「植木鉢と園芸土で生ごみ処理ができる」そんな話を聞いたのが1999年頃。私はこれに興味をもち実際やってみた。しかし結果はダメだった。自治体でも家庭の生ごみ処理を推奨している所があるが、トライした人のほとんどが破綻していると思う。
なぜ家庭の生ごみ処理は破綻してしまうのか。今回この原因を究明して一つの結論を導いたのでご紹介する。
家庭の生ごみ処理の方法には何があるか
生ごみ処理の方法には、物理処理(加熱乾燥、破砕して下水に捨てる)、生分解処理(バイオ式、ミミズ式)、化学処理などがある。バイオ式ではバクテリア、菌類がゴミの分解を担う。
・加熱乾燥式
一般家庭でトラブル少なく運用できる。乾燥式の家電が市販されている。この処理機の問題は電気代がかかること。「ゴミ」のためにお金を支払うことに抵抗を感じる人は少なくないと思う。
・バイオ式
ランニングコストがかからないが、バイオ式の家電は高価。ホームセンターに行くと生分解処理でコンポストを作るための様々な道具が販売されている。値段も数千円と安くランニングコストもかからない。
・ミミズ式
オーストラリアやアメリカではミミズを使った生ごみ処理が普及しておりWorms.comに様々な商品がある。一部は日本に輸入販売されているが高価。国産処理機も少数だがある(金子みみずちゃんの家 )。
ネットにミミズ処理の具体例を見ることが出来る。ミミズ処理は簡単な容器さえあれば誰でも始めることができ、そこそこ成果を得られるようだ。
ネットの情報によれば、ミミズ式には次のメリットがあるという。
・バイオ式が苦手とする炭水化物や水気の多いもの(スイカなど)を効率よく分解する。
・バイオ式でほとんど処理されない紙類(セルロース)を分解できる。
・紙類の投入によって分解に適した環境(C/N比)を維持しやすい。
・小型の容器で高い処理効率を実現できる(ミミズを密集させても効率に影響しない)。
・匂いが少ない
バイオ式で苦手となる水気の多いもの(スイカ、メロン)、炭水化物(ご飯、うどん)、セルロース(ドリップペーパー、紙くず)を分解する。バクテリア分解との相乗効果も期待できる。
ゴミ処理ビジネスの現実
ゴミ処理ビジネスに参入した事業者は、厳しい結果に遭遇したと思う。
その原因は2つある。一つは、「ゴミ」のためにお金をかけてもいいと思う人が少ないこと。ゴミ処理に使う道具はランニングコストゼロが当たり前、イニシャルコストもゼロに近いことが求められる。装置が数万円もしたのでは、売れない(普及しない)のは当然かもしれない。
もう一つは、処理物が価値を生まない点がある。コンポストが得られても趣味(園芸)で消費する以外無く、必要以上のコンポストは再び「ゴミ」になってしまう。そしてその処分は、処理前の生ごみより厄介な場合が多い。
ゴミ処理にお金をかける人はいない
家庭の生ごみ処理にはいろんな方法があるが、これも結局、ゴミの為に高価な機材が必要だったり、ランニングコストがかかる方法は、受け入れられないだろう。
家庭の生ごみ処理は、ホームセンターなどで安価に入手できる資材を使って成立しなければならない。以後、この方針で検討を進めていくことにした。
生ごみ処理の実験と結果
実験方法
1.バイオ式
植木鉢などのプラスチック容器に園芸土、活性炭などを入れてゴミ処理を行う。具体的な方法は文献1を参考にした。
2.ミミズ式
底に小さな穴がたくさん空いた園芸用の樹脂製トレイに園芸土とミミズを入れ、これを2枚重ねで運用した(トレー式という)。
上のトレーにエサとなる生ごみを入れるとミミズが上に移動し、下のトレーにコンポストが残る仕組み(キャノワーム[2]が有名)。
ミミズは釣具店からエサ用のものを入手した。
<参考文献>
1.植木鉢を利用した簡易生ごみ処理 豊橋技術科学大学 環境・生命工学系(リンク切れ)
