ヘッドライトのレンズは黄ばむ。自分で磨いたり、カー用品店にミガキに出した経験はないだろうか。ところが、あまり変わらなかったり、すぐに黄ばんでしまう。なぜこうなるのか解明する。
黄ばみは表面だけの問題?
黄ばみが表面だけの問題なら磨けば元通りになる。そこでヘッドライトと同じ材質(ポリカーボネート、略称ポリカ)で出来たメガネを磨いてみた。
黄ばんでしまったメガネを紙やすりで磨いている様子。表面を削っても、黄ばんだまま。黄ばみは表面が一番濃いが、中も黄色くなっている。表面を削っても色が薄くなるだけで無色にはならない。
ところで、このメガネはケースに入れて長いこと室内保管していたもの。太陽光に当てていないものが、どうして黄ばんだのか?
なぜ、黄ばむのか
「ヘッドライトにはUVコーティングがある。これが剥がれて紫外線で黄ばむ」
というのが、ネットなどで出てくる情報。本当だろうか?
写真はフィット[1]のヘッドライト(7年後)。コーティングのようなものが所々、剥がれているのがわかる。確かに、何らかのコーティングが塗られているようだ。
ポリカが黄ばむのは、「光酸化」といわれ、紫外線のほか、酸素が関係することが知られている。黄ばみの防止には「紫外線安定剤」や「抗酸化剤」などの酸化防止剤が有効で、これは最初から材料に含まれるもの。UVコーティングは対策の一つにすぎない。
ヘッドライトに塗れるUVカット塗料
剥がれてしまったUVコーティングを補修できる塗料を調べてみた。ポリカに塗れる塗料は限られていて、水性塗料が候補になる。透明度が高く、紫外線をカットできる水性の塗料が、ヘッドライトの補修に適している。そんな条件の塗料を探し求めて見つけたのがこの商品。
ターナー水性UVカットクリア。ツヤは3種類ある。ヘッドライトに適しているのが「全ツヤ」。ポリカ製スマホケースにこの塗料を筆塗りして、UVカットの効果を紫外線強度計を使って検証した。
障害物無しの紫外線強度
無塗装の紫外線強度。ポリカ自身が持つ紫外線の反射と吸収により、紫外線を40%くらいカットする。このうち吸収された分が「黄ばみ」の原因になると考えられる。
筆塗り1回の紫外線強度。無塗装に対して96%カットしている。
筆塗り2回の紫外線強度。無塗装に対し99%カットしている。
厚く塗れば塗るほど、紫外線をよくカットできる。
密着テスト
塗料音密着性をテストする。このテスト方法は、JIS K5400(クロスカット試験)を参考にした。つまりカッターナイフで下地に達するX字の傷を漬け、セロハンテープを密着させて剥がす。
結果、密着性に関して十分なことを確認できた。
塗料の剥がし方
市販のアクリル溶剤や、イソプロピルアルコールが使える。どちらも水性でプラスチックや塗装などに影響を与えない。剥がしたくなったらいつでも剥がせるが、時間が経つと被膜が強固になって剥がしにくくなる。
実際の塗り方
洗剤で汚れを落としたのち、筆塗りしておしまい。紫外線カットの効果は厚いほどいいので、筆塗りが一番。
乾燥後。筆ムラがあるが透明度が高いのであまり目立たない。綺麗に仕上げたい人は何回も薄く塗り重ねるか、エアーブラシを使うといい。
この塗料が屋外でどのくらい持つのか、まだ実績がない。今後検証していきたい。
4年後の様子
UVカット塗料を塗ったポリカ製スマホケース(上記)を日当たりのよい場所に置いて4年目。あれからいろいろ塗り足している。
一番左端のエリアは何も塗っていないが、黄ばんでいる様子はない。最初のポリカ製メガネは、太陽の当たらないところで見事に黄ばんでいた。この結果から、
結論
以上の結果が示すことは、ポリカが黄ばむか否かは
材料(酸化防止剤の配合)で既に決まっていること
で、UVコーティングでどうにかなるものではない、ということのようだ。最初にご紹介したポリカ製メガネは、おそらく何も配合されていない「生材」だったのだろう。
ヘッドライトに塗られているUVコーティングは、黄ばみを遅らせるのに多少の効果が期待できるもの、それが黄ばみを防ぐ全てではないことを覚えておきたい。
<参考購入先>
ターナー水性UVカットクリア
紫外線強度計
アクリル溶剤
イソプロピルアルコール
エアーブラシ
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