カタログや試乗では、見るべきポイントがあります。これを知れば、買った後で後悔する可能性が減るかもしれません。私がクルマを選ぶ際に見ているポイントをご紹介します。
1.カタログをもらったらチェックすること
実燃費はどの程度か
メーカーが出している数字ではなく、車重を見てください。実燃費はタイヤやエンジンではなく、ほとんど車重で決まります。基本的に軽いほど高い燃費が期待できます。
次に、カタログ燃費を見て車重との関係を比較します。車重が重いくせに燃費の数字がいいクルマは要注意です。アクセルを踏んでも走らないか、実燃費がカタログより大幅ダウンする可能性が高いです。
よく走るか
スポーツカーを選ぶ人は、カタログの最高出力(馬力)ではなく、下のグラフ参照して塗りつぶし領域に入っているかチェックします。このグラフは私がいろんなクルマ乗ってきた経験を元に作ったものです。グラフの領域に入るクルマは、走りの楽しさが期待できるクルマです。
左は走りの楽しさが味わえる車重の限界。以前は定数を紹介していましたが、実態と合わないケースもあることからグラフにしました。直線でないのは旋回慣性が関係するためでしょう。
1.3トン,2000ccを超えるとパワーでカバーできない慣性が大きくなるため、上限は1.3トン、2000ccとしました。
グラフ1:走りが楽しく感じられる車重の限界(経験則)
ギア間隔に問題が無いか
ギアが等間隔でないと走りに違和感を覚えます。MT車でクロスしすぎていると操作がせわしすぎて楽しくありません。
最近ではモード燃費で良い成績を出すために不等間隔にした本末転倒のクルマもみかけます。下の図はこれを計算した例。詳細は関連記事1をご参照。
車高が低すぎないか
最低地上高が130mm以下のものは不整地走行で凹凸を乗り越えたときに「ゴリ」っと擦りやすくなります(マツダ・ロードスターなど)。メジャーを持って行って測ります。
2.クルマに乗る前にチェックすること
ドア、トランクの開閉で変な音がしないか、重過ぎないか
開けられるところは全部開閉してみます。操作が重過ぎないか、ビビリなど不快な音がしないかチェックします。
車高が低すぎないか
メジャーで最低地上高が130mm以上あることを確認します。写真はフィットの下回り。実測132mmで車輪止めに対しギリギリです。
3.クルマに乗って、走る前にチェックすること
シートが滑りやすくないか(走りを求める場合)
背中を左右に動かして摩擦が十分か見ます。革シートやツヤのあるツルツル生地のシートは背中が滑りやすく、姿勢が安定しません。
シートベルトがきつくないか
プレート(差し込み金具)が自然に手が伸びる位置にあるか、装着後のテンションがきつすぎないか(疲労に繋がります)チェックします。
エンジンの音がうるさくないか
レッド近くまで空吹かしして途中の回転数から音色が変化しないか、高回転で音が極端にうるさくならないか、エンジン以外(補機など)の音が目立たないかチェックします。
パワーウィンドウの開閉でドアトリムが歪まないか
動作音は静かか、終端でドアトリムが大きく歪まないかチェックします。歪みが大きい場合トリムの強度が不十分。見た目が立派でも大きく歪むものは、チープな印象を与えます。
ウインカーがスムースに動作するか
レバーが固すぎないか、カチカチという音がうるさく感じないかチェックします。
空調がうるさくないか
風量最大にし、外気、内気を切り替えて音が大きくなりすぎないかチェックします。空調の音が大きいとオーディオが聴きにくく、会話にも支障をきたします。
サンバイザーや各種操作ボタンに違和感がないか
自然に手が届く位置にあるか、開閉した時に不快な音がしないか(閉めるときボン!と大きな音の出るものがあります)、操作に違和感がないかをチェックします。天井の高いクルマではシートベルトをした状態でサンバイザーに手が届くかチェックします。
オーディオの音が悪くないか
イコライザ機能をすべてOFFにしたのちFM放送を聴いてみます。音のレンジは十分か、人の声が自然に聴こえるか、音量をあげて音が歪まないかチェックします。後から音に不満が出るとカーオーディオを入れ替えるハメになり、苦労することが多いです。
4.走行中チェックすること
ちゃんと走るか
普通にアクセルを踏んで周囲の流れについていけるか、追い越し加速するときすぐにスピードが乗るか。回転数におかしな挙動がないか。
重い車体に小さなエンジンを乗せた車は出足を良くするためにチョイ踏みでガバッとスロットルを空ける場合があります。このせいでギクシャクしてスムースに走れません。また、クルマが重たくて燃費の数字がだけ良いクルマは走らない場合が多いので要注意です。
ロードノイズがうるさくないか
舗装路を常用速度走ったとき、うるさくならないかチェックします。
ステアリングフィールに違和感がないか
センター付近に無駄な遊びがないか、反力が適度か(軽すぎず、重すぎず)、切り角と反力が一定か、切り角とクルマの旋回に不自然なところがないか。軽自動車ではオモチャのような操舵感のものがあります。
ブレーキフィールに違和感がないか
制動力に比例した踏み応えがあるか、カッチリした反力があるか。スポンジのようなフィールのものは良くありません。
ロールが大きくないか
交差点を曲がる際、クルマが大きく傾かないか。フロントスタビライザーが付いていない場合大きく傾いで驚くことがあります。
ボディ剛性が十分か(スカットルシェイクがないか)
スカットルシェイクとはボディ剛性が低いことで起こるねじれ振動のことです。オープンカーや両面スライドドアなど開口部の大きいクルマによく見られます。ブルブルという震えがシートから体に伝わって不快に感じます。
不快な風切り音がしないか
走行速度が高いとき問題になります。ドアミラー付近から発生するものが目立ちますが、最近のクルマではあまりみかけなくなりました。
サスペンションが硬すぎないか、減衰が不足していないか
会話をしていて舌を噛みそうになったり、突き上げが厳しく感じるものは一般道の走行に適しません。また、ふわふわと上下に揺れの大きいクルマは運転しずらく、クルマ酔いの原因になります。
よいサスペンションを持つクルマは姿勢変化が少なく、水平のままスーッと移動する感覚があります。
シフトフィール(MT)
走行中、引っかかり感なくスムースにギアチェンジが出来るか。普通に加速したときシフト操作がせわしすぎないか(ギア間隔が狭いクルマではのべつシフトしながら走ることになります)。
ギアチェンジのタイミングに違和感がないか(AT,MT)
しばらく引っ張ったり、すぐシフトアップするなど、シフトアップのタイミングにムラがあると走りがギクシャクします。
ロードノイズやサスまわりの振動はマウントや車体の制振などが関係していてあとから改善が難しい項目です。自分が許容できるか、十分考える必要があります。
最後に
試乗のチェックポイントは他にもいろんなところがありますが、クルマの基本はあくまで「走る」「曲がる」「とまる」です。最近では燃費の数字を良く見せようとするあまり、この基本を満たしていないクルマもみかけます。
スポーツカーをうたいながら車重に対しパワー不足だったり、サーキット以外は乗り心地が厳しすぎて実用性のないクルマもみかけます。
今回は私の過去の経験から重要と思われる点、見落としやすい点について主に挙げました。これらを押さえておけば、買った後で「失敗した!」なんてことにはならないはずです。
あと、試乗の際はICレコーダを持ち込んで録音すると、後からて騒音などを確認できて便利です。
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