日産は「5年使用しても80%容量が残る」「5年10万キロは乗れますよ」といってリーフを売り、それを信じて買ったユーザーに対して「それは目安ですので・・」「保証ではありません」などと対応しているらしい[1]。
電池がダメになる確率を統計的に予測する
電池の寿命はユーザーの使い方によって異なる。4年でダメになるという噂だが、5年持つ人もいれば、3年でダメになる人もいる。この話は次のような正規分布かもしれない。
このカーブの仮定では、68%(約7割)の人が、4年±1年、つまり3年~5年で寿命(耐え難い性能劣化)を迎える。7年以上乗れる人はほぼゼロ。
リーフユーザーの7割は、5年を目安にクルマを手放すか、電池交換して乗り続けるか、選択することになる。
これと似た話は良くある。
「橋を作ったけど、想定外に通行量が少なくて赤字になりました」「テーマパークを作ったけど、想定外に人が来なくて破綻した」・・
これらに共通して言える問題は、想定できたはずのことを「想定外」にしている点。
正規分布の中央をできるだけ正確に予測して、安全率を1σくらい見込んでおけば、よほど不運が重ならない限り悲惨な結果にはならない。しかし人はどうしても自分の計画の推進に都合のいい予測を立ててしまう[6]。
リーフの場合「3年は問題なく乗れますよ」と言っておけば、何も起こらなかったはず。
問題を認めて無償交換に応じると損になる
この考えはトラブルを拡大させる会社でよく見られる判断ミス[2]。
リーフの場合は、たとえ会社が一時傾いてでも、5年間は無償交換するのが正しい対応のはず。
「それは目安ですので・・」といって1円でもお客様に費用を負担させたら、新型リーフどころか、他の車種の売れ行きも危うくしかねない。
実はプリウスが出た時、私は今のリーフと同じ結末を予想していた。しかし、そうはならなかった。
どうやら、初代プリウスは電池交換をすべて無償でやったらしい。プリウスが出て数年後、「電池交換で高額な出費を強いられた」という情報を探したが、何も出てこなかった。
初代プリウスは大赤字だったらしいが、この対応が現在のハイブリッドビジネスの礎を築いたと考えている。
少なすぎた電池容量
電池は充放電深度が浅いほど長持ちすることが知られている。一般に、2~3割使ったところで充電すれば、5割使って充電する場合に対し、寿命が約2倍に伸びる。
ここでいう寿命は「サイクル寿命(=充放電回数)」のことで、耐用年数が伸びるわけではない。つまり
「航続距離を半分に抑えれば、充放電回数が2倍に伸びる(半分で済む)」
という当たり前に近い話。
EVでクルマの航続距離を延ばすには、電池の容量をひたすら増やすしかない。リーフは、宣伝文句を実現するために本来必要な電池を積んでいなかった。これがこのクルマの敗因とみている。
元々成り立たなかった
リーフが宣伝通りの寿命を達成するために必要な電池容量はどのくらいだったのか。5年で20%低下で済むと言っていたのが4年で半減したという口コミ[2]からすると、少なくとも今の2倍(60kWh)以上は必要だったのではないかと推察する。
静岡県工業技術研究所で公開されていたリーフのバッテリー(2012)。リーフの電池を交換すると60万円程度かかるというが、現物はスゴイの一言。原価はその倍以上するのではないか。
リーフのバッテリーを2倍に増やすと、どんなクルマになるか。
車両本体価格がガソリン車の2倍を超え、充電時間が今の2倍かかる。航続距離は伸びるが、まだガソリン車には全然届かない。6年くらいは乗れて、8年で寿命を迎える・・
リーフは元々、長距離を走るクルマとして成り立つ商品ではなかった。
新型リーフは大丈夫か
「電池の容量を30kWh→40kWh(33%)増やして航続距離 約400kmを達成!」この宣伝を見ると、今まで売ってきたリーフには何も問題がないような印象を受け、違和感がある。
電池容量を33%増やしたというが、単純に33%の改善にしかならないことは容易に想像つく。問題なく乗れる期間が3年から4年に伸びた、くらいに考えておけば後悔しない。
いずれにせよ、日産が現行ユーザーの救済をなおざりにする限り、今後のEVビジネスが成功することは、まずないと考えている。
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<参考文献>
1.電気自動車『リーフ』は“4年しか使えない”欠陥車だった! マイニュース 2015/7/30
2.電池寿命に不安。電気自動車の中古価格が暴落中! 国沢光宏 YaHooニュース 2017/7/7(リンク切れ)
評論家の方は普通、ここまで厳しい文章を書きません。これまでエコカーを推してきた国沢さんも、とうとうキレたようです。