2.キャノワーム
ミミズコンポスト
アメリカミズアブの対策
実験結果
1.バイオ式の結果
活性炭と園芸土を菌床に使った生ごみ処理実験を2000/2~2001/1の期間実施した。下のグラフは植木鉢などの容器に活性炭と園芸土を入れ、生ごみ処理を実施したときのデータ。オレンジとブルーの差が、消滅させたゴミの量になる。
どちらの結果もうまく機能したが、これを実現するための実際の作業は大変で、匂いや衛生面の問題もあって一般家庭での運用は難しいように感じた。
(1)活性炭菌床の実験結果
2000/11/24実験終了。処理日数281日、生ごみの総投入量は、18.8Kg、重量の増加は4.5Kg。1日平均投入量は、18.8/281=0.067Kg、減容率は、100×(1-4.5/18.8)=76% だった。
バイオ式では少量ずつゴミを与えてバクテリアを増やしていく「立ちあげ」という作業が必要になる。この立ちげ期間は、2月下旬からスタートして約3週間だった。
活性炭の容器はポンパーを流用しており、角の部分が攪拌しずらく下半分が攪拌できない状態だった為、ベタベタに湿った状態で固く締まっていた。これが減容率が76%にとどまった原因とみられる。
グラフに出ている2Kg程度のオフセットは、この蒸発しない水分が原因とみられる。
(2)園芸土菌床の実験結果
2001/1/6実験終了。園芸土菌床の処理日数259日、生ごみの総投入量は、27.0Kg、重量の増加は、3.6Kg。1日平均投入量は、27.0/259=0.104Kg、減容率は、100×(1-3.6/27.0)=87% だった。
4月からスタートした結果、立ち上げ期間というものは特に確認できなかった。
途中、処理物が増えてきて11/24(処理を開始して216日目)に1.3kg取り出している。
2.ミミズ式の結果
園芸用トレイを使った実験を2009/11~2010/6の期間、専用容器を作った実験を2010/6~2010/9の期間実施したが、いずれも破綻した。原因は、アメリカミズアブ(幼虫)の大量発生と、ネコによる荒らしだった。
ミズアブの幼虫が沸いて台無しに
処理物の腐敗臭がミズアブを引き寄せ、卵を産み、幼虫(ウジ)が生まれる。幼虫の生命力は強く、一度発生すると捕っても捕ってもきりがなく、駆除が困難だった。ミズアブの幼虫が増えると、処理物が腐敗臭の強いベタベタなものに変わった。
ネコに荒らされる
匂いなどにより処理物がネコに見つかると、以後、毎日のように巡回に来る。容器をひっくり返し、重石をどかし、蓋のロックをこじ開ける。ネコ対策に余計な手間と費用がかかった。
ミズアブやネコ対策の為に蓋やネットなどのガードしっかりすると、今度は毎日のゴミ投入がやりにくくなり実用から遠ざかった。ミズアブの幼虫はミミズ処理にとって邪魔なものだが、生ごみの分解については素晴らしい能力を見せた。
今回の実験では生ごみを選別しなかったので、これが破綻の原因かもしれない。野菜くずや紙類(ティーパック)、コーヒーかすなど植質のものに限定すれば機能した可能性がある。
実験でわかった問題点
1.バイオ式の問題点
・強い悪臭
・小バエがたかる(作業時に鼻から吸い込む)
・ダニやウジがわいて気持ち悪い
・菌床の攪拌作業が大変
・不衛生(攪拌するたびに菌床が手に付く)
・維持が管理に手間(菌床の定期的な交換が必要)
・能力が安定しない(季節によって大きく変動)
・処理物の再利用が難しい(二次発酵に時間がかかる。廃棄物として処分不可)
・ネコに荒らされる
この結果は、生ごみ処理を始る動機となった問題の多くを解決していない。また、失敗して出来た処理物は捨てるに困り、私はこっそり山に埋めに行った経験がある。このような失敗を経験すると、ほとんどの人はやめてしまうと思う。
