自然塗料でカーコーティング~ゴム プラスチック にも対応!

 木材仕上げで使われる自然塗料の実体は酸素と反応して固まる油。「ワックスより堅牢な被膜ができる」と考えて実験を重ねてきた。結果、自然塗料の保護効果はワックス以上であり、決め手のなかったゴム・プラスチックに対し優れた保護効果があることがわかった。以下に、その詳細をご紹介する。

 

自然塗料の特徴

 自然塗料はアマニオイルが主成分。環境・人に優しく、素材に浸透し、酸素と反応して硬化する。硬化後の皮膜は緻密で保護性能に優れる。界面活性剤、有機溶剤を含まないためゴム・プラスチックへの影響が少ない。

 

クルマに適した塗料の候補

 自然塗料を作る代表的なメーカーにリボス社(ドイツ)がある。リボスの自然塗料には多くの種類があるが、そのすべてがクルマに適用できるわけではない。クルマに使える塗料の候補は次の通り。

 

表1.リボスの自然塗料のクルマへの適合

塗料 適用 UVカット
カルデット 着色 屋外ゴム、プラスチック
タヤエクステリア 着色 屋外ゴム、プラスチック
アルドボス、エシャ クラフトオイル 黄色透明 皮革、ボデイ、ホイールコート ×

<注>
カルデット、タヤには黒色があり、同じ黒色のゴム、プラスチックの部位に適合する。
タヤの方が濃く色づき、UVカットの効果が高い。タヤの黒色はやや赤みを帯びている。
塗料には固有の臭いがあるが、乾燥硬化後はほぼ無臭の仕上がりになる。
ゴムを膨潤させるが、塗料に含まれる揮発成分(イソパラフィン)による一時的なもので、乾燥後元に戻る。
施工直後、無駄に強い撥水効果がある。汚れの皮膜ができれば撥水しなくなるが、洗車すると撥水が再現する。日射しが強い季節は、雨降りの後水玉をふき取ることを推奨する。

 

塗布方法

 スポンジ、不織布、刷毛などを使う。塗料はどれも粘度が低くよく伸び、また硬化までに十分時間の余裕があるため施工性はとてもよい。
エッジモールには刷毛が便利だが、使用後よく洗浄しておかないと再利用できなくなる。細かい糸くずが出やすい布類、ティッシュは不適。

 

硬化時間

 塗布後2~3時間で硬化をはじめ、2~3日でほぼ硬化終了する。酸素と反応して硬化するため、密閉した場所では硬化が遅い、もしくは硬化しない。 (室内に使用した場合は酸欠の恐れがあるため換気に注意する)

 

はみ出した塗料の除去

 リボスではスバロス(イソパラフィン)を奨励しているが灯油やペイント薄め液が使える。布でこするだけでもある程度除去できる。

 

注意点

 自然塗料の施工は一般のワックス、コーティングとは異なり「塗装」に近い。ボディに塗布したものを完全に除去するには「磨き」に出す必要がある。プラスチックに塗布したものを除去することは困難。ゴム、皮革には浸透するため元に戻すことはできない。

 

自然塗料の入手先(例)

カルデット 黒檀
タヤエクステリア ブラック
アルドボス
エシャ クラフトオイル シリコン配合。自然塗料の中で最も水に強い。私はこれをメインに使用しています

 自然塗料は開封後空気中の成分と反応して変質したり硬化が進むのでできるだけ空気が入らない形で小分けして保存する。容器は元々溶剤を密封するために作られたMrスペアボトルがベスト。いろんなサイズのものを揃えておくと便利。
Mr.スペアボトル

 


 

実例(事例別施工要領)

 

屋外ゴム、プラスチック、黒塗装補修

(ウインドウエッジモール、タイヤ、黒色プラスチック部、ワイパーアーム、ウインドウピラー黒色塗装部)

施工法

 半艶仕上  カルデット(黒檀)×2
つや消し  タヤエクステリア(黒)×1

タヤは色が濃く、保護効果も高いほか一度の塗布でつや消しの皮膜が得られる。
黒以外でも同じ色を作って塗ればよい。たとえばタン色のビニルレザーなど。
タヤの黒は若干赤みがかった仕上がりになる。これが気になる場合はカルデットを上塗りすればよい。

アメゴムを使って自然塗料の保護効果を調べた結果 左はアメゴムを使った屋外暴露実験の様子。もともと真っ直ぐなゴムにストレスをかけた状態で紫外線、雨にさらし、ストレス解放後の永久変形、ひび割れなどをみる。基本的に変形の少ない物ほど劣化が少ない。詳細は青空駐車で車を長持ちさせる~プラスチック、ゴムの劣化防止剤をテストするを参照。

 

注意点

1.タイヤの接地面には塗布しないこと。
2.塗り重ねると次第に艶が増す。
3.ゴムは塗料を吸い込んで膨潤・変形するため一度に多く塗りすぎないこと(変形しても乾燥すれば元通りの形状に戻る)。

