信頼性の高い測定を行うには測定冶具の準備が欠かせない。自作した冶具類と、測定機器、ソフトおよび、測定の注意点をご紹介したい。
測定冶具
写真は自作の測定冶具類。4線式抵抗測定ケーブル、インピーダンス測定用抵抗、ダミー抵抗(3本)、アンプSP端子取出ケーブル、保護抵抗付ステレオミニプラグ。
接続はバナナかBNC。パーツは信頼性の高いものを厳選。端末処理して熱収縮チューブで絶縁してある。
アンプ測定の注意
SP端子は電位が浮いている場合がある。L,Rのマイナスがコモンでない場合もある。そういうところへ不用意に計測器を繋ぐとアース間電位差で予想外の電流が流れ、機器を壊す危険がある。
インピーダンス特性を計る場合(定電圧法)でも同じ注意が要る。デジタルアンプは適当な負荷に繋がないと正しい出力波形が見えない場合があるので、スピーカーの代わりにダミー抵抗を繋いで測る。
浮いた電圧を測る方法
絶縁アンプで受けるか、計測器の電源にも絶縁トランスが欲しい。私たちアマチュアは、電池駆動の携帯型録音機を使うのが簡単である。
データの記録は電池駆動のICレコーダ(TASCAM DR-05)を使用。昔はMDレコーダ、さらにその前はウオークマンDATだった。便利になったが、光デジタル出力付き(リアルタイムスルー)の安価な携帯録音機が欲しいころ。
携帯機器の入力は大抵ステレオミニプラグ。プラグを抜き差しするとき一瞬ショートするので注意が必要。保護抵抗入りの接続ケーブルはそのための冶具。
このあたりの話を理解できない人は測定に手を出さないのが無難だ。測定を安全に正確に行うためにはそれなりの知識が要求される。
測定機器の例
インピーダンス特性を測定するための抵抗を4線式で精密測定しているところ。小さな抵抗は4線式でないと正確に測れない。
アンプの出力電圧を測定しているところ。浮いた電位の測定には携帯録音機が便利。写真はTASCAM DR-05。
DR-05の内臓マイクは10KHzにかけて10dB急上昇するため測定に使えない。これはマイクロフォンカプセルから先端の筒の共鳴が原因とみられる。特性がフラットになるためにはマイクから先に筒や出っ張りがあってはらない。ライン入出力はフラットなので電圧の録音専用で使う。
計測用マイクロフォンAUDIX TM1とファンタム電源(BEHRINGER PS400)。このマイクは精密騒音計よりも高域が伸びていて20kHzまでキッチリ計れる。アマチュアが入手できるお手ごろ価格のマイクとしてお勧めの一つ。
測定ソフト
主にWaveSpectraとWaveGeneを使用。オクターブバンド解析は手頃なソフトがないのでエクセルのマクロを利用して作った[3]。このあたりがフリーでできる限界。
専用ソフトではDSSF[1]、RMAA[2]がある。どちらも音の評価用に開発されたものでほとんど手間をかけずにいろいろな測定ができる。
<参考購入先>
ICレコーダ: PCMレコーダー DR-05
マイクロフォン: AUDIX TM1
ファンタム電源: BEHRINGER PS400
キャノン to ステレオミニ変換ケーブル:ファンタム電源からパソコンのマイクロフォン端子に接続するために必要 キャキャノンケーブル: CANARE EC03-B(XX)
1/4″変換ねじ:CAMERA-SHURE マイクホルダーをカメラ用三脚ねじにつけるための変換ねじ
バナナプラグ(サトーパーツ):計測用のバナナプラグはこれで決まり
バナナジャック: 3010-I-(色番号) 常盤商工
配線材
配線コード エーモンの耐熱電線 1.25スケアが使いやすい
熱収縮チューブセット きちんとした絶縁端末処理は基本です
工具類
ヒートガン: ヒートガン ミニ 熱収縮チューブの施工に
はんだごて:白光製がお勧め
ワイヤーストリッパー
セメント抵抗は10W以上のものが必要。2ohm、4ohm×2 など組み合わせで 2,6,8ohm を作れるように揃えると便利。セメント抵抗はインダクタンスを持つため高周波成分の多いデジタルアンプの測定に便利である。
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