2.ミミズ式の問題点
・処理物とミミズの分離が難しい(構造的な仕組みで解決する必要あり)
・ミミズが気持ち悪い
・器具の自作が面倒(市販品は高価)
以下はバイオ式と共通する。
・小バエがたかる
・ダニやウジがわいて気持ち悪い
・能力が安定しない
・処理物の再利用が難しい
・ネコに荒らされる
適当な容器があればトライできるが、出来た処理物とミミズの分離が難しいので、何らかの器具がないと実用にならない。ミミズ処理では処理物がベタつきやすく、ミズアブの幼虫が問題になりやすかった。
ミミズ式は屋内で実用になる
上記の小バエ、ダニ、ウジ、ネコなどの共通課題は、処理を屋内に移すことで改善できる。屋内運用の問題は「匂い」だが、ミミズ式は問題ないらしい。ミミズ処理がうまく機能しているとき「森林」のような匂いがするという。
処理器が屋内にあると外にゴミを運び出す手間も省けて便利である。ミミズ処理をシステムキッチンに組み込んだ商品も市販されている(FALTAZIのキッチンコンセプト「EKOKOOK」)。
まとめ
以上の結果を表にまとめた。
表1 生ごみ処理のまとめ
処理方式 | 器具 | イニシャルコスト | 維持管理 | 特徴 |
加熱乾燥 | 屋内家電 | 数万円 | 電気代がかなりかかる | 簡単で誰でもできる 水分の多いものは向かない |
バイオ(好気性) | 屋内家電、もしくは植木鉢 | 数千円~数万円 | 定期的な攪拌、 水分管理が必要 冬場の屋外は ビニールハウス必要 |
難しく破綻しやすい 水分、塩分の多いものが苦手 |
バイオ(嫌気性) | 密閉容器 | 数千円(EM関連商品) | 気密処理で成否が決まる | 気密維持が難しく破綻しやすい |
ミミズ | 屋内トレー式、 フロースルー式など。 |
ミミズ込みで数万円~ | ミズバエ対策と 水分管理が必要。 |
トレー式はローテーションが 重労働 屋外では維持困難 魚、肉類は処理できない きわめて良質なコンポストが 得られる |
ミズバエ | コンポスト容器 | 数千円~ | 不要(余分な水分は 地面に抜ける) |
メンテナンスフリー 生ごみなら何でも処理できる |
実用になりそうなものに緑色を付けた。以下それぞれについて説明する。
ミミズを使った屋内トレー式
マンション・アパートなどに住んでいる人が選択できるのは屋内のミミズ処理のみ。
室内ではトレー式が使いやすいが、置き場所をとるうえ、トレーの入れ替えが面倒で、入れ替えの際、周囲が汚れる欠点がある。投入する生ごみは野菜くずやティーパック、コーヒーかすなど植物質のものに限定する必要があるようだ。
ミズバエを使ったコンポスト容器
ミズアブの幼虫はミミズ処理の実験で対策に苦労した邪魔者。厄介な存在だが、利用するとなればこれほど優秀な分解者はないかもしれない。
彼らは好き嫌いせずにあらゆるゴミを高速に分解する。水分の多い果物や魚・肉なども問題なく処理できる。生命力が強く劣悪な環境下でよく生き延びる。
問題は強い腐敗臭、気持ち悪い見た目、処理物の再利用が難しい点(悪臭の塊にしかならない)などがあるが、コンポスト容器をかぶせてしまえば問題ないと考えられる。
コンポスト容器はバケツをひっくり返したような形をしていて、上に投入口があるだけのシンプルなもの。掘り下げた地面の上に置いて、ひたすらゴミを放り込むだけである。
水分管理が不要であり、冬は容器が保温の役目もする。庭にスペースさえあればすぐに始めることができる。
生ごみ処理の結論
屋外でコンポスト容器を使って自然に沸くウジ類で処理をするのがベスト
結局、昔からあるこの方法がベストという結論である。それと、生ごみ処理を実際始める場合は家族の同意も必要だ。
