トヨタのリコール問題と危機管理~電子制御の不具合ではない

 水に落ちた犬は叩け!

 一度問題視されると、普段スルーされるような些細なことまで槍玉にあげられて徹底的に叩かれる。何かをきっかけに日ごろの不満が上乗せされて強い負のバイアスがかかることはよくある話だ。

 

 これに対し企業側は、「なんでそんなことまで・・」「それはリコールではないだろう」といった「平時の意識」で判断し対応を取ってしまう。これが世間の期待とギャップをつくってますます風当たりが強くなり、最終的には、最も最悪のケースで事態を収拾せざるをえない結末になる。

 罰金で例えれば、平時なら1000円、もしくは謝ってすむ話が、今では1万円以上支払らっても納得してもらえるかわからない状況になっている。

 最初に世間の期待以上の対応をすれば、一発で事は収まり損害は最小になる可能性が高いが、目先の損失を最小にしようとする思考はなかなか払拭できないもの。

 

電子制御の不具合ではない

 トヨタは「電子制御に不具合はない」という。「不具合」とは設計者の意図しない動作をいうので、アクセルとブレーキを同時に踏んだときアクセルを優先することが「元々意図した動作」であるなら、不具合とは言わない。

 すべてがメカニカル式だった昔のクルマは暴走しなかったし、何か起っても最悪キーを回してエンジンを切ってしまえばよかった。しかし今時のクルマはアクセルもブレーキも電子制御で、しかもスマートエントリー(ボタン式のエンジン始動)である。これは走行中だと3秒以上押し続けなければエンジンが切れないシロモノらしい。

 オーナーはそれを知らないかもしれないし、たとえ知ってたとしても、パニック時に片手でハンドル操作しながら3秒長押しするなど無理である。

このことを槍玉に挙げて非難する人も多いが、アクセルとブレーキ、どちらを優先しても一長一短で、どちらがよいのか一概に結論付けできないらしい。いずれにせよ、暴走したとき「すぐに止める手段が無い」のが課題のようだ。

 

ブレーキオーバーライドでは不十分

 ならば、こうしたらどうか。

「エンジンスタートのボタンが押されてから、一定時間内にブレーキを(強く)踏んだ場合、エンジンカットする。」
「ブレーキを(強く)踏みながら、エンジンスタートのボタンを押した場合は、直ちにエンジンカットする」

これは直感的に理解しやすいし、知らなくてもパニック時には無意識にやりそうな操作だ。「ブレーキオーバーライド」も一見正しいように思えるが、そうしなかった理由があるはずだ。安易な改善策に走れば、新たな問題が出てくる可能性がある。

 

余計なことをしすぎる今時の電子制御

 電子制御は限りなくメカニカルに近いフィールにして、その関与を意識させない形にすべきではないだろうか。

 例えばブレーキとアクセルが同時に踏まれた結果がメカニカルと同じであれば、ユーザーにも挙動が予測しやすく、ユーザーサイドで適切な対処を期待できる。そこで余計なことをするから、「フィーリングに違和感」とか、「予期せぬ動作」が起こるのだろう。パワステに関しても同じことが言える。

 

 結局今回の事件は、長年部品のコストを叩いてきた「コスト至上主義」のしっぺ返しなのかもしれない。これを機会にトヨタがさらに良くなることを期待したい。

 

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