テレビの音質を良くする~7万円で映画館を再現!ホームシアターの作り方

 近年テレビの画質が大幅に進歩し、大画面で映画を楽しめるようになった。ところが、テレビ内蔵スピーカーの音はあまり良くないものが多い。その改善を検討して「どうせならホームシアターを作ろう」と考える人が多いようだ。

 音響メーカーがそんなニーズを捉えてホームシアターの製品をラインナップしている。アンプ、スピーカーにある程度のものを揃えると、10万円を超える。

 ホームシアターの目標は映画館の再現だが、大枚はたいて作り上げたシステムから出る音は映画館に程遠い。音量を上げると歪が増えて煩いだけ。何かが根本的に違う。

 今回は、映画館の音の秘密を解き明かし、あまりお金をかけずに映画館に限りなく近い音を再現できるホームシアターの作り方をご紹介する。

 

 1.システム計画のポイント

 ホームシアターでは音声をサラウンドで再生する。そのシステム作りのポイントは、次の通り。

1.フロントSPに能率の高いものを使う
2.センターを省略する
3.スリム&薄型のAVアンプと組み合わせる
4.スリムPCを再生の中核に据える
5.目立たないものを使う

 昔は全てのスピーカーに同じクオリティが求められたが、今はフロントだけでよい。何かと問題の多いセンターは最初から使わない形で計画する。

 それと、機器が目立つと鑑賞の邪魔になる。そんな理由から、ホームシアターに使う機器の色はすべて「黒」で統一する。表示が光るものは明るさの調整機能が必須。

 

 

2.映画館の音の秘密

 ホームシアター専用機を使って組んだシステムで見られる共通の課題に、音のショボさがある。

 DSPで音響効果を創り、沢山のスピーカーを周囲に配置し、サブウーファーで低域を十分補ったうえで音量をあげても、映画館のような音にならない。この問題はアンプやスピーカーにお金をかけても、チャンネルを増やしても改善しない。

 映画館では「音が飛んで来る」感覚を体験できる。音声も効果音も、リアリティに溢れている。そんな映画館の音を自宅で再現するためには、映画館でどんなスピーカーが使われているのか、知ることが必要だ。

 

JBL 4722N、3722N(JBL2015カタログより)

 写真は映画館で使われているスピーカーの例。能率はなんと104dBもある。85dB前後で作られるホームシアター専用SPとは次元が違う。

 過渡応答に優れた品質の良い音が軽々と出る。大音量でもそれがまったく崩れない。

 

 映画館の音を自宅で再現したいと思ったら、映画館の物にできるだけ近いスピーカーを導入するのが正しい。ポイントは「能率」。すなわち、可能かなぎり能率の高いスピーカーを選ぶことがポイントになる。

 

 

3.スピーカーの選び方

 

フロントスピーカー

 5.1chサラウンドで最も重要な部分がフロントスピーカー。ここに能率の高いものをセレクトする。具体的には、ホーンを使って能率90dB以上を達成しているSR用。CLASSIC PRO CSPシリーズが安くて使いやすい。

 SR用スピーカーは能率優先で設計されていて周波数特性にうねり(クセ)のあるものが多い。ここがフラットなヤマハS112Vを使えば2chオーディオと兼用できて素晴らしい結果が期待できる[9]

 

 SR用のCLASSIC PRO CSP6を使った我が家のシステム。映画館のような雰囲気と迫力が得られ、満足度はとても高い。スタンドはキクタニのMO-SPS

 SRスピーカーには「パワード」といってアンプを内蔵しているものがある。これらは使えないので注意。

 

 CLASSIC PRO CSP6 の正面出力音圧特性。概ねフラットで問題ない。ただ100Hz以下がほとんど出ないので単体では観賞に使えない。

 低音が出ないのは能率の高いスピーカーの特徴だが、サブウーファーと併用するホームシアターにはうってつけ。

 

 

 

センターSPは必要ない

 センターSPはサラウンドシステムを作る人の悩みとなっているようだ。そもそも、センターSPは映画館などの大スクリーンで音の中抜けを防ぐためのもの。たかだか、数メートルのスクリーンでは不要。