「不衛生」「気持ち悪い」「近所に迷惑がかかるのでは」
そんなことを気にする人が一人でもいる場合、生ごみ処理は続かない。
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ミミズを使った生ごみ処理
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参考1:植木鉢と園芸土を使った生ごみ処理の方法(やってみたい方へ)
マンションのベランダではこの方法しかないので、今までの実験から得た創造の館流ノウハウをご紹介する。但し、ゴミ処理して出来たコンポストは捨てることができず、園芸用途などで自己消化するしかない。後々のことをよく考えて実施してほしい。
植木鉢の台数
家族の人数に応じて次のようにする※。
1=3台(セットアップ2台)、2名=4台(セットアップ2台)、3名=4台(セットアップ2台)、4名=6台(セットアップ3台)。
セットアップしない植木鉢は二次発酵に移行した時の予備になる(後述)。
※私の家(大人2名)から出た生ごみの総量は、4/22~翌年1/6までの259日間で約39Kgだった。ここから、1日に出る生ごみの平均は、39/259=0.15 、すなわち、約150g/2名という目安が得られる。
この負荷量に対し、園芸土と活性炭の二台で処理をした結果、夏場は分解が早く、つねに片方が飢餓状態になっていた。冬場は菌の活動が極端に落ち、二台交互に入れる必要があった。
植木鉢の大きさ・形状
12号(菌床10L)が基準。小さいと攪拌時に菌床があふれやすく、これ以上大きいと菌床の攪拌が大変になる。形状は丸形で、入口が広くて底が浅く、底の部分が丸みを帯びているものがよい。
角があるとそこで菌床が締まって攪拌がやりずらくなる。攪拌に使うスコップは細く長いものが使いやすい。
スコップ
混ぜるために使う。ゴミを突いて分断しやすいよう、金属製がよい。
菌床
ごく普通の園芸土(花、野菜の培養土)を使う。安いもので良い。活性炭、バーミキュライト、園芸土で実験してきたが、園芸土がもっとも扱いやすく、残渣が増えてきたときの状態も良いようだった。
セットアップ
植木鉢に園芸土を入れるだけだが、最初は分解に働くバクテリアの数が少ないので、少量ずつゴミを与えて増やす「立ちあげ」という作業が必要になる。冬場はバクテリアの働きが鈍いので、立ち上げが難しい。始めるのは4月以降がよい。
園芸土には最初から菌がいるので、菌を購入する必要はない。個々の環境で自然に増えた菌がベストであり、菌を買って入れても、それが増えたり働く保証はない(たぶん無駄になる)。
運用方法
・植木鉢を屋外の日当たりの良い暖かい場所に置く。 蓋をして雨に濡れないようにする。
・生ごみが出たら、複数の植木鉢に分散するように入れる。
・生ごみを入れたら混ぜる。下の方に水分が溜まりやすいので、天地反転させるイメージで混ぜる。
菌床に粘り気が出て攪拌が重くなったら、新しい植木鉢に新しい菌床を入れてスタートさせる。
この時、いままで処理してきた植木鉢の菌床を新しい植木鉢に入れてよく混ぜる(菌を移すと立ち上がりが早い)。
古い方の植木鉢はビニールなどで覆ってそのまま放置し、二次発酵用させる(しばらくすると堆肥になる)。
運用上の注意
・水分は下に溜まるので、深い部分が次第に掘り返しにくくなる。ここでちゃんと混ぜないと減容率が悪くなる。
・スイカやメロンなどの水分の多い物は表面に置いて菌床を軽く振りかける。菌床の中に埋めてしまうと水気の蒸発が悪くなり、破綻の原因になる。
・紙類は分解せず攪拌の邪魔になるだけなので入れないこと。ティーバックなどは破って中身を取り出す必要があるが、面倒ならそのまま燃えるゴミとして出してしまってもいいだろう。
