数百万円のアンプや数万円のケーブルが市販されている。これらに価格相応の価値があるのだろうか。これまでは、それを知る手段がなかった。簡単な測定でその価値を知る方法を考案したのでご紹介する。
出力インピーダンスに注目する
「出力インピーダンス」は音のクオリティを左右する重要なスペックだった[1]。これを実機で知ることができれば参考になる。
ところが、出力インピーダンスをカタログに明記しているメーカは少ない。不明な場合は調べるしかない。幸い、出力インピーダンスは分解して調べなくても外から測定することができる。
出力インピーダンスを測る方法
図1はON/OFF法による出力インピーダンス測定回路。中央の縦線から左が測定対象(CDプレーヤ、アンプなど)。Rxが未知の出力インピーダンス。Rxを測定する回路は、抵抗Rdと、スイッチ、交流電圧計によって構成される。
Rdの値は、一般機器の場合200~500Ω、パワーアンプの場合 2.2~4Ωの5W以上のセメント抵抗を使う。パワーアンプのRxは非常に小さいので、測定に使う電線の抵抗が誤差になる。図のようにSP端子の電圧を直接測る必要がある。
測定方法は次の通り。
まず、1KHz 0dB(1Vrms)の正弦波が記録されてるオーディオチェック用CDなどを再生して、スイッチを開いたときの電圧計の読み、これをV0とする。次にスイッチを閉じて同じように電圧計を読み、これをV1とする。スピーカーの場合は出力電圧を1.5Vrms程度として測る。未知の出力インピーダンスRxは、図の式で求めることができる。
注:200Ωで0dBの正弦波を再生すると5mA の電流が流れる。パワーアンプは1.5V 2.2Ωで0.68A (1W)流れるので注意したい。測定は自己責任で。
出力インピーダンスが100Ωを超える機器を測定する場合は、電圧計に入力インピーダンスが十分高いもの(テスター等)を用いないと正しく測れない。
なお、デジタルアンプでは端子開放だと発振して正しい測定ができないことがある。この場合、Rdより十分大きな抵抗負荷を入れるとよい。Rdと同じ抵抗をパラや直列にした場合[2]は、OFF時のV0がRxとの分圧になって誤差が増える。
出力インピーダンスの測定結果
ON/OFF法で測定した出力インピーダンスの一覧表を次に示す。
表1.オーディオ機器の出力インピーダンス
(1KHz Sin,RD=330ohm (2002/5/12)
機器名 | メーカ | Rx(Ω) | 価格 | 備考 |
PD-N901 | パイオニア | 931 | アンプとコミで5万くらい | ミニコンポ CDチューナ |
DCD1650G | デンオン | 101 | 99,000 | – |
JA3ES | SONY | 902 | 108,000 | MDレコーダ |
A-10 TYPEIV | NEC | 600 | 125,000 | プリアンプ出力、カタログデータ |
CD-23 | マランツ | 101 | 200,000 | 公称150ohm |
D-500 | ラックスマン | 203 | 250,000 | – |
C-275 | アキュフェーズ | 47 | 480,000 | 公称50ohm |
DP-75 | アキュフェーズ | 48 | 580,000 | 公称50ohm |
出力インピーダンスは高級機ほど低い数値になっていることがわかる。中にはDCD1650Gなど値段の割に低い機種があり、価格の割に音の良い商品と見られる。
ケーブルの特性を測定する
ケーブルの特性を測定するため、次の回路を考案した。
これは機器の出力インピーダンスの代わりにRを入れたもの。Rを十分大きくとることで、ケーブルのシールド性能や、静電容量による周波数特性の変化を観測しやすい形に拡大できる。
Rの大きさは、数十~数百KΩ。これだけ大きければ、今まで見えなかったケーブルの性能が定量的に見えてくるはず。この方法はまだ未検証なので、機会があれば検証してみたい。
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<参考文献>
出力インピーダンス測定法