カリフォルニア州がZEV規制を強化、中国がEV普及に本腰、トヨタがEV開発に方針転換、全個体電池の開発を急ぐ・・
そう聞いて「うちも始めないとバスに乗り遅れる」と思う人がいるようだ。その一方で、テスラのEVがまた火を噴いた、リーフの中古車市場が暴落[4]というニュースがある。
EVブーム乗って踊った人の言い訳
開発を計画するとき、多くの企業で専門家の予測を頼りにする。それは○○省、○○総研など、権威あるとされるものだ。
「この資料によれば、将来こう伸びるから、今から開発する必要があるんです」
しかし2012年頃盛り上がった第二次EVブームは案の定ブームで終わった。参考にテトロック教授による7つの言い訳[2]を載せておく。
1.予測の前提とした条件が変わった。
2.予想外の事態が起こった。
3.ほとんど紙一重で間違った。
4.今回は予測したとおりにはならなかったが、予測の基本は間違っていない。
5.そもそも政治問題は複雑で簡単に予測がつかない。
6.良い間違いだった。
7.確率の低いことが奇跡的に起こった。
このような言い訳は、為替相場の取引で失敗したFXトレーダーからも聞かれる。
同教授の調査によれば、専門家の予測精度はチンパンジーのダーツ投げと大差ないという[1][3]。人は右肩上がりのトレンドを見ると、それが今後も続くように錯覚し勝手な予測線を描いてしまう。それがそもそもの間違いだが、どーしてもそれをしてしまう。
第二次EVブームの時、当サイトでは「リスクが高い」と注意を呼びかけた[6]。EVのポテンシャルは、そのときから何も変わっていない。
全個体電池が量産できれば普及が進む、そう考えている人もいるようだが、バッテリの性能や価格は、たくさんある課題の一部に過ぎない。
少なくとも、EVに関する周辺含めた技術的な見通しが整わない限り、だれがどんなに騒ごうが決して進まない。今回もブームで終わる。と、私は予測している。
ブームに対する対処
ブームに踊ろうとしている人をみかけたら、それを手伝ってあげるのが正しい行動の一つ。それも、自分で持ち出ししないで。
国や企業、自治体から可能な限りお金を吸い取って手助けをし、雲行きが怪しくなったら、さっと引く。それが低リスクでブームを乗り切る賢い方法の一つだ。
無視され続ける消費者の視点
どんなにEVを作っても、普及を促進しようとしても、消費者に買ってもらわなければ何も進まないはずなのに、いつもそこの視点が抜け落ちている。その情報は簡単に得られる。自分の奥様、もしくはご近所のおばさんに、
「こんな仕様のEVが出たら買いますか」
と聞くだけ。ちなみにうちの妻の反応は、
「えー?そんなもの要らない」
だった。その理由はとてもシンプルなもの。それが普及のために解決すべき本当の課題のはずだ。
「そこは改善されるから・・」「でもEVって○○でしょ、だからイヤ!」
主婦にヒヤリングすると、充電ステーションの拡充がまったくの見当はずれだとわかる[5]。国や企業に都合よく作られた論理は主婦に通用しない。主婦を納得させるプランを示せない限り、EVが増えることはまず無いだろう。
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