大磯砂は貝殻などの炭酸カルシウムを含むため、水の硬度を上昇させて水質をアルカリに傾ける。その作用は何年も続くらしい。
砂から炭酸カルシウムを抜く方法の一つに塩酸処理がある。今回は未処理の砂と塩酸処理した砂を用意して水質の変化を観察してみた。
大磯砂は「天然大磯砂」として売られているものの中目を使用。
「未処理大磯」は洗っただけの大磯を源水(水道水)に浸けて3日経過後の水。
「塩酸処理」は、【失敗なし】アクアリウムの水槽を立ち上げる手順を詳しく説明~汽水水槽も!で紹介した方法で処理した砂を水道水に浸けて2日経過後の水。
「塩酸処理+換水2回」とは、塩酸処理した砂に水を入れて2日経過後、いったん換水してさらに2日経過した水
源水は水道水を2日汲み置きしたものの測定値だ。
処理 | PH | KH | GH |
源水 | 7.1 | 1以下 | 2 |
未処理大磯 | 8.3 | 3 | 1以下 |
塩酸処理 | 4.1 | 3 | 8 |
塩酸処理+換水2回 | 4.7 | – | – |
未処理大磯はPHをアルカリに傾かせる。何度水を替えてもアルカリになっていくのは、やはりこの砂が原因に間違いない。
塩酸処理するとその成分が残留して水を酸性に傾かせるようだ。この成分は水に浸けた程度では抜けない。
塩酸処理のKHが8になっている。塩酸の希釈液だけ測定しても同じであることから、残留している塩化水素の影響に間違いないようだ。
塩化水素が原因なら乾燥すれば抜けると思い、電子レンジでカリカリに乾燥させてみたが、効果がなかった。そこで鍋に入れて何度か煮てみたところ、2回目から煮汁のPHは変化しなかった。問題の成分は1回煮るだけでほとんど抜けてしまったようだ。また、塩酸処理した大磯を煮るとアクが出ることがわかった。塩酸処理の最終処理工程に煮沸を入れると高品質の砂ができるようだ。
「田砂」に塩酸処理は必要か(2012/11/14)
当館ではアクアリウムの低床に「大磯砂」を使用してきたが、塩酸処理しないと使えない代物だった。
田砂はドジョウ、コリドラスや貝類の飼育によく使われている。その魅力は自然な風合いにある。これも塩酸処理しないと使えない代物だろうか。そこで、田砂を塩酸処理してみた。
田砂の能書きには水田由来とあり、PHを傾ける成分は少ないと見られるが、ためしに塩酸を注いで見ると写真のようにブクブクと泡が出る。
海砂を混合しているのか、石灰岩の粒が混じっているのか、わからないがカルシウム成分を含むことは確かだ。
ただし含まれるカルシウム成分は大磯に比べて少なく、使う塩酸の量も、処理時間も大磯に比べ半分以下でよいようだ。田砂を使ってPHが上昇して困った、という記事を見かけないことからすると、それほど問題になることは無いようである。完璧を望むのであれば、塩酸処理しておくのが無難といえる。
田砂は粒子が細かいため酸処理後の水洗いが難しい。作業が大変なのが難点だ。
結論
未処理大磯は確かにPHを上昇させる。
塩酸処理をした砂は最初水質を酸性に傾かせるが、この成分は一度煮ることで抜くことができる。
その後、塩酸処理+煮沸処理した大磯砂を実際に試用した結果、PH,KH,GHに影響を及ぼさないことが確認できた。これはアクア用品として最高の砂の一つに違いない。
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