試乗日:2005/9/10
ボディ・内装
格好悪い、デカいとかいわれているE90。実物を見るとそれほど悪くない。面の構成が複雑になり新味を感じさせる。これも結局慣れではないかと思う。
幅が広いボディのおかげで室内がとても広く感じる。
空調の音は静か。風量最大でもさほどうるさくならなず、内気、外気の切り替えによる騒音の変化も少ない。
オーディオはレンジがそこそこ、クオリティも高く無いものだが、聞きやすい音色に調整されている。330iではピラーにツイータが追加されるが、もともとドアスピーカーが高い位置に配置されているのでツイータは不要かもしれない。
ドアの閉まりはカッチリとした剛性を感じさせるフィール。国内メーカーが模範にしているが、なかなか同じように作れないらしい。
このフィールは、ドアヒンジやドアにヘナヘナ感が一切なく、閉めた瞬間振動が尾を引かない。そのため、ドアがまるで一枚の高剛性板のように感じる。カッチリした感覚は、最後に聞こえる金属的なロック音からもたらされている。この感覚は4枚のドアすべて同質である。
シートはノーマルがベスト、革張りはホールドが悪く、この種のクルマにマッチしない。
パワーウインドウの上下フィールは標準的。
ウインカーとワイパーのレバーは国産車と左右が逆だが、操作感は高級車らしい品位のあるもの。
330iに標準で付いてくる純正ナビは、はっきり言って使いにくい。手元に大きいジョグダイヤルがあってこれは便利なのだが、その機能の割付やメニュー構成が決定的にダメだ。画面も狭く、ボヤっとしている。
ナビはディーラオプションで用意さているものの方がずっと優秀。共同開発したという取り付け部品もまるで純正のような一体感があって好ましい。
左はパナソニックと共同開発したというBMW専用のオプションナビ。CN-DV155FDブラック+専用取り付ジグのセット。使い勝手が良く、視界も遮らない。まるで純正のような一体感がある。
走り
320iは4気筒2L、330iは6気筒3Lという違いがあるが、音色はどちらも「ジュイーン」というもので、モータに近い感覚がある。
4気筒と6気筒の音の違いは、爆発間隔の差に起因する音の連続性のみで、基本的に同じ音、音量である。4気筒は高回転でも音量があまり増大せず、まるで6気筒のよう。これを6気筒と言っても疑う人は少ないかもしれない。
320iのエンジンは2Lだが、踏み込むとそれなりの加速感がある。6ATとのバランスが良く、普通に走る分には非力さを感じさせない。雑誌等でよく言われているように320iの走りは軽快。330iのエンジンは3Lあるが、車体やエンジンが重いため、重鈍な感覚がある。
6ATは変速ショックをまったく感じさせないスムースな加速を実現しているが、弊害もある。多段ATのメリットは燃費にあり、ATのプログラムもスポーツではなく燃費重視になっているようだ。そのため、大排気量エンジンとの組み合わせでは、つねに最適ギア(ハイギア)となり、キックダウンの応答も鈍いため、「パワー抜け」したかのうに感じさせる[1]。
例えばDレンジで走り出すと330iでは2000rpm付近で勝手にどんどんシフトアップしていくためタコの針があまり動かなくなる。そこでもう少し加速したいと思ってアクセルを踏み足してもクルマが応答しないから、重鈍に感じてしまう。このことは、巡航速度からのチョイ加速でも同じ。
6ATにはマニュアルモードもあるが、切り替えの応答が遅く使い物にならない。最初ちょっといじった後はずっとDレンジに入れっぱなしになるだろう。
ステアリングフィール
ステアリングフィールは、車速感応による制御が控え目でパワステ無しの感覚に近い。低速では重く、速度が乗ってくると軽くなり、まるでカミソリのように鋭い応答を示す。
それは反面、直進の不安定さや緊張感に繋がるのは事実だが、そこは適度な摩擦トルクがあって不安を感じさせるほどのふらつき感はない。とはいえ、国産車から乗り換えると「反応が敏感すぎる」と感じる人もいるだろう。
このステアリングフィールを生み出しているのは、おそらくステアリングジオメトリの設定によるもの。国産車ではみかけない敏感なセッティングであり、これがBMW独特の乗り味を生み出している。
このステアリングフィールのせいで常に運転を意識させる、悪く言えば神経を使うもので、好きな人にとっては代え難いものであり、運転がおっくうで、出来るだけ楽をしたいと思う人にとっては、邪魔に思えるかもしれない。
乗り心地
剛性感の高い乗り心地や、フラットな乗り味は、サスの動きが大いに関係している。これは最近の国産車も追いついてきている。
320i,330iはどちらもロードノイズは小さいが、エンジンがそれ以上に静かなため、Dレンジで走るとエンジン音はロードノイズに埋もれてしまってほとんど聞こえなくなる。
320iの乗り心地はスポーツと快適性がハイレベルでバランスされているが、330iの足回りは固められており、荒れた路面では突き上げ感がある。年配の人は硬過ぎるように感じるかもしれない。
総合
BMWはエンジンとステアリングフィールが突出した、とても個性的なクルマだ。エンジンは相当ハイレベルに感じさせるが、同じ直6でも、国産の直6とは音質も印象も全く違う。BMWはモータを目標にしているような印象。どちらがいいかは、乗る人の嗜好次第。
3シリーズの2Lは乗り心地とハンドリングがバランスしていて「ラグジュアリースポーツ」といえる。しかし3Lの330iと6ATとの組み合わせはスポーツとは言い難い。どちらかといえば、重鈍なラグジュアリーセダン。滑りやすい革張りシートもスポーツカーの装備として不適当だ。
2.5Lの325iは車重が1.5トンを超えており、重量税の面で損な印象がある。E90が出るとき旧シリーズに駆け込み需要があったというが、E46シリーズの最終型を入手するのは賢い選択だったかも知れない。
BMWの3シリーズは重くなってしまった。BMWのコンセプトである「駆けぬける歓び」を一番味わえるのは、おそらく320iをMTで乗った場合だけ。3シリーズの性格からしてMTが合っているし、4気筒のフィールは決して安物ではない。
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