14年過ぎたクルマのヘッドライトを蒸気研磨(スチーム研磨)して新品同然に戻す!が・・

磨き終わったヘッドライト

写真はスチーム研磨したヘッドライトの様子。今回はこれをやった結果と、判明した課題を考察する。

 

現状

写真は14年過ぎたフィットのヘッドライト。車検のたびに磨きをお願いしているので黄ばみは少ないが、曇っている。

ヘッドライトの現状

これを綺麗にしようと思ったら、通常はペーパーで磨いて、最後にコーティングすることになるが、工程が多くて大変。業者に出すと結構お金がかかる。

 

処理に使う薬品と道具

ジクロルメタンはポリカーボネートを溶かす溶剤。ジクロロメタン、二塩化メチレンともいう。これをスチームにして当てると表面が溶けて綺麗になるという。問題はこれをスチームにする道具だが、それがアマゾンにある。

ジクロロメタン

 

 写真はアマゾンで買ったヘッドライトスチーマー。電気マグにノズルを組み合わせたもの。安っぽい12VのACアダプターが付属する。ノズルにはシリコンのパッキンがついている。

スチーム研磨の道具 スチーム研磨の道具

サーモカメラでヒーターの位置を確認。下から1/4の側面にあり、底面は加熱されない。少ない液量でマグを傾けると空焚きしやすい。液量は、少なくとも深さの1/3は必要。

サーモカメラの結果

 

事前テスト

 施工条件がわからないので、CD(ポリカーボネート)に傷をつけて試しに処理してみる。金属たわし(深い傷)、800番のペーパー、2000番のペーパーの3種類。

 2枚目は処理後。800番からほぼ平滑面が得られるが、よく見ると多少凸凹がある。2000番ではキズ一つない綺麗な表面。この結果から、1000番まで仕上げれば、下地として十分なことがわかった。

傷をつけたテストCD CDでテスト研磨した結果   

 写真の背景にあるものは排気設備。ジクロルメタンのスチームは有毒であり、廃棄設備のない室内で作業するのは絶対NG。においがあまりなく吸い込んだ自覚がないことも怖い。容器の入れ替えで飛沫が目に入るのもヤバい。メガネ必須。

 

下地を作る

 条件がわかったところで本番。チョコチョコ磨いてきたので、今回は耐水ペーパーの800番で大まかなキズをとり1000番で仕上げる。通常は400番→800番→1000番でよさそう。番手は最大2倍飛びに抑えないと前の傷が消えにくく、かえって時間がかかる。

2枚目は磨きが終わったところ。最後に、塗装にスチームがあたらないようマスキングしておく。

ペーパーをかけている様子 スチーム研磨処理前の様子

 

本番

 屋外でスチーム研磨を始める。ガスを吸わないよう腕を伸ばして顔を離す。防毒マスクがあると安心。

 当たったところが即座に透明になる。感動的。マグを傾けすぎると先端で冷えた溶剤が垂れ落ちるので注意。

スチーム研磨の様子 スチーム研磨の様子

 

 作業完了。パッと見は新品に近い。

磨き終わったヘッドライト 磨き終わったヘッドライト

 作業が終わったら、余った溶剤はじょうごを使ってガラスの瓶に入れておく。フッ素樹脂以外のパッキンや蓋では長期保管できない。ほかに使う予定がないなら、使い切ってしまうのが理想。

 

クラック(ひび割れ)の問題

 下の写真は施工して1日経過後。スチーム研磨すると細かいひび割れが大量にできることが多い。スチーム研磨サービスが廃れた原因がこれ。これには表面的なひび割れと、ポリカの残留応力による応力腐食割れの2つがある。

 表面的なひび割れはスチーム研磨で出来た亀裂が乾燥する過程で溶けたもの。拡大してみると丸みをおびた窪みによる網目模様であり、ペーパーでなんとか落とせる。応力腐食割れは内部にできる深い傷であり、ペーパーで取ることはできない。

施工後のひび割れ ひび割れの拡大

 「下地処理をちゃんとやれば、ひび割れない」という施工業者もいる。CDを使った事前実験で問題がおこらないことから、劣化した層をしっかり削り取れば綺麗に仕上がるかもしれない。応力腐食割れの方は、下地処理でどうにかできる問題ではない。

 「ひび割れては意味ない」「下地処理が大変なら結局手間は一緒」と思う人は、最初からびび割れのリスクが無い物理研磨だけで仕上げた方が良いだろう。

 

仕上げコートは要るか?

 世間では、磨いた後コーティングしないとまたすぐに黄ばむ、という噂がある。この話には次のような売る側の都合がうかがえる。

 1.コーティング剤を売りたい(より多く儲けたい)
 2.早く外観を劣化させたい(コート剤が劣化して黄色くなる)
 3.消し切れない細かな傷を消したい(磨きの手抜きをごまかしたい)

 以前の長期調査[1]で、黄ばみに紫外線はあまり関係しないことが解っている。新車のヘッドライトはハードコートされているが、これは洗車等によるキズつき防止がメイン。黄ばむかどうかは素材に含まれる劣化防止剤で決まるもので、数ミクロンのコートが黄ばみを防ぐわけではない。

 ヘッドライトの黄ばみの正体は素材の黄変ではなく、あとから塗ったコートが劣化したもの。素材の黄変は深くまで黄色くなるものであり、劣化の防止対策が十分でなかった古い製品に多いようだ。

 コーティングするなら純正に近いハードコート、つまりポリカより硬くて傷つきにくいものでないと意味が無い。それはヘッドライト用コートと称して売られている成分不詳の商品ではなく、UV硬化型のレジンが候補になる※

※このアイデアは、本記事の執筆時点で他に類例がないことを確認済みです。同類の記事や動画の無断作成、および無断商用利用を固くお断ります。利用の際は、こちらをご覧ください。

 

<参考購入先>

ジクロルメタン
防毒マスク
耐水ペーパー
ヘッドライトスチーマー
UV硬化型のレジン 低粘度、ハードタイプがおすすめ

<関連記事>

1.ヘッドライトの黄ばみを予防する