 センターSPはどこに置いても邪魔になるし、スクリーンとズレた位置にしか置けないから画面と音源が一致しない(近年これを補正する機能が登場したが、そこまでして使う必要性がない)。

 従い、センターSPは最初から「無し」で計画するのが正解。最近のプロセッサは設定で「センターなし」にすればセンターの音声を自動的に左右に振り分けてくれるので問題ない。

 

サブウーファーの選び方

 SR用スピーカーは低音があまり出ないのでサブウーファーが必要になる。

 音のベースを支える重要なアイテム。大振幅を歪少なく再生できる性能が求められる。この点は、口径が大きいほど、出力(W数)が大きいほど有利。

 ここは口径25cm以上で250W以上入るものが望ましい。

 

 サブウーファーの電源連動機能は必須。付いてない場合はPC用の電源連動タップを併用する。

 
 
 

 

サテライトSP(リアSP)の選び方

 サテライトから出る音には低音がほとんど含まれないので、大型のものは必要ない。小型で天井や壁に設置が容易なものを選ぶ。

 フロントが高能率ならここも高能率な機種を選びたい。Classic Pro SLIMシリーズ(CS104)がその数少ない候補になる。壁取り付け用ブラケットが付属する。

 

hometh1 既にセットSPを持っている人は、サテライトに転用してしまうのも手。

 写真はパイオニアのセット(HTP-S333)に付いていたSPを転用した例。中域に少しクセがあるがサテライトなら問題ない。

 配線は新築の時に天井に設置したスピーカーターミナルを利用。

 

 

 

4.AVアンプ(AVレシーバー)の選び方

 高能率スピーカーと組合わせる前提があるので、アンプ側の出力は小さくて良い。例えば能率85dBクラスのシアター専用SPと同じ音量を、上で紹介したCSP6では1/4の出力で出せる。

 そのため、スリム&薄型の小出力アンプが使える。

 デジタルアンプ(クラスDアンプ)を使った商品を選ぶと、普段のTV視聴で使ってもほとんど消費電力が気にならない。候補はONKYOのTXシリーズ。詳しい選び方は関連記事4を参照されたい。

 

 写真はスリム&薄型アンプの例(ヤマハRX-S600)。

 高能率SPに大出力アンプを組み合わせると、かえって音を悪くするので注意[3]

 

 

画面の色を正確に調整する

 PCをテレビに繋ぐとキャリブレーションツールが使える。これによって今まで困難だったテレビの色調整が正確できる[8]。画質にこだわる人はQuadroなどのGPUボードがお勧め。

 

 
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5.配線

 スピーカーの配線は2スケアのVFF(普通の平行ビニールコード)で十分[2]。サテライトにいく電線は色を壁の色に合わせて目立たないようにする。

 フロントのSRスピーカーは大抵スピコン専用コードもあるが、2スケアの2芯キャブタイヤケーブルを買って作った方が安い。このあたり、ホームセンターの切り売りを活用する。

 

 新築のとき埋込スピーカーターミナルを設置しておくと配線がスッキリする。

 写真は創造の館視聴室[5]のサテライトSP用ターミナル。裏の配線は2スケアのVFF。

 

 

 

6.設置

 大抵は買ってきて配線して、スピーカーのレベルを自動調整して終わりになっていると思う。これで満足いく音が出ることはほとんどない。ここからがスタートになる。

 

室内音響

 室内の定在波を確認して対策する必要があるかどうか判断する。簡易的には手を叩いてみて妙な響きが聞こえなければよい。対策が必要な場合や、よりよい室内音響を求める人は関連記事7を参考にして欲しい。

 

周辺機器をAVアンプ、TVどっちに繋ぐか

 AVアンプにもTVにも信号セレクタがついているので、どちらに周辺機器を繋ぐか迷うことがある。AVアンプの説明書にはいろんな機器を自分に繋ぐよう書かれているが、それが必ずしも正しくない。基本的に次のようにするとよい。

(1)TVを家族で共有している場合

 TVを中核に据える。つまりPCやゲーム機など周辺機器をすべてTVに繋ぎ、TVの光デジタル音声出力端子をAVアンプと接続し、デジタルスルー(パススルー)で音声信号をAVアンプに送る。HDMI連動の為、TVのどれかのHDMI入力端子と、AVアンプのHDMI出力を繋いでおく。