・効率の落ちる冬場は日当たりと風通しの良い場所に置く。
参考2:ミミズ専用の容器を作る (2010/6/13)
オーストラリアではミミズを使った生ごみ処理が普及しており、そのための器具が数多く市販されている。どれも基本的に、ゴミの投入→分解→処理物の回収 といった流れがスムースに実行できるよう工夫されている。流れの方向には3種類あり、それぞれ縦型(フロースルー)、横型(水平)、サークル型が考案されている。
縦型
底に網を張った容器を3~4段程度重ねたもの(トレー式)と、容器の底にワイヤーや金属棒などを1.5~数センチ間隔で並べたものがある。
どちらも上からゴミを投入して下からコンポストを回収する点で共通する。前者は一番下の容器を引き抜く必要があるが、後者は下に溜まったコンポストをクマデのようなもので掻き落とすだけでよい。
横型
長方形容器の中央をミミズが通れる仕切りを設けて2分割したもので、一方にゴミを入れ他方をコンポストの熟成エリアにする。処理エリアが2箇所しかないため、熟成したコンポストを得るためには大きな容器が必要になる。
サークル型
やや大型の正方形もしくは円筒形の容器を使ってゴミを入れる場所を少しずつ回転していく方法で、1周する間に最初のエリアに入れたゴミの分解が完了してコンポストを得る。
上記の中で最も実用に近い形は「縦型」で、容器の底にワイヤーを張った構成がある。この構造の商品に「エリミネータ」があったが現在製造していない。しかしこれを模倣した自作記事をネット上で見ることが出来る。
処理に使うミミズは釣りえさ用ではなく、シマミミズをが良いとされる(相模浄化サービスが取り扱っています)た。
実例
縦型、横型、サークル型をそれぞれ試作したのでご紹介する。
1.縦型の例
縦型の試作機。70Lのダストボックスを使用、底部のワイヤーは上端部から47cmのところに設置、ステンレス線を1.5cm間隔で並べてある。冬場の活動が安定するよう内壁に保温材を貼り、蓋には気密パッキンを追加して小バエが入りにくいようにした。
2.横型の例
横型の試作機。中心のセパレータはJoto基礎換気口。密閉に近くなるため蓋に通気穴を追加。
3.サークル型の例
2台の園芸ポットを使用。上部の穴は透湿防水シート(防草シート)で覆っている。中央に見えるのはハエトラップだが、完全に防ぐことはできなかった。
密封式ミミズ容器の可能性
私が子供の頃、梅酒を造るためのガラス瓶にあまった釣りえさ(ミミズ)を放り込んで密栓し、物置に仕舞い込んで1年くらい忘れていたことがある。
それを見つけたとき、容器の底部1/4にどろっとした褐色の液体と、たくさんの生きたミミズがいることを確認した。驚くことに、彼らは気密容器の中で世代交代しながら生きていたのである。
ミミズコンポストの製作記事には例外なく「換気のため穴を開けなさい」とあるが、この経験からすると本当にそれが必要なのか疑問に思えてくる。換気穴は小バエを呼び寄せてウジがわく原因になり、ウジがわくとベタベタになってしまう。この小バエの対策がとても困難で、ミミズ処理が破綻する大きな要因の一つになっている。
ミミズが住む土中には元々空気が少ない。換気が必要としても、ほんの僅かで良いのではないか。
ミミズ容器は完全密封でいいかもしれない。ゴミを入れるために一日1回、蓋をあけることでミミズの呼吸に必要な酸素くらい十分確保できそうだ。普段密封していれば小バエなどの侵入を防ぐことができる。
これがうまく機能するなら、屋外のミミズ処理が実用になるかもしれない。機会があれば検証してみたい。
バイオ式生ごみ処理の実験と経緯
以下はバイオ式生ごみ処理の実験経緯です。
ササラダニが大量発生 (2000/7/1)
