家庭のグリルを使って炭火に近い直火焼きを実現する~遠火の強火の実態とは

 ガスコンロやIHクッキングヒーターに付いている「グリル」は直火に近い調理を実現できる。ところがこれは焼き物の基本とされる「遠火の強火」が原理的にできない。

 一方、焼き物は「炭火焼き」がベストとされる。食材の中に火が通ってふっくら焼きあがるとか。家庭用のグリルで炭火と同じ直火焼きは実現できないのだろうか?

 今回は、炭火独特といわれる味の秘密を解き明かし、家庭用のグリルを使って炭火に近い調理を実現する方法をご紹介する。

 

遠火の強火とは何か

 原理的に次の3つは同じ火力であり、加熱温度や火の通りは変わらない(W/m2同一条件で距離だけ変えた場合)。

 

 遠火の強火

 中間距離の中火

 近火の弱火

 

 ではなぜ遠火の強火が良いとされるのか。それはたぶん昔の経験だ。薪や炭の間近では焼きムラがで出来やすいから遠ざけた。遠ざけると火力が弱くなるので強火にした、というのが本当ところだろう。

 近接で比較的均一に加熱できるグリルがある現代では、遠火の強火は不要。「近火の弱火」をメインに使っていく。

 

 

炭火とガスの違い

 炭火で焼くと外側がカリっと、中身がふっくら焼きあがるという。その理由について、赤外線で焼いてるから、燃焼時に水が出ないから、など、いろいろな言われている。

 ガスの炎は1500~1800℃[1]。これに対し炭火は安定時800℃前後(備長炭)。焼肉を焼く網の位置では高くて280℃[2]

 ガスと炭火では温度にかなりの違いがあるが、加熱条件を揃えれば炭火もガスも火の通り方に差がないことが実験的に確かめられている[3]。炭火に何か特別な能力があるわけではないことに注意したい。

 それと、食材に外から水が追加されるのは100℃以下で調理した場合の話。ガスの燃焼で出た水は食材の水分と一緒に外に出る一方でありガスの燃焼で出る水分によって食材が湿ることはない。むしろ過熱水蒸気となって調理に寄与している可能性もある。

 ちなみにIHクッキングヒーターのグリル(赤熱したヒーターの温度)は800℃前後であり、主に赤外線しか出さないから炭火とほとんど同じだ。

 

 

煙が味を左右する!

 炭火とガスの火の通り方を同じに揃えたときの、味の違いはどこから来るのか。私は「匂い」と考える。

 ガスには元々匂いが付いているから、そのせいだと言う人もいるが、そうではない。1000℃を超えるガスの燃焼温度で匂いは酸化分解されてしまう。ガスは最も無臭に近い炎だ。匂いが付くとしたら「炭」の方。

 炭はほぼ炭素だが、元の植物の有機物が多少残っている。炭を焼くとそれが煙になって食材に付く。これが「燻煙」と同じ原理で食材の味に影響していると考えられる。

 かのグルメ漫画「美味しんぼ」では、食材の油やタレが炭に落ち、焦げて出来た煙が食材に付くことで香ばしい香りが出来る、と説明していた(第3巻 炭火の魔力)。このような燻煙効果が炭焼きの味に関係しているのは間違いなさそうだ。

 品質の悪い炭を使えばヘンな匂いが食材に付く。炭の品質が重要であり、備長炭が好まれるのも合点がいく。

 

 

炭火の網焼きは赤外線+対流熱伝達

 炭火の上に網を置く調理法では赤外線のほかに加熱された空気の対流が加熱に作用する。

 純粋に赤外線だけで加熱させたい場合は、炭火の横に食材を置かなければならない。例えば、焚火の横に串打ちした魚をプスプス地面に刺して焼く方法がこれにあたる。この場合、燻煙効果は得られない。

 

 

グリルの仕組み

 ガスの炎は高温なので、食材の下に炎を置くと食材が燃えて炭になってしまう。そこで炎を食材の上に置き、赤外線をメインにして加熱するようにした。これがガスコンロのグリルだ。

