飼育中の魚が病気になったとき、水槽に病魚薬を入れると水槽が破綻してしまう。多くの経験をもとに得た、正しい対処の仕方をご紹介する。
病気の発生原因
季節の変わり目など水温や水質が不安定になるときに病気になりやすいが、基本的には濾過装置が正常に機能していて、適切な給餌[1]を心がけていれば病気が発生することは少ない。
初期段階における対処
体表や仕草にわずかな異常があるだけで、魚がまだ元気な場合は、後述の薬浴による治療を行う。
中期~末期段階における対処
発見した時点で泳ぎ方がおかしい、簡単に捕まえられてしまうような場合は体力があまりない状態なので、普通に薬浴することができない。この場合、元の水を使った濃度の薄いメチレンブルーの薬浴を行いながら様子をみていく。
末期の場合は薬浴はおろか、別の水槽に移すことができない。薬浴しても環境の変化をきっかけに死んでしまうだろう。水槽システムを見直して水質の改善に努め、被害の拡大を防止する。
薬浴の方法
薬浴に使う治療薬は、食塩かメチレンブルーが基本となる。ほとんどの病気や寄生虫に有効で、万能に使える。写真の商品は濃いので、1回の使用量は、ほんの数滴でいい。一本買っておけば、一生使える分量がある。
メチレンブルーには殺菌作用がある[Wiki]。食塩は浸透圧を利用して殺菌する。両方を併用すると効果が高まる。食塩の濃度は0.3%から様子をみていく。濃度の高い食塩水にごく短時間薬浴させて皮膚に付いた病原体を死滅させることもできるが、リスクが大きい。
食塩かメチレンブルーで快復しない場合はアマチュアの手には負えないことが多いので、魚の処分を検討してほしい。
魚の薬浴は0.3%食塩の濃度で立ち上げた専用水槽があると便利※だが、無い場合は薬浴の容器をメインの水槽に浮かべる。病魚薬を直接水槽に入れることは絶対にしてはならない。これをやると水槽環境を破壊し取り返しのつかないことになる。
薬浴をする容器の大きさは、12時間魚を入れていても水質が悪化しない程度の水量が必要。メダカ程度の小魚なら1Lあればよい。沈没しないよう設置に注意する。
薬浴は照明を落して暗くなる時間帯に行う。 薬浴時間は12時間を限度とし、それをすぎたら元の水に戻して体力を回復させる。このサイクルを回復するまで繰り返す。最初のうちはよく観察を行い、少しでも調子が変だと思ったらすぐに元の水に戻す。薬浴中は魚が飛び出すことが多いため蓋などの対策は必ずしておく。
給餌は薬浴中ではなく、元の水に戻したときに行う。薬浴中にエサを与えても食べないし、水質が悪化するだけになる。人工餌を食べないときは、より嗜好性の高いアカムシ、ブラインシュリンプ、ミジンコなどの生餌を与える。
※小型の水槽が余っていれば、病魚専用水槽を作っておくと便利。0.3%程度の食塩水で濾過を立ち上げておき、病魚が出たらここに移動して飼育する。これだと、濾過が立ち上がっているので薬浴容器から魚を出し入れする必要が無く、病気が治るまで連続飼育ができる。但し、塩水の場合は、濾過の立ち上がりに非常に時間がかかるので、必要になってから立ち上げていたのでは遅い。
<参考購入先>
メチレンブルー
塩水浴の濃度計算
食塩で薬浴をする場合はきちんと計量して必要な濃度の溶液を作る。 食塩の重量G(g)、水の容量Q(ml)とすると、塩水濃度P(重量比)は、
P=100×G/(G+Q) (%)
G<<Qの場合、所定の濃度を得るために必要な食塩の重量は、次の式で計算できる。
G=P×Q/100 (g)
病気の事例
左は我が家の水槽で発生した繊毛虫(約150倍)体長は0.3~0.5mm程度。先端に鋭いフックのようなものが2本見える。このフックで魚の体表にとりつく。
初期はヒレに糸くずのようなものが付いているように見えるが、放っておくと全身に広がり、白っぽくなる。水中を泳いでほかの魚に移り、あっという間に広がる。エラに寄生すると呼吸困難を起こして鼻上げを起こし、死に至る。
この寄生虫に対する対処法を発見した。3~5%程度の塩水に30sec~60sec程度の薬浴を繰り返すことで、この繊毛虫は全滅する。ただこれは緊急対処法で、ヒレに付いている程度なら1%以下の連続塩水浴が良いようだ。
このような微生物の由来は大抵ショップであり、買ってきた魚を無造作に水槽に入れるとトラブルが起こる可能性が高い。新しい魚を導入する場合は以下の関連記事を参考にして欲しい。
<参考購入先>
魚のヘルスケア商品
<関連記事>
1.アクアリウムの失敗と対策