 

メンテナンス

 カルデット(黒檀)を薄く塗り重ねる。

 

機能・メリット

・水分、紫外線をカットしゴムの劣化を防ぐ。
・浸透硬化するため雨や熱によって自然消失しない。
・ワイパーゴムブレードの摩耗、へたり、ビリ付き防止(検証中)。

我が家のプラッツは8年経過していて、プラスチックやゴムにかなりの劣化が見られる。写真はそのプラッツに対する施工事例。以下同様。

クルマの黒い樹脂部品にカルデット(黒檀)を塗布した様子クルマのドアエッジモールにカルデット(黒檀)を塗布した様子タイヤにカルデット(黒檀)を塗布した様子

 写真左:プラスチックへカルデット(黒檀)を部分塗布したもの。
 写真中央:劣化したエッジモールにカルデット(黒檀)を2度塗りしたもの。
 写真右:タイヤにタヤ(黒)を部分塗布したもの。

どれも塗料を塗った部分は新品に近いしっとりとした艶に仕上がり。保護効果は年に1度塗り重ねしていくことで比較的長期間持続できると考えられる。

 


 

ボディ・ホイールのコーティング

施工法

 エシャ クラフトオイル×1、アルドボス×1のいずれか。
 参考:シラグシタールを使うと常温ガラスコートができほぼ完全な保護皮膜を形成できます[1]。

スポンジ、不織布などを使って薄く塗り伸ばすだけでOK。乾燥後、何度も塗り重ねることで緻密で堅牢なコーティング膜ができあがる。クノスに光沢はないが、保護効果が最も優れる。

 

注意点

1.塗布直後は透明だが酸化により色が黄変するため白色、シルバーなど明度の高い色には適さない。
2.塵が付くと付いたまま硬化してしまうので風のない日に施工する。ガレージの中が望ましい。
3.汚染防止や汚れ落ちに関する効果はない。塗膜は通常の塗装表面と同じように汚れていく。

 

メンテナンス

 同じものを塗り重ねる。定期的に塗り重ねることで保護効果を永続的に発揮できる。
上記で仕上げたゴム、プラスチック部に上塗りしても問題ない(但し、つやは増す方向に変化する)

 

機能・メリット

虫痕、鳥糞による浸食軽減
洗車キズの軽減
微細なキズ、ひび割れの浸透補修、防錆

クルマの塗装に透明な自然塗料(3種類)を塗布した様子

コーティング仕上げの様子。奥のほうから、アルドボス、クノス、メルドス(30day)。メルドスは平滑で水はじきの良い仕上がりを得るが、黄色っぽく着色するので適さない。

 


 

皮革(皮シート、皮ハンドル、シフトノブ)

施工法

 透明仕上 エシャ クラフトオイルまたはアルドボス×1~2
 黒色仕上 カルデット(黒檀)×1~2

施工直後には強いツヤが出るが、乾燥するにつれ落ち着いた風合になる。

 

注意点

1.吸い込みの激しいもの、起毛処理したものには適さない。
2.明度の高い色、白系統の色には適さない(塗料自身の色により黄褐色に色づく)。
3.事前に汚れ、油分等を十分落としておく。(汚れを封じこめた状態で仕上がる)。
4.塗り重ね回数は硬化後のツヤの様子を見て決める。1回目でつや消しの場合は表面に皮膜ができていない証拠でありぬり重ねできる。
5.完全硬化に2~3日かかる。当初、若干の臭い、べたつきがある。一日の終わりに施工し、一晩おくことが望ましい。
6.硬化時に室内の酸素を消費するため、硬化するまでは窓を少しあけるなどして換気をよくする。シートなど広範囲に塗布したあとは、いきなり車内に入ると酸欠の恐れがある。車内に入る前に必ず換気をすること。

 

メンテナンス

 同じオイルを薄く塗る。

 

機能・メリット

・べたつきの軽減(ウレタンハンドル)
・汚染防止(撥水、汚染の軽減。ジュース、コーヒーなどをこぼしても染みこまないうちに拭き取れる。
・滑り止め(ホールド性の向上)

ステアリングにアルドボスを塗布した様子

左はアルドボス仕上げしたステアリングの例。

 

 

室内プラスチック

施工法

 着色つや消し仕上 カルデット×1
 透明半つや仕上 エシャ クラフトオイルまたはアルドボス×1

 施工直後には強いツヤが出るが、乾燥するにつれ落ち着いた風合になる。

 

注意点

1.保護を目的とした使用は奨励しない。
2.塗装、硬化中に埃を立てないこと。
3.カルデットは塗り重ねでつやが出る。(つやが出過ぎると安っぽく見える)。
4.その他、「屋内皮革」に準じる。特に酸欠には注意。

 

機能・メリット

・見た目、質感の向上(つや消し仕上、小傷除去)
・べたつきの軽減
・劣化防止(紫外線カット、カルデットの場合)

 

 

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