 つまり家庭用コンロは、炭火と同じ赤外線で加熱する仕組みになっている。

 

両面焼きグリルの仕組み

両面焼きグリルの説明 ( 出典:リンナイHP https://rinnai.jp/products/kitchen/gas_table/recommend/index2 )

 ガスの両面焼きでは下火を食材の直下に置けないので、左右の隅に配置して対流熱伝達により加熱する仕組みのようだ。

 IHクッキングヒーターのグリルではこの問題がなく、食材の真下から赤外線で加熱できる理想的な調理器具になっている。

 

 

 

水無しグリルを使うべし

 食材から落ちた油やタレが焦げ、煙になって食材に付着することで独特の風味が生まれる。

 その話からすると、グリルは水無しが有利だ。水ありグリルでは落ちたものが冷やされてしまうから、この効果がまったく望めない。

 グリルには片面焼きと両面焼きがある。ここは受け皿が良く加熱される点で両目焼きが有利といえる。

 

 

グリルは予熱して使う

 買ってきた魚をグリルに放り込んでも美味しく焼けない。いい感じに焼き色を付けたと思っても、中身は水分が飛んでパサパサ。これは焼くのに時間をかけすぎたため。

グリルで調理したアジの塩焼き 両面水無グリルで焼いた魚。外側カリカリ中身ジューシーに焼くには、適切な温度と火力を維持しなければならない。それには予熱が絶対必要である。

 予熱することでグリルの庫内全周から包み込むように赤外線が放射される。受け皿も同時に加熱できる点も見逃せない。

 

 

 

これで炭火に近い風味をグリルで実現できる!

 以上長々と書いてきたが、結論はいたってシンプル。

 水無し両面焼きグリルを、十分予熱して使う。

 これが、家庭用グリルで炭火に最も近い直火調理を実現できる方法だ。

 

 


 

グリルを使った調理の例

 以下はすべてIHクッキングヒーター(三菱 CS-G37H)の水無両面焼きグリルを使った調理例。どの場合も、事前に余熱を行ってから食材を焼く。

 

1.焼き鳥

グリルで焼いた鶏肉

 塩を振って、上1200W/下800Wで調理した結果。焦げの風味とジューシーな中身は、直火で焼いた焼き鳥とほぼ同じ。

 

 

2.焼き豚

グリルで豚肉を焼いている様子

 私は塊肉にタコ糸を巻いてゴチャゴチャやるのが面倒で、薄切り肉でサッサと作ることにしている。

 薄切り肉をグリルに入れて高温&ごく短時間で焼く。焦げが付くとともに、油が下に落ち、焼けた煙で燻煙される。これによりフライパンや煮物では不可能な「香ばしい香り」が肉に付く。

 

グリルで焼いた豚肉に味付けしている様子 フライパンに移して醤油、みりん、砂糖で味付け。たったこれだけのものが、めちゃくちゃ美味しい。

 そのままラーメンに乗せれば焼き豚。細かく刻んでチャーハンに混ぜても良い。

 

 

最後に

 食材の風味に煙が関係していることは疑う余地がない。フライパンで似たような焦げ目をつけても、グリルや直火で焼いたような風味は得られない。

 ガスコンロやIHクッキングヒーターの水無しグリルは、家庭で手軽に直火の味を実現できる有用な機能。このグリルを魚焼きだけに使うのは勿体ない。肉料理に積極的に活用していくことをお勧めしたい。

 

 

<参考購入先>
ビルトインIHクッキングヒーター 水無し両面焼きの加熱条件は炭火とほとんど同じです
水無しガスコンロ 水無し両面焼きを選んでください

<関連記事>
手入れが楽で長持ちする~ガステーブル・コンロの選び方

<参考文献>
1.燃焼の科学-いろいろな燃焼
http://katakago.sakura.ne.jp/chem/fire/burner_temp.html
2.日本バーベキュー連盟-炭火の扱い方
https://jbbqa.com/textbook/usecharcoal.html
3.炭火焼はおいしい?
https://cleanup.jp/kitchen-academy/pdf/02/02-6.pdf