久々にpHメーターを取り出してみたら白い粉を吹いてダメになっていた・・pHメーターはアマチュアにとって維持管理が難しい計測器の一つだ。今回は、そんなpHメーターを長期間維持するコツと、長持ちするpHメーターの選び方をご紹介する。
pHメーターの課題
pHメータは構造上、電極と液絡部があり、液絡部をKCL溶液に浸漬すれば長期保存できる。電極がガラス式の場合は乾燥させると傷むため、必ず湿らせて保存しなければならない。保存液はKCLやフタル酸塩(校正液)が使われる。
一度乾燥させてしまうとダメになってしまうことがほとんどだ。ところが、電極部分が密封できる構造になっていない商品が多い。ここはとても大事なポイントだが、写真やカタログを眺めてもわからないことが多い。
1回の測定に数千円!?
pHメーターでいつも悩むことに利用頻度と維持管理コストのバランスがある。ゲル電解質複合電極(小型ペンタイプのほとんどがこれ)の寿命は6ヶ月といわれ[1]、利用頻度が少ないと1回の測定がとても高くついてしまう。
ガラス電極式は長期間使えるが、電極を乾燥させたまま放置すると大抵ダメになる。ろくにつかわないうちに高価な電極がパー。これもよくある事故だ。
安く売られている商品に注意
1万円に満たない価格で売られているpHメーターの多くは使い捨て商品。電極が交換できても電極が手に入らないことがある(安く売られている中国の輸入品に多い)。
電極が交換できても本体と同じくらいの値段だったりする場合があるのでよく確認しておきたい。
pHメーターの候補
ハイアマチュア向けにある程度良いものを求めると、A&D AP-20、 佐藤計量器 SK-662pH、 カスタム pH-6011Aが候補になる。カスタムが唯一、電極と液絡部が一緒に密封保存できる構造をもつ。
アマゾンには値段が千円台の激安メーターがある。利用頻度が低い人はこれを買って使い捨てしていくのがよいかもしれない。
最も安価な電極交換式の商品はニッソーのpHメーターで、校正液とセットで買っても1万円いかない。日常良く使うpH7付近をかなり正確に測れる。温度補償機能はメーカーの記載ミスで実際は無いらしい。読みは小数点以下2桁表示。数値は安定しており慎重に校正すれば2桁目も一応使える。
実例
1.ニッソーpHメータ
作りはおもちゃに近い。交換電極には寿命があるが、それほど高くないので維持しやすい。
校正は1点のみ。アナログトリマー式なので電池を入れ替えるたびに校正のやり直しにならない。
但し、先端キャップや電極ねじ込み部にOリングがなく密閉構造でない。乾燥させると痛んで校正不能になるので、使い終わったらKCLを入れてキャップを閉めたのち、乾燥しないよう不乾性パテ(ネオシールB-3)で継ぎ目を密封しておく。
2.カスタム pH-6011A
あまり見かけない円筒形のガラス電極式。電極の内部に液体と気泡が見える。表示の更新頻度が頻繁で応答が速く感じる。海外に良く似た商品-Anaheim Scientific[2]があり、そのOEMかと思ったが自社製品という。
校正は2点(アナログトリマー式)で温度補償付き。出荷時に正確に校正されており調整不要だった。
電極と液絡部は一緒にキャップで密閉できる構造。キャップの端面に半透明のOリングが装着されていて潰し方向で圧縮される。これなら長期保管可能。ある程度精度の良い機種を求めるハイマチュアにお勧めできる。
保管のポイント
久々に蓋を開けてみたら白い粉を吹いていた・・こうなるとアウトだから、半年ごとに点検するのが無難。
保管のポイントは少し空気を入れた状態でしっかりキャップを締めること。中途半端だと気付かないうちに乾燥してダメになる。
カスタムの保存液はKCL(メーカー確認済)。充填しても気泡が入るので、保管は立てておくか、COSTOMの「M」を下向きにして横に寝かせると液絡部が保存液に隠れる。
<参考購入先>
カスタム pH-6011A いまのところ一番お勧めできます
pH校正液 精度チェックにpH4とpH7の2種類が必要。カビが生えることがあるので開封後は冷蔵保存がお勧め
電極保存液 KCL溶液 3.3mol/Lもありますが3.0mol/Lの方が結晶化しにくくお勧めです
校正液には次の種類があります。アナログ校正ならどれを買っても問題ありません。
pH4.01 フタル酸塩
pH6.86 中性リン酸塩酸塩
pH7.01 混合リン酸塩
pH9.18 ホウ酸塩
pH10.01または10.02 炭酸塩
不乾性パテ(ネオシールB-3) 完全密封に使える不乾性パテ
<関連記事>
クッキング温度計の選び方
<参考文献>
1.pH 測定と電極の選び方,P51
2.Anaheim Scientific(米国)