オーディオ比較テストの限界~人間の耳で細かい音の比較はできない

 オーディオ雑誌を見ると、いろんな比較テストの記事が記載されている。また、ネットにも、いろんな音のレビューがある。これらは本当に音の違いを正確に聞き分けた結果だろうか。

 

音の波長を知る

 音速 c は、常温でほぼ340m/s。従って音の1波長は、周波数をf(Hz)とすると、

λ=c/f (m)

となる。この式を使って、いくつかの周波数の音の波長を計算した結果を次に示す。

10Hz 340/10 =34m
100Hz 340/100 =3.4m
1kHz  340/1000 =34cm
10kHz 340/10000=34mm

 100Hzの1波長は3.4mなので、その半分の距離で音圧ゼロになるポイントができる。

 10kHzの1波長は34mmしかないので、17mmごとに音圧が大きくなったり、ゼロになったりする。

 つまり、音源からの距離によって、音圧特性が変わってしまう。このような現象を、試聴するとき考えなくてよいのだろうか。

 

周波数特性の山谷はどうして起こるのか

 一般のリスニングルームでは、部屋の反射や定在波が問題になる。これらの現象によって、スピーカーから直接届く音と、反射してきた音がミックスされると、音圧が相殺されたり重なりあって周波数特性に山谷が出来る。

 残響の多い室内では、スピーカの位置や角度を僅かに変えただけで周波数特性は大きく変わってしまう。

 この影響を無くそうと思ったら、無響室にスピーカーを置いて、直接音だけ耳に届くようにしなければならない。中に人がいる場合は、頭と体の姿勢を完全に固定しなければならない(人物も音を反射し、音響特性に影響を与える為、無響服?が必要になるかもしれない)。

 無響室でない室内で微妙な音の比較視聴をする場合は、少なくとも頭の位置や姿勢、他にだれかいる場合はその位置や姿勢、部屋に存在する物の配置等は、すべて固定しなくてはならない。

 この要求は無響室よりはるかにシビアであり、少しでも動いてしまうと、スピーカからの伝達関数に変化が起こり、音色が違ってしまう。

 

正確な試聴をするにはどうしたらよいか

 自分はできるだけ吸音効果の高い服を着て、姿勢と頭を拘束バンドで固定し、友人にチェンジをお願いして、作業が終わったら、部屋から退出してもらう。

 ここまで対策しても、十分とは言えない。耳や頭の形、体格が、個人によって異なるため。そのため鼓膜に届く音は、他人が聞いているものと同じになることはまずない。

 このように考えると、音を正確に評価できる実験環境を整えることはきわめて困難で、現実的でないことがわかる。ブラインドテストによって先入観を廃しても、有意な実験をすること自体、かなり難しい。

 

結論~人間の耳で細かい音の比較はできない

 音の視聴をする際、頭や体を拘束バンドで固定したり、物の配置を変えない配慮を誰もしないのは、そういうことが試聴に影響しない、言い換えると、その影響が「耳では判らない」からにほかならない。

 結局人間は、周波数特性、過渡応答、歪み率、S/Nの、大きな変化しか知覚できない。

 そうした大きな変化を人間の脳が解釈して、「静けさ」「スピード感」「まろやか」「硬い」などといった、オーディオ用語で表現されているのが実態だろう。

 スピーカー以外のもの、例えばCDプレーヤーやケーブル、インシュレータなどは、明確な差を聞き分けることが難しい。そこで明らかな差があったような主張をする人も、実際は「何となくそんな気がする」程度の知覚しか出来ていないのが本当のところではないだろうか。

 

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