オイルの交換の最適な時期はいつなのか~高価な100%化学合成油は無意味

「3千~5千キロ、もしくは3カ月~半年ごとに交換してください」良く聞かれるフレーズだが、この周期はほとんどの人にとって短すぎる。オイル交換の最適な期間はいつなのか。低燃費オイルや化学合成油にメリットはあるのだろうか。

 

汚れている=交換のサインではない

 本当の交換周期を知るには、オイルの劣化度合いを調べる必要がある。ところが、これが容易でない。

 わかりやすい劣化の指標に「汚れ」があるが、オイル交換して1カ月もすると交換前のように黒くなる。オイルが汚れるのはオイルが有効に働いている証拠であって、「黒くなった=劣化した」 ではない

 「感触」や「匂い」については、よほど劣化が進んでいない限り、判定は難しい。

※:以前ディーラーに定期点検に出したら、3か月前に交換したばかりのオイルを勝手に交換されたことがある。「汚れてましたので交換しておきました」とか。「ええっ!入れたばかりのオイルを交換してしまったんですか!?1万円したんですよ!?」皆さんもご注意を。

 

オイルの劣化を測る手段はあるか

 専用の測定器を使うと、見た目でわからないオイルの劣化度合いを定量的に知ることができる。

 オイルの劣化は「誘電率」「導電率」などの値に比例するらしい。しかし、誘電率を気軽に測れる安価なセンサーは市販されていない。導電率はECメーターで測れるが、オイルの導電率は小さいため、この種の簡易機器では測れない。

 つまり、私たちユーザーがオイルの劣化を測定で知るのは困難である。

 

低燃費オイルを入れると燃費が良くなるか

 「低燃費オイルを入れてみたら、燃費がこれだけ良くなりました」そんなレビューをみかける。もしそれが本当なら「画期的」なことだ。

 最近は5wや0wで始まる低粘度オイルが市販されていて、「低燃費」をうたっている。これを特別低燃費でない普通のクルマに入れた場合、フケ上がりや加速感が若干違うような気がするが、数字に表れるような効果は出ない。

 なぜなら、燃費に影響する「フリクションロス」は、エンジンだけで決まらないから。

 フリクションロスは、エンジンのほかにもミッション、プロペラシャフト、ドライブシャフト、デフ、タイヤなど、パワートレイン系の至る所にある。

 低燃費オイルに変えることでエンジンのフリクションロスが減るのは事実だろう。でも他の部分のロスはそのままだから、全体として見ると、ほとんど変わらないことが想像つく。

 

 

怪しいオイル添加剤について

 燃費を向上させると称する添加剤が売られている。これらの添加剤を購入する際は「投資がペイできるか」という点に注意したい。

 燃費を改善したい人の目的は出費を減らすこと。添加剤を使った結果、投入した添加剤の費用を上回る経済効果がなかったら、入れない方がマシということになる。

 

入れるオイルは、クルマの取説を参考にする

 いろんなグレード、粘度、種類がある。いったい何を入れたらいいのか・・

 これについて最も参考になる情報はクルマの取説にある。まずは取説を見ることが重要だ。

クルマの取説に書かれた奨励エンジンオイル 自分のクルマにあったオイルを選ぶ第一歩は、クルマの取説に書かれているグレード、粘度などの「推奨」を知るところから始まる。基本的に、ここに書かれているものを入れればよい。

 高価な合成油や低粘度オイルを入れても、数字に表れるような効果は期待できない。

 

 エコカー(0w-20などの低粘度オイルを奨励しているクルマ)ではパワートレイン系のロスを減らす努力がされている。この場合、奨励の粘度を大きく逸脱すると、燃費を悪くする場合があるので注意したい。

 

オイル交換の周期をどうすべきか

 これまで通り「走行距離」と「経過時間」を参考にするのが現実的である。

 具体的には、取説に書いてある奨励オイルを1万キロ、または年1回で交換(エレメントも一緒に)すればよい。シビアコンディションも含め、ほとんどの場合これで10年10万キロ、何の問題もなく過ごせるはずだ。

 カー用品店の3千キロor3カ月はどう考えても短すぎる。利益を優先して無駄なオイル交換を勧める姿勢は感心しない。

 

一般ユーザーは鉱油で十分

 オイルにはグレードや粘度のほかに基油の違いがある。値段に差が出るのはこの部分で、通常、次の関係がある。

鉱油<部分合成油<合成油(100%)

 合成油は鉱油より性能がよく長持ちすることはわかるが、定性的な話ばかりでデータが無い。価格差に見合ったメリットがあるのか疑問だ。

一般消費者は、いちばん安い鉱油で十分

である。

 

化学合成油は無駄

 鉱油からMobil1などの合成油に変えるとエンジンが若干、スムースで静かになったように感じられる。数字に現れないフィーリングの改善効果はあるようだ。しかしそれは交換直後のこと。しばらく経つと次第に差がわからなくなる。この種の高級オイルの効果は、その程度のものと考えておきたい。

 メーカーがいう合成油の効果(保護性能、清浄性、潤滑性、効率向上など)については、定量的なデータが示されていない。値段が半分の鉱油を2回交換した場合とどっちがいいか、微妙なところ。

 高価な化学合成油は、ほとんどのユーザーにとって、過剰品質のオイルに違いない。

 

<参考購入先>
エンジンオイル
オイルチェンジャー DIYで交換する人の道具。自分で交換するのが最も安上がりです
オイル添加剤 はっきりいって要らない商品です

<参考文献>
エンジンオイルの基礎知識
1.出光 燃費比較実証テスト(リンク切れ)

<改訂履歴>
2017/11/23 クルマの取説(奨励エンジンオイルの写真)を追加しました。