「テンポよくシフトアップしながらクルマを伸びやかに走らせる」これはMTの醍醐味の一つだった。スポーツカーのMTが6速になってこの楽しさが失われてた。どうして6MTはダメなのか。ギア間隔を解析するとその実態が見えてくる。
6MT問題点
6MTの多くは5速の上に1段追加したのではなく、5つ区切っていたレンジを6つに細分化したもの。そのためギアチェンジしたと思ったらすぐに次のシフトタイミングが来てしまう。また5MTに比べ構造が複雑なため、入りがシブく操作に力がいる傾向がある
適切なギア間隔のMTは、シフトアップのたびに心地よい加速感が得られ、シフト操作が楽しく感じられるものだが、6MTの実際はシフトがせわしい上にギアチェンジが引っかかって操作自体が煩わしい代物になっている。
モード燃費でよい成績を出すためにギアを不等間隔にした本末転倒な商品もある。
ギヤ間隔の例
2015年はホンダのS660とマツダNDロードスターがスポーツカーの目玉。どちらも軽量化に注力し走りの楽しさを追求している。ロードスターが排気量を初代に戻して1トンを切る軽量化を実現したのは素直に歓迎したい。スポーツカーにとって「軽い」ことは何よりも重要だ[1]。
S660とNDロードスターはどちらも「6MT」だ。となると、ギアのレンジとギア間隔が気になってくる。これはカタログの数字を眺めてもわからない。大抵は買ってから気がついて後悔する。そこでいつもように計算してみた。下のグラフは4000回転のときの各ギアにおける走行速度で、ギアのレンジと間隔を比較できるようにしたもの。
グラフのチェックポイントはプロット(ギア間隔)が等間隔か、狭すぎないかの2点。
不等ピッチの代表はアルテッツアとフィットHEV。これらのクルマは走りに違和感を感じやすい[2]。
ギア間隔が狭いロードスターNB8C(1.8L)はシフトチェンジがせわしい代表。但し、これはクルマのパワーに関係する。1.8Lではせわしいが、1.5Lなら加速に時間がかかる関係でバランス良くなる場合がある。
新しいNDロードスターの6速は、初代NA6CEの5速の上に6速ギアを追加した形になっている。S660も同クラスのコペンに対して同じ形。どうやら、期待が持てそうだ。
ビートのギアレンジを見ると、非力な軽自動車のエンジンをめいっぱい働かせて走らせるセッティングになっている。パワーに見合った適切なギアを組み合わせれば、軽もスポーツカーになることをビートが示している。
軽量ボディに適切なギア比を組み合わせたS660とNDロードスターは、久しく見なかったマトモなスポーツカーかもしれない。
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