スピーカー(JBL S3100)のエッジを交換する

 ウレタンエッジは朽ちる運命にある。S3100を買うときそれがわかっていたので、使わない時はウーファに光を通さないアルミのカバーを嵌めていた。でもやっぱり、7年後にダメになってしまった。

 

エッジの材質の違い

 交換に使われるエッジの材質は、ウレタン、ゴム(ラバー)、布、革などがある。これらの違いは、ばね定数K、減衰C、耐久性で、それぞれ次の関係がある。

K 布≒革<ウレタン<ゴム(厚みが同じ条件)
C 布≒革>ウレタン>>ゴム
耐久性 合成ゴム≒布≒革>>ウレタン

 C、Kはエッジを押したときの反力や復元速度からわかる。復元が遅いものほどCが大きい。Cはエッジ共振を防ぐ意味から大きいほど良く、f0(最低共振周波数)を下げるためにKは小さいほど良い。

 C やKをオリジナルと大きく変えると、音が変わってしまう可能性があるので、次のようにするのが無難。

ウレタンエッジ→革もしくは布エッジ
ゴムエッジ→ゴムエッジ

 元々布やウレタンエッジだったものをゴムエッジにすると、低域特性が盛り上がる可能性がある。

 同じウレタンエッジでも、ポリエーテル系のものは10年以上持つようだ(1992年発売のパイオニア S-HE100のエッジはウレタンだが、10年以上無事を確認済)。もし素材を確認できるなら、ポリエーテル系のエッジが最も音の変化を少なくできる。

 材質の違いに関する詳細は次の通り。

 

革エッジ

 C,K共に理想的な素材だが、形状が安定しない欠点がある。そのため樹脂を含浸させてロール状に加熱整形したものが多く使われる。ベージュや茶系の色が多く、見た目の印象が変わってしまう場合がある。

布エッジ

 布をベースに粘弾性樹脂を含浸、もしくはこれに相当する素材を合わせて加熱成形したもの。特性、安定性ともに優れており、強度も高い。昔は粘弾性樹脂に枯れやすい材料が使われていた[1]

ゴムエッジ

 種類が多く、耐久性は品種によりかなり差がある。フッ素、シリコン、EPDMなら問題ない。ウレタンよりCが小さいため、交換すると音が変わるリスクがある。

 

交換後の品質検査

 エッジを交換するとCやKが変わる。施工が失敗していると非直線性歪が増える。これは「インピーダンス特性」と「歪率特性」に表れる。

 なので、インピーダンス特性と歪率を測定して、少なくとも左右で違いが無く、歪率が一定以下であることを確認しなければ、無事交換できたとはいえない。

 「左右のf0、Q0、歪率の差は〇%以下」
「オリジナルとの差は〇%。統計的なばらつき〇%の範囲内なので合格」

 

 エッジ交換を扱う業者のほとんどが交換したらおしまい。周波数特性を出す業者があるが、ほとんど意味がない。f0とQ0、歪率のデータを出せるところが、本当のプロショップだろう。

 


 

実例

 私は昔、コーン紙の張替えを自分でやってみてその難しさを知っている。自分でできないことはないが、不慣れな作業をぶっつけ本番でやるより、普段からこの作業をやっているプロショップに出すのが無難だ。

 私はBGMというショップに出して布エッジに替えてもらった。出来栄えはまあまあ、特性は自分で測って問題なしだった。

 ショップに交換を出すとき自分でユニットを外す必要がある。まずスピーカーを布団の上に仰向けに寝かせて、取り付けてあるねじを外す。JBLのねじはインチサイズの為、インチサイズの六角レンチが必要だった。

 ユニットの配線はファストン端子が挿してあるだけなので、ペンチで引き抜けばとれる。硬い場合があるが、破損しないよう注意したい。

 

布エッジに交換されたJBL S3100のウーファー(ME150HS) 布エッジに交換されたJBL S3100のウーファー(ME150HS)。

 エッジでボルト穴が塞がっていたためねじが入らなかった。後からエッジに穴あけするのは難しいので、ショップで穴あけを確認した方が良い。

 また、ショップが近所にある場合は一度見学をお勧めする。作業現場や商品の取扱を見ることで、信頼性をある程度判断できる。

 

 

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