試乗レポート~トヨタ IQ (DBA-KGJ10) (2008/12/6)

試乗日:2008/12/6

ボディ・内装

 軽自動車に対して全長が小さく、横幅が広い。2人乗りとして割り切れば前席は大型セダンに迫る空間が確保されている。外見からは窮屈に見えるが、前席はコンパクトカーよりずっと広い。

 外観はスマートを意識して作られたように見える。しかし顔はキュートなスマートに対し骨ばったオヤジの印象。そんなデザインもあってか、団塊の世代に良く売れているという。

 内装はドアトリム、ダッシュボードなど目に付くところもプラスチックの地肌そのまんま。表面のシボは皮を離れてからおかしなものが増えた。このクルマの場合、合板を使って打ったコンクリートの地肌そっくり。しかし、マーチ、ビッツ系の梱包材のようなシボよりはマシに見える。

 ダッシュボードが高くせり出しているので、着座すると座面が低く感じる。フロントオーバーハングが短い割りに、下のほうが良く見えない。シートからみる視界の感じはスポーツカーに近い。

 ドアの閉まり音は高級車そのもの、操作系のタッチも上質である。空調の音は若干大きめ。内気・外気の騒音差はほとんどない。オーディオも力が入っており、ラウドネスが利いた聞きやすい音色でクラスを超えた上質感がある。

 収納スペースがとても少ない。収納系のオプションは可能な限り付けたい。

 

走り

 3気筒エンジンの回転のフィールはなかなかよい。振動がうまく打ち消されていて、振動、騒音共に低く抑えられており、まるでBMWのような印象。3気筒でも良いものができることを、このエンジンが証明している。

 しかしアイドル時の振動は大きい。これは3気筒の宿命といえる。これをアクティブ制振でもやって打ち消せば、デメリットが消えてすばらしいエンジンになりそうだ。

 エンジン以外でも走行時のNVは低く抑えられていて、上質なサウンドシステムが生きている。ラジオを聴いているとき、エンジンの騒音は意識されないレベルにある。

 ホイールベースはわずか2m、足がやや硬めのおかげで、ミッドシップを連想させる応答の鋭いハンドリングを得ている。

 アクセルは開度に対してリニアで、ビッツ系にみられる「チョイ踏みでガバっとスロットルを開ける」不自然な挙動がない。ブレーキも同じで、制動力の立ち上がりがリニアで非常に好ましい。ビッツなどから乗り換えると「加速が悪い」「ブレーキの利きが悪い」と感じるかもしれない。

 CVTのフィールは「もわー」という感じで、これがせっかくの応答性をスポイルしている。来年MTが追加されるというので、こちらに期待したい。

 

総合

 このクルマのライバルはスマート。となると普通は、スマートのデザインをコピーして、中身をスマートより少し良くして売る、いわゆる「後出しジャンケン」で計画されることが多いが、ヨーロッパで売ることを考慮してか、露骨なコピーをしていない。その結果、IQはオリジナリティのある商品になった。

 それと、自動車業界が好景気の時代に計画されたものなので、中身に力が入っている。操作系の応答もリニアで不自然な点が無い。車体の応答も鋭いので、1.3LMT版はライトウエイトスポーツと呼べるものになるかもしれない。

 

(2009年8月22日追記)待望のMT版が追加された。

 2mのホイールベースと1トンを切る車重にMTが加わり、スポーツカーのようなクルマになった。しかしMTが6速だったのが残念なポイント。

 6速MTはフィーリング劣悪なダメシフトが多い上、ギアが細かすぎて操作が忙しくなり楽しさ半減である。MTは5速がコスト、フィール、操作上のテンポともにベストであり、それ以上多段にしてもメリットが無い。

 

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