リスニングルームの改善~自動音場補正は役に立たない

 DSPが安価になりAVアンプなどに自動音場補正機能が付くようになった。これは多数のスピーカーの時間差補正には有効だが、周波数特性の補正には役立たない。

 

自動音場補正の仕組み

 大抵のものは、リスニングポイントに測定用マイクロフォンを置き、スピーカーから測定用信号を発信し、スピーカーの音圧レベルと、距離を測定する。この結果をもとに、「音の到達時間」「音圧レベル」「周波数特性」などを補正する。

 この中で問題なのが、周波数特性の補正。測定用マイクロフォンが拾う音は部屋の定在波を含んでいる。定在波を含んだ状態で補正をかけても、まともな結果は得られない。

ソニーデジタルアンプ(TA-F501 )の付属マイクロフォン ソニーデジタルアンプ(TA-F501 )付属の測定用マイクロフォン(2008年)。補正項目は、スピーカーの有無、距離、角度、レベル、周波数特性の5項目。

 

 

 定在波は時間をかけて成長するもの。そのような定在波のピークをイコライジングで押さえてしまうと、音楽信号を流したとき、その周波数のレベルが不足してしまう。

 逆に、定在波の節に合わせてイコライジングしてしまうと、実際の音楽信号を流したときその周波数だけ過剰に出てしまう。

 結局この手の補正は、周波数特性の山谷がどうして出来ているのかを無視して、単純に周波数特性がフラットになるようイコライジングしてしまう。こういうものがうまく機能するのは反射音が問題にならない無響室のような室内だけ。定在波のある室内では、やらなくていい調整をやってしまい、かえって不自然な結果を生むことがほとんど。

 

定在波を押さえる方法

 定在波が立つ空間ではまずそれを対策することが先決。定在波を対策した後であれば、自動音場補正もある程度有効かもしれない。具体的方法は別の記事で詳しく書いた[1]ので、そちらを参照してほしい。

 

<関連商品>
AVアンプ 今や、ほとんどすべての商品に付いています
デジタルプロセッサー カーオーディオ用の商品が多いようです

<関連記事>
1.小さい部屋に大きなスピーカーはなぜダメなのか~ルームチューニングでオーディオの音を劇的に良くする
新築リスニングルームの設計~たった30万円で夢の空間を実現する

<改訂履歴>
2017/11/12 マイクロフォンの写真を追加しました。