 こうするとリモコン一つですべての操作ができ、AVアンプの存在を意識しないで使える。これからTVを買う場合は、TVの入力端子の数や、光デジタル音声出力端子の有無など、事前に確認にしておきたい。

(2)音質を優先する場合

 2chオーディオやホームシアターをメインにする場合は、AVアンプを中核に据える。周辺機器をすべてAVアンプに繋ぎ、TVなどの映像機器は映像を映すだけに使う形になる。

 TVでデジタルスルーできない音声フォーマットに対応できる。映像機器がプロジェクターの場合これで文句ないが、TVの場合は結果的に(1)が便利なことが多い。

 

スピーカーの設置

 ラックにポン置きではなく、適当な台を使ってツイーターの高さをテレビの中心付近に合わせる。このときウーファーのセンターを設置から25cm程度離さないと特性が乱れる[10]

 この寸法の制約上、ローボードの上にテレビ共々置く場合はCSP6がちょうどよいサイズになる。大きいスピーカーを使う場合はローボードの上に置くのではなく、床からスピーカースタンドを立ち上げる必要がある。

 サテライトは床置きせず、45°後方の天井付近に壁付けする。

 

サブウーファーの配置

 次の図を参考にする。詳細は関連記事1を参照。

 サブウーファーを定在波の影響が少ないエリアに置いた例。中央にAVラックを置ける。

 

 

 

7.再生機器

 DLNAを利用したNASサーバーネットワークメディアプレーヤーではなく、リビング用にスリムPCを1台設置し再生の中核とする。接続はPCのHDMI出力をAVアンプにつなげば終わる。

 今はネットの動画やゲームなど再生メディアは多様化している。これらに全部対応できるPCがベスト。CPUにCorei5以上を選べば能力的にも問題ない。

 PCは HDMI CEC(電源連動など)に対応していないものがほとんど。ここは今後の改善が求められる。

 

 リビングに設置したスリムPC。ネット動画、レンタルビデオ、2chオーディオ再生など、これ一台ですべて賄える。

  キーボードとマウスは必ず無線で接続する。

 動画などの大きなデータは別途ファイルサーバー(大容量HDD搭載PC)を設置してそこにまとめるとよい。接続はフォルダ共有だけで十分。

 

 

音声を無劣化(パススルー)でAVアンプに送り出す

 パススルーとはメディアが持っている音声信号をそのままアンプに送り出すこと。これをやることでメディアに収録された音声情報を忠実に再生できる。ここはMPC-BE[6]というフリーソフトのプレーヤーを使うだけで解決する。

 MPC-BEをインストールしたらオプション-内部フィルタ-Audio Decoderのプロパティでパススルーのところにチェック入れればOK。

 2chオーディオはfoobar2000(フリーソフト)とWASAPIの組み合わせで無劣化再生できる。

 

 

 


 

セットプラン

 

1.もうこれにしろセット 合計 68,200円(税込 2018現在) 

 既存の液晶テレビなどを活用してホームシアターを作るプランです。

フロントSP  CLASSIC PRO CS104(2本で10800円) あるいはCLASSIC PRO CSP6(2本で12,000円)
 音が決まる大事な部分。高能率SPが適しています。CSP6には接続用コネクタ(スピコン)が付属しています。

サテライトSP CLASSIC PRO CS104(2本で10800円)
 サテライトに最適な壁掛けSP。

サブウーファー ヤマハ YST-FSW150 (13,000円)
 435W×151H 設置しやすい薄型。大音量を望まなければそこそこ使えます。

アンプ ONKYO TX-L50 (31,000円)
 薄型低消費電力のデジタルアンプ搭載機。

電源連動タップ 2,600円
 サブウーファーの電源連動に必要です。

 再生機器(スリムPC)、配線資材(2スケアの2芯キャブタイヤケーブル)、スピーカー台別途。CLASSIC PROはサウンドハウスのオリジナルブランド。アマゾンよりサウンドハウスから直接買う方が安いです。

 サブウーファーの設置について注意が要ります。下の関連記事1を参考にしてください。

 

