DLPAリモートアクセス惨敗~ユーザー不在の規格は売れなくて当たり前

DLPAリモートアクセスガイドラインのロゴマーク DLPAリモートアクセスガイドライン2.0というものがある。知らない人は、これが何なのかイメージできないと思う。似たものにDLNAがあって混乱する。

 メルコ(バッファロー)やアイ・オ-・デ-タ機器などが、このガイドラインに沿った製品を作っている。これと連携してコンテンツを再生するソフトをデジオンが作っている。

 

ガイドライン策定の背景

 このようなガイドラインが生まれた経緯は想像できる。

 「テレビから撮ったものは、それを撮った機器でしか再生できない」

この不自由な制約が、長年メディア機器の売り上げに影を落としてきた。

 そこで「せめてスマホで見られるようにしよう」と考え、テレビで撮ったものを外で見れるようにするための仕組みを定めた。それが「DLPAリモートアクセスガイドライン」だ。

 ガイドライン策定から4年過ぎた今(2018年)も、一般消費者のレビューがあまりない。おそらく売れていないのだろう。

 

DLPA機器よりiPhoneを買う

 DLNAの中身をみていくと、ライセンスや動画の持ち出しに制約がある。ニコニコやTouTubeでいろんなコンテンツを快適に楽しめる今、少しでもストレスを感じる場面があってはいけないもの。

「家族のだれもが、どこでも自由に試聴出来て、自由に持ち出せて、PC、スマホ、カーナビで再生できる」

そうでなければ、録画したテレビ放送を外で見るだけの機器にお金を出してくれるはずがない。DLPA機器を買うお金があるなら、新しいスマホに買い替えたほうずっといいだろう。

 

マーケティングの失敗

 DLPA機器を作るメーカーサイトの商品説明を見ても、購入意思の決定に必要十分な情報がない。DLPAガイドラインの説明とか、全体の機器構成とか、こんなことが出来ますとか、どうでもいい説明ばかり。機器メーカーが説明を作ると大抵こうなる。ユーザーが実際目にする部分の説明が何もないから、自分がそれを使って便利になる姿をイメージできない。

 制約事項(出来ないこと)の説明がはっきり示されていない。この種の仕組みには何かと制約が多い。買った後になって「えっ?それ出来なかったの!?」となってしまう不安が払拭できない。これはデメリットの説明をせず、いいことばかりを並び立てて売る保険や投資などの商品に似ている。

 実際、どこを見ても出来ることしか書いてない。これでは興味を持った人が説明を読んでも判断できない。結局買ってみないと解らないってことでUターン。おそらくずっと、そんな状況が続いているに違いない。

 

バッファローの商品ページにあるDLPAガイドラインの説明

出典:バッファロー LS411DXシリーズ商品説明

 図はバッファローのホームページにあるDLPA対応HDD(LS411DX)の説明の一部。ガイドラインの中身が詳しく書かれている。

 ガイドラインというのは、モノを作る人が参考にするもの。デカデカと紙面を割いて消費者に説明するものではない。

 

出来の悪いソフトでダメ押し

 ネットワーク・オーディオプレーヤー、ネットワーク・メディアプレーヤー、DLNAメディアサーバー、DLPA NAS・・・いろいろあるが、これらに乗るUIやソフトはオマケ。どこかのソフト会社に投げているのか、出来が良いとはいえないものがほとんど。

 メディア機器の主役はソフト、機器は付帯物なのに、国産製品ではそこの立場が逆転している。ユーザーの使い勝手を徹底的に追求したアップルのそれとは、比べるべくもない。

 

メディア機器はPCに統合できる

 多くのメディア機器の中身は機能を特化したPC。すると、これらのメディア機器を個別に買って出来の悪いUIを無理に使わなくても、いまあるPCとオープンソースのフリーソフト(MPC-BEやfoobar2000など)を組み合わせれば、タダで同じことができてしまう。

 地デジや衛星放送は、不便なビデオレコーダーの代わりにTVチューナーとフリーソフト(TVTest,TvRockなど)を使う人も多い[1]。これは先に書いた

「家族のだれもが、どこでも自由に試聴出来て、自由に持ち出せて、PC、スマホ、カーナビで再生できる」

を実現できる。つまりDLPAで実現したことがやりたい人は、とっくの昔にPCに移行してやっている。今頃DLPAを出したところで、もう遅いのである。

 

 「外で見る」はオンデマンドで充分

 外出先で録画した番組を見れる・・それがDLPAのメリットだが、オンデマンドという似たことができる代替サービスがある。いまやほとんどの放送局がこのサービスと提携していて、だいたい1週間以内なら見逃した番組を無料で見ることが出来る。

 リアルタイムで見る必要がない人にとって、これで充分かもしれない。この仕組みは漫画雑誌や週刊誌など、あらゆる分野に拡大しつつある。将来、テレビやレコーダを不要にしてしまうかもしれない。

<オンデマンドの例>
Amazonプライムビデオ

 

最後に

 今や、PCとフリーソフトの組み合わせで大抵のことができてしまう。「外で見る」はオンデマンドサービスで十分。そんな中、自分で撮ったものなのに、見るだけでコピーも編集も自由にできないメディア機器を使うメリットは何だろう。

 ユーザーメリットの無い、不便なメディア機器は、今後ますます売れなくなるだろう。

 

<関連商品>
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ネットワークオーディオ
ネットワークメディアプレーヤー

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