園芸土、活性炭共にササラダニが大量発生している。特に園芸土の方は、粉をまぶしたように無数のダニが発生し、彼らのおかげで減容は著しく早い。生ごみを適当に投入しても翌日にはほとんど形状がなくなっている。
菌床の温度は昼間で30℃を越えており、この環境ではさすがにウジは少ない。
バーミキュライトの菌床は実験を中止した。
ネコに荒らされる (2000/5/12)
最近、朝見るとフタの波板がずれている。不思議に思っていたある日、菌床をほじくり返した穴を発見した。
さては動物の仕業か?と考えていたところネコを目撃。このネコ、毎晩1キロもあるペッドボトルを動かしてフタを空け、中のゴミを漁っていたようだ。
フタがすれないよう重石を追加してみたが、効果なかった。ネコも必死なのだろう、次第に知恵と根気の勝負になってきた。
容器を壁際に寄せて蓋が動かないよう、衝立を立ててみた。朝見ると若干動かした形跡があるものの中身は無事。ふと、こうまでしてゴミを守る必要があるのか、疑問に思えてきた。ネコのような動物を利用するのも、ゴミ処理の一形態かもしれない。
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バーミキュライト中止、園芸土スタート (2000/4/22)
バーミキュライトの実験を中止し、使っていた容器に園芸土(花、野菜の培養土)を入れて再スタートした。
減容の結果は次の通り。2月下旬からスタートして立ち上げに約3週間程度かかった。
悪臭が気になり外に移動 (2000/3/9)
菌床の温度が上昇すると同時に室内に臭いがこもりだした。室内に置いておけなくなり、外に出すことに。
外に出すと防虫、保温、通気の3つについて気づかいが必要になる。ビニールハウスがベストだが、ゴミのためになかなかそこまでのものを設置できない。
ビニールをかぶせる方法もあるが、脱着が面倒なのでエンビの透明波板で代用した。重しは光を遮らないように角形のペットボトルに水を入れたものを用意した。
菌床から湯気が出た! (2000/2/24)
活性炭菌床はバクテリアの自己発熱により30℃を越え、スコップで掘り返すと湯気が立ち上るようになった。
バーミキュライトの方は23~25℃で湯気が立つ状態になっていない。
白熱球による保温が機能したせいかもしれない。バーミキュライトの方は数日遅れて保温を開始したせいか、温度が低い。
活性炭とバーミキュライトで再スタート (2000/2/18)
腐葉土を使ったこれまでの実験から次のことがわかった。
・生ごみを投入していると次第に固まりの集合体になり、内部が嫌気性になる。
・次第に密になって通気が悪くなり、水分の蒸発が悪くなる。
・攪拌していると底の方がカチカチに固まってしまい、嫌気性になる。
・粘土分を含み、攪拌に力が必要。
これらの結果から、菌床は次の特性が求められるようだ。
・粒の大きさが適度で通気性が良い。
・粘土分を含まず、固まりにくい。
・水分が多いときは吸い込み、少ないときは排出する(水分調整機能)。
・比重が軽く攪拌がしやすい。
・多孔質で保温性に優れる。
・消臭機能。
このような点を踏まえて、今度選択したのが活性炭とバーミキュライト。バーミキュライトはひる石を加熱膨張させたもので、新品のそれは理想的な特性を持つが、水分を多く含むともろくなるのが欠点。
設置場所は「室内」。冬場は室内でスタートした方が、早い立ち上がりが期待できる。
今回は5.5Wの電球を厳重に防水加工したソケットに差し込んで使用した。
菌床にウジが・・ (2000/2/12)
ボトルヒータで水温を35℃にセットして保温を続けていたが、熱伝導が悪いせいか、菌床の温度にあまり変化がないので中止した。
菌床の温度は朝方10℃、日中20℃と安定しない。中途半端に暖かくなったせいか、外に出している間