2.大スクリーンに合うセット

 大スクリーンとの組み合わせにお勧めのプラン。メインスピーカーとサブウーファーを以下に変更します。

メインSP ヤマハ S112V(2本で72,000円)
 能率97dB! 素晴らしい音響が期待できます。

サブウーファー ヤマハ NS-SW300 (34,000円)
 25cm口径で250W入ります。ローエンドが伸びていてHi-Fi再生にも対応します。

サブウーファー EUROLIVE B1200D-PRO(35,500円)
 30cm口径500W。軟弱な民生用と違ってパワーが入り、腹に響く低音や恐怖感を演出できます。その代わりローエンドの伸びは控え目。入力がXLRなので変換アダプターを使って接続します。

 アンプはそのままでOKです。

 

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おまけ~我が家のサラウンドシステムの歴史

 久々にホームシアターを作ってみて、次の点に関心した。

 ・電源の入切や信号入力の切替が、HDMI連動機能で同期する。
 ・サラウンドプロセッサーの処理がデジタル化され、音質的に問題ないレベルに仕上がっている。
 ・スピーカーのレベル調整が、全自動でできる。

 昔問題に思っていたことが、ほとんど改善している。おかげで5.1chサラウンドが容易に作れるようになった。しかしそれはつい最近のこと。サラウンドシステムは長い間、マシなものがなかった。

 

昔のサラウンド(1970年代)

 

  写真は週間FM(1973年6.25号)に掲載された長岡鉄男氏のマトリックス・スピーカー製作記事。センター1個だけで直接音と反射音を作り出し、サラウンドを実現していた。

 この記事があまりにもよく書けていたので、作った人が多いようだ。

 

 写真は実際に作ったマトリックス・スピーカー。

  このスピーカーの間接音は壁の反射を利用するため、鳴らす環境や作りの誤差(傾斜部の角度)によって効果がかなり左右された。

 レンジの狭い10cmフルレンジを使っていたこともあり、音の方は期待外れだった。

 

 

 

サラウンドプロセッサー(1980年代)

 このころのサラウンドプロッサーはアナログ式。方式もまちまちで、音を出すと不自然なものばかりだった。

 サラウンド回路と呼ばれるものが昔から多く考案されている。私はいろんな回路をテストして、一つの方式にたどり着いた。

 使う部品はセメント抵抗1本。回路はいたってシンプル。2chソースから間接音を取り出してリアのSPから出す仕組み。抵抗値で間接音の量がきまる。私は視聴を繰り返してここを10Ωと定めた。

 
 

hometh3 製作例。スイッチはリアSPのON/OFF。
 フロント2ch再生時にはリアSPから出る音が邪魔なので、実用にはリアSPを切るためのスイッチが必要。

 

 

 この回路の効果は素晴らしかった。音質劣化がないうえ、出てくる間接音の効果がとても自然。私はこの装置を使ってスターウォーズなどをレーザーディスクで再生し、音響効果を楽しんでいた。

 このシステムで「ジェダイの復讐」を再生すると、ジャバの声が部屋中に響き渡り、まるでその場にいるような臨場感が得られる。同じ場面を5.1パススルーで再生してもこうはならない。

 

 2chオーディオ兼ホームシアター(1987年頃)。
 モニターはソニー プロフィールHG、フロントSPはヤマハNS-1000M。再生はソニーβ方式ビデオデッキとレーザーディスクだった。

 

 リアSPは自作。スイッチ切り替えでサラウンドと2chステレオ再生を選択可能にしてあった。

 

 ビデオデッキの上に設置したサラウンド切り替え器。中身はスイッチと抵抗だけ。

 迷彩塗装になっているのは隣に並ぶドイツ戦車模型と整合をとるため。

 

 

 サラウンドプロセッサーは1980年代後半にデジタル化され、以降様々な製品が作られたが、設定が面倒なうえ出てくる音が不自然なこともあって最近まで普及しなかった。

 そのため私は長い間「サラウンドは抵抗1本のシンプルな回路がベスト」と考えていた。今も十分通用するシステムで、上で紹介した「ジェダイの復讐」のように、ソースによっては5.1chパススルーより優れた音響効果が得られる。

 

<参考購入先>
CLASSIC PROシリーズ 良い品が安価に提供されています

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<参考資料>
6.MPC-BE