コンクリート構造物には寿命がある。以前はアルカリ骨材反応※が話題になったが規制が出来てから問題になるケースは少なくなった。現在の課題は「中性化」。そこで中性化の要因とその対策についてまとめてみた。
※:コンクリートの特定の骨材にアルカリと水が反応してゲル状のものができること。これが膨張してコンクリートがひび割れる。
コンクリートの中性化と寿命
コンクリートと鉄は、相性の良い組み合わせで知られる。鉄筋が強度を補い、コンクリートが鉄筋の錆を防いで、きわめて強度の高い構造物を作れる。しかしそれは、コンクリートがアルカリ性に限った話。コンクリートが中性化してしまうと鉄筋の錆びが始まり、崩壊が始まる。
つまり、鉄筋コンクリートは、コンクリートの中性化が鉄筋に及んだ時点で劣化が始まり、そこからある期間を経て寿命となる。
中性化の原因と対策
中性化は、空気中の炭酸ガスや雨(一般に酸性)によって起こる。中性化を遅らせるには、コンクリートにこれらの劣化要因をできるだけ、さらさないようにすればよい。
炭酸ガスについては、一般によくいわれる基礎の立ち上がり幅160mm以上が目安になる。後者には表面から塗るタイプの保護材が販売されているが、効果については十分検証されていないものが多いようだ。
ヘアクラックは大丈夫か
新築して1年経った家の基礎を見ると、クラックを目にすることがある。多くは「ヘアクラック」と呼ばれ、強度的には支障ないとされているが、寿命を縮める要因になる。クラックがあればそこから雨水や炭酸ガスが侵入し、中性化を早めるため。
基礎に換気口を作ると角の部分に応力が集中してクラックを生じやすい。換気口は丸穴にするか、基礎パッキンを使って換気口そのものが無い形にするのがよい。
簡単な延命対策
基礎の劣化を防ぐ最も簡単な方法の一つに、太陽光や雨がコンクリートに直接当たらないよう、カバーをする方法がある。外貼り断熱では基礎の外側まで断熱材で囲う場合があり、これも同様の効果が得られる。
この問題はステンレスの鉄筋を使うと解決する。コンクリートが中性化しても錆びないので、中性化が問題でなくなる。これによってコンクリートの寿命が飛躍的に伸びる。これが使われないのは、コストが高く過剰スペックになる為。
基礎を打つ最適な時期がある
住宅に使われるコンクリートの強度は、一般にFC24とされる(数字が大きいほど強度が高い)。実際は夏と冬で強度の違うコンクリートを使い分けている。多くの場合、冬はFC27で、夏はFC21。これには理由がある。
夏場にFC21を使うのは、炎天下では表面の水分がすぐに蒸発してしまい、十分な養生が出来ないうちに固まってしまうため。冬場にFC27を使うのは、固まるのが遅く、なかなか強度が出ないためだ。
当然、夏場に打設したコンクリートの強度・品質は低くなる。少なくとも、炎天下が続く時期に基礎を打設するのは好ましくない。
コンクリートは、十分な水分がある中で、ゆっくり養生させるのが理想とされる。住宅を新築する場合は、夏場に基礎の打設が行われないよう、契約を結ぶタイミングに注意を払うことをお勧めしたい。
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