クリプシュ R-15M 最強の高能率SPの実力を検証する

 クリプシュR-15Mは13cmクラスで最高の能率(出力音圧レベル)を誇るスピーカーだ。そのスペックはなんと94dBであり、他の追従を許さない。今回はこのSPを購入して実力を検証してみた。

 

クリプシュとは

 クリプシュはアメリカの音響機器メーカー。ホーンの技術に独自性のあるメーカーでほぼすべての機種にホーン型ユニットを採用している。10cmクラスの小型SPにまでホーンを付けているため、高能率で小型という、他社に見られない商品がある。

 ラインナップはDALI同様に多く、R-15Mと同サイズの機種だけでも以下がある。

 

表1 クリプシュ5.25″ブックシェフのラインナップ(2018/12現在)
価格はアマゾンの輸入価格($米価格)

  サイズ(H×W×D) ユニット構成(cm) 能率(dB) 重さ(kg) 価格(ペア)
万円($)
R-15M 318×178×206 5.25″IMG+1″LTS 94 4.67 3.2($173)
RP-500M
(2018最新モデル)
343×173×241 5.25″CERAMETALLIC+1″チタンLTSハイブリッド 93 5.4 7.4($419)
RP-150M 370×195×271 5.25″CERAMETALLIC+1″チタンLTSハイブリッド 93 6.67 5.6($280)
R-51M 338×178×215 5.25″IMG+1″LTS 93 5 5.3($240)
R-51PM 318×178×206 R-51Mの50Wアンプ内蔵タイプ
Bluetooth、Phono,光、USB入力、サブウーファー出力
4.67 -($499)
RB-51 II
(カタログ落ち)
289×165×272 5.25″CERAMETALLIC+1″チタンLTS 92 4.75 4.5($200)
R-14M (参考) 248×149×191 4″IMG+1″LTS 90 3.2 2.3($87)

 

  LTSというのはサスペンションがリニアに動くよう工夫されたもの、ハイブリッドはホーンがシリコン製という[3]。耐入力はどれも連続75W以上。同クラスに多い軟弱な商品と異なる。

 ウーファーはIMG(Injection Molded Graphite)と、CERAMETALLICの2種類ある。IMGは名前からすると黒鉛の粉末を熱可塑性樹脂に分散させ射出成型したものなので、基本的に樹脂とみられるが詳細不明。CERAMETALLICはアルミにセラミックコートしたものだという[7]

 R-15Mは同社の中でボトムに位置することがわかる。値段は日本円で3.2万円だが米アマゾンでは$173(約1.9万円)だから中身は1本1万円しない安価な商品である。

 R-15Mはポン置き専用だが最近のモデルはホームシアターで使えるよう壁掛け用の穴が付いている。

 クリプシュにはその他、15インチウーファーを使った大型のオールホーンシステム(KLIPSCHORN、LA SCALA IIなど)あって興味深い。

 現在の購入方法は現在はアマゾンから並行輸入品を買うしかなさそう。日本に公式サイトがあるがヘッドホンとイヤホンしか扱っていない。 

 

 

R-15Mの外観

 

R-15M 外箱

 R-15M外箱の外観。

 

R-15M SP端子 背面のスピーカーターミナル。バナナを刺すところにダストキャップが付いている

 フロントのユニットは共通パネルごと接着されてるらしく、分解できるところはこの端子部分しかない。プロ機器と違って修理やメンテナンスは考慮されていない。

 

クリプシュR-15Mの外観 デスク上にセッティングしたところ。以前ご紹介した通り机の反射による特性の乱れを防ぐため上下逆さにする[4]

 フロントグリルが上下対称であり反転して付けて完成。スピーカー台はハヤミ工産NX-B300S がぴったり。

 

 R-15Mフロントグリル裏面 フロントグリル裏面。樹脂性でメッシュの目が少し大きい。特性に若干影響するが、問題ない範囲。

 

R-15Mのネットワーク回路 ネットワークは端子の裏にある。構成はごく普通。高域のコンデンサは3.6uF100Vの電解コン。アッテネーターは抵抗が直列に入るだけになっている。

 吸音材は白いウールマットの切れ端がウーファーの周りに少しあるだけ。

 

R-15Mのツイーターユニット バスレフポートからツイーターが見える。本体は樹脂製でアルミの放熱フィンが付いている。磁気回路がネオジウムなのか、とても小さくできている。

 ホーンと言ってもユニット単体で能率100dBを超えるコンプレッションドライバーとは違って大人しい音が予想される。

 

 

 

R-15Mの能率グレード

 

ウーファーの口径と能率の関係を示したグラフ

 これは以前公開した口径と能率の関係を示したグラフ[1]。R-15Mは13cmクラスで最も高い位置にある「高能率型」スピーカー。94dBという数字が本当だとすると、稀有な存在。

 能率が良いことは、応答が良いことのほか、細かな情報も消えずに出てくることを意味する。応答が良く、情報量豊かという特性が、音質面でリアリティの向上に貢献し、なかなか得難い「生々しい」音の源となる[1]

 

 

 

出力特性

クリプシュR-15Mの周波数特性

 軸上30cmの周波数特性(グリル付き)。多少谷があるが、おおむねフラット。高域は12kHzまで。低域は100Hzまでとなっている。

 

クリプシュR-15Mのインピーダンス特性 インピーダンス特性。公称8Ωだがウーファーのインピーダンスは4Ω。f0c=106Hz、ポート43Hz。

 f0cの遅れは4.1ms(Q0c=1.36)、ZENSOR1(3.0ms)[2]に対しかなり遅い。

 

 ポートを塞ぐと f0c=90Hzに落ちて2.7ms(Q0c=0.77)に改善する。Q0cは0.7前後がバランスいいとされるので、このSPはポートを塞いで使うのが良さそうだ。

 

 

音質

 一聴して違和感を感じる。低音がボワボワでとても聴けたものではない。これは上記したようにウーファーの共振倍率(f0c)が高すぎるため。背面のバスレフポートから盛大に音が漏れており、吸音材が足りてない。

 バスレフポートにタオルを詰めるとボワボワ感が改善する。低域も十分伸びていて、一般的なソースで不足を感ることはないだろう。

 バスレフポートに吸音材を詰め、サブウーファー (ヤマハ NS-SW300 )を120Hzでクロスさせた結果はたいへん良好。その音質は意外なことに、フラット&ソフト。

 メタリックなコーン+ホーンに能率94dBといったスペックから想像する音とは違う。能率に関しても我が家にあるClassic Pro CSP6 (91dB,8Ω,実測7Ω)と大差ない。これはどうしたことだろう?

 

Classic Pro CSP6 とクリプシュR-15M

 CLASSIC PRO CSP6(写真左)はリアリティがあり、ひっぱたかれるような鋭いアタック感もある。

 これに対しR-15M(写真右)から出てくる音は耳当たり良く優しい。きつい音を出さず滑らか。長時間でも聴き疲れしない。

 リアリティを追及したHi-Fとは違う方向で、「いい音」があることを教えてくれるスピーカーだ。

 

 

 

R-15Mの本当の能率は〇dBだった!

 R-15Mの能率は能書き通り94dBもあるのか。この測定には無響室が必要でアマチュアには困難。当館では屋外で測定を試みたが反射音の影響を十分小さくできず、うまくいかなかった。

 そこで本機と比較用SPの音圧特性をマイク位置固定で測り、オクターブバンドで差をとることにした。相対比較になってしまうが、この方法では反射や定在波の影響を受けない。比較用SPはClassic Pro CSP6 (91dB,8Ω)と、Classic Pro CS104CSP6 (87dB,8Ω)。以下に結果を示す。

 

音圧レベル差の測定結果

 R-15Mの能率はCSP6 (91dB,8Ω)と平均が同じ。CS104 (87dB,8Ω)に対しては平均で2.5dB上回っていることが判明。つまり94dBを誇る能率の実態は90dB~91dB程度ではないかと考えられる

 この数字の違いは測定方法の違いによるのだろうが、90dB~91dBでも高能率であることに変わりはない。

 

 

総評

 背面のポートに吸音材を詰めるのを標準と考えたい。

 ポートを塞いだ音はナチュラル&フラット&ソフト。聴き疲れしない優しい音は、BGMとして流すのにぴったりである。

 元が安いスピーカーなのでコストの制約から省略されている部分が多い。吸音材の追加、ホーンのデッドニング[7]、電解コンの交換など、手を入れると良くなりそうな部分が多い。

 PCの横に置くスピーカーとして見ると大きい。そんな場合は一つ下のR-14Mが候補になる。

R-15Mのポートに吸音材を詰めた様子

 こんな感じ。吸音材はお魚用の高密度ウールマットでよい。W170×D120くらいのサイズにカットし、だし巻き卵のように丸めて突っ込む。

 

<参考購入先>
R-15M
RP-500M 2018年に登場した最新機種です
RP-400M PCスピーカーに好適な一回り小型のタイプです

 

 

参考:能率(出力音圧レベル)について

 EIAJ RC-8124A によると、1Wに相当する正弦波入力を加え、1m離れた点の音圧レベルを測定し、低格周波数範囲内で1オクターブ以上の範囲の平均をとれとある[6]

 この測り方はいろいろあり、昔は 300Hz、400Hz、500Hz、600Hzの4点で測った音圧平均が用いられたようだ[5]

 このようなワット基準だとインピーダンスによって音圧が違ってくる。1Wは8Ω,2.83Vだが、4Ωだと2.00Vになってしまうため電圧(ボリウム)を落として測ることになる。

 JIS C5532 音響システム用スピーカーでは20.3.1項に特性感度レベル(=能率のことか?)の規定があり、こちらも1W,1mとある。測定にはピンクノイズを使う。

 

 ところで、現在の出力音圧レベルの仕様には次の2種類がある。

〇dB,2.83V,1m

〇dB,1W,1m

 前者はヤマハ、オンキョー、ダリ、B&W、JBL、テクニクス、クリプシュなど民生品で採用している。

 後者はエレクトロボイス、ベリンガー、ヤマハ(プロ用)、JBL(プロ用)などのプロ機器メーカーとフォステクスのユニット単品で採用している。昔(1990年代まで)は民生品でもほとんど後者だった。

 2.83Vという電圧基準の場合、出力音圧レベルはスピーカーのインピーダンスに左右されない。出力音圧レベルが同じなら8Ωでも4Ωでも同じボリウム位置で同じ音圧になる。

 スピーカーのインピーダンスが8Ωのときだけ、両者の表記が同じ土俵で比較できることに注意しておきたい。

 

<関連記事>
1.スピーカーの選び方~生演奏の再現に必要なスペックとは
2.サブウーファーの音の遅れを測る2~インピーダンス特性から遅れを算出する
4.SPEKTOR1を上回る!?PC用 小型スピーカー リアスピーカーの選び方
7.ホーンのデッドニング

<参考文献>
3.クリプシュHP
https://www.klipsch.com/
5.強くなる!スピーカ&エンクロージャー百科 P65
6.EIAJ RC-8124A
http://www.jeita.or.jp/cgi-bin/standard/pdf.cgi?jk_n=83&jk_pdf_file=RC-8124A_j.pdf
7.5万円の贅沢、クリプシュ「RB-51」でホーンサウンドに親しむ 
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0704/20/news072.html