本当に燃費のいい車を見分ける方法~カタログ数値はなぜアテにならないのか

 リッター30キロのクルマを買ったら走らなくなった。期待していた燃費は大して変わらない・・数字だけでクルマを選ぶと後悔することがある。購入後のクルマの実燃費を正しく把握し、走らないクルマを掴まないための、カタログの読み解き方をご紹介する。

 

燃費の数字を信じて起こる悲劇

今まで乗ってきたクルマと実燃費は大差ない(逆に落ちてしまった)
アクセルを踏んでも加速しない(運転しにくい)

 これはリッター30キロ超えるクルマに買い替えたときに起こりがちな結末。なぜこんなことになってしまうのか。以下に詳しく説明する。

 

走行抵抗の中身を知る

 燃費は走行抵抗と密接な関係があり、走行抵抗が大きいクルマの燃費は悪い。クルマの本当の燃費を知るには、走行抵抗の中身を知ることが第一歩だ。

 平地の走行抵抗は

走行抵抗=空気抵抗+ころがり抵抗+加速抵抗  (1)

である。低燃費車はエコタイヤを履くのが普通なので、ころがり抵抗に差はほとんどない。ゴーストップの多い街中を主に走るケースでは空気抵抗は小さいから、「加速抵抗」の違いだけになる。

 

加速抵抗について

 加速抵抗は、ニュートンの運動方程式から

加速抵抗=クルマの質量×加速度  (2)

である。ここで加速度(運転する人の走り方)が同じであれば、「質量」だけで加速抵抗が決まることがわかる。

 

燃費と質量の関係

 例えば車重800kgの軽と、1.6トンのセダンとでは、加速抵抗が2倍違う。すると式2より、同じ加速を得るために2倍の力が必要なことがわかる。

 2倍の力を出すためには、2倍の燃料が必要だろうか。もしそうなら、燃費は単純に質量に反比例する。実際はどうなのか?

 

質量と実燃費の関係を示すグラフ 左のグラフはeナビの公開データを参考に20車種について質量と実燃費の関係を調べた結果。

 クルマの重さが2倍になると燃費は2倍悪くなるという仮説は、あながち間違いではなさそうだ。

 

 

カタログ燃費が同じなら軽い方が有利

 例えば、デミオとミライースのカタログ燃費ははほぼ同じだ。でも車重はミライースの方が3割軽い。ということは、実燃費はミラのほうが確実にいいはずで、同じ乗り方をすれば最大3割良くなるだろう。

 最下位グレードのミラは軽く、ガソリンだけで走る車としては究極に近いエコカーといえる。

 

ハイブリッドの燃費

 重い車でも軽いクルマ並に燃費を良くできる方法がある。

 たとえば1.6トンのクルマの半分、800キロ分を電動アシストしてやれば、車重800キロの軽自動車に近い燃費にできる可能性だってある。

 つまり重いクルマの燃費は「ハイブリッド」にすることである程度改善できる。

 

結局燃費は車重で決まる

 街中を走ることがメインの場合、言い換えると、加速抵抗がメインになる乗り方をする限り、燃費は重さで決まる。

 重いクルマは、自分自身の質量のために余分な燃料を食う。車重が半分のクルマに乗り換えれば、燃費は2倍近く改善できる可能性がある。

 カタログ燃費がいくら良くても、実燃費で車重の重いクルマがより軽いクルマに勝ることは、無いと考えておきたい。

 

新しく買うクルマの燃費を正しく把握する

 カタログをもらったら、まず後ろのページにある「主要緒元表」を開いて車重を見てもらいたい。この数字を使って次の計算をする。これだけで自分がそのクルマを手に入れた後の実燃費をかなり正確に予測できる。

実燃費New=実燃費Old×車重Old/車重New   (3)

「New」は新しく買うクルマ、「Old」いま乗っているクルマの値を表す。実燃費Oldは今乗っているクルマの実燃費だから把握できているはず。車重Oldは車検証に書いてある。
 この式は新しいクルマの燃費は今乗っているクルマとの重量比で決まることを示している。クルマの効率が昔より進化している、と仮定すると、この計算結果はミニマム値を与える。つまり購入後の実燃費がこの計算値を上回ることはあっても、下回って後悔することはない。

 「エネなんとか」「エコなんとか」といった仕組みの寄与度は車重に比べると小さい。とにかく、車重が何よりも大切なスペックになることを知っておきたい。

 

(参考) ゴーストップの多い乗り方の場合、(3)式の予測はとてもよく合う。私は2012年にスカイラインからフィットに乗り換えた。ィットの実燃費はこの計算式から導いた予測燃費とぴったり一致した(スカイライン25GT-V 1400kg 平均実燃費7km/L、フィット15XH 1090kg 予測実燃費8.99km/L。これに対し、15XHの3年間平均実燃費は9km/Lだった)。
 10年以上前のスカイラインに対しフィットはいろんな面で効率が良くなっているはずなのに、結果に表れていない。今でも車重が燃費を支配していることに変わり無さそうだ。

 

燃費向上による経済効果を知る

 実燃費Newがわかると、燃費向上による経済効果も次の式で把握できる。

経済効果=走行距離×ガソリン代×(1/実燃費Old - 1/実燃費New)  (4)

 この経済効果は、燃費の悪いスポーツカーに乗っている人と、コンパクトカーに乗っている人とで大きく違ってくる。

 たとえば走行10万キロ、平均ガソリン代を140円と仮定し、買い替えによって燃費がリッター3キロ良くなったとしよう。この場合の経済効果は、リッター4キロのスポーツカーに乗っている人は150万円もの節約になり、リッター20キロの車に乗っている人は9万円の節約にしかならない。これをグラフにしたのが次だ。

 

リッター3キロ燃費を良くした場合の経済効果を示したグラフ 同じリッター3キロの改善でも、燃費の悪い車に乗っている人ほど、買い替えの経済効果が大きく、いま燃費のよいクルマに乗っている人は、買い替えても燃費向上による恩恵は少ないことがわかる。

 

 

ハイブリッドは本当にオトクか

 燃費向上による経済効果がわかると購入の判断に活用できる。例えばハイブリッドにすると燃費が大幅に良くなるが、経済効果から本体価格の上昇分を差し引くと、実はガソリン車とあまり変わらない場合が多いようだ

※例えばコンパクトカーに対するリッター6キロの経済効果は約30万円。ハイブリッドが30万円割高だとリッター6キロの向上は無いのと同じになる

 

走らない低燃費クルマを掴まないためにはどうすべきか

 JC08モード燃費の数字と車重をセットでみるとドライバビリティが見えてくる。例えばモード燃費の数字が大差ない2台のクルマを検討しているとしよう。両者で車重が100キロも違う場合、重い方のクルマは走りに問題がありそうなクルマだと予測できる。100キロもの重さを燃費でカバーするためには制御やギア比で誤魔化すしかないからだ。

 両者の車重が大差ない場合は、モード燃費の数字が低い方が良く走るだろう。車重が同じなら実燃費は同じ。数字の絶対値に惑わされないよう注意したい。

 

 

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<改訂履歴>
2019/3/21 プリウス アクアはお得か~エコカーの選び方(2011/10/9) の内容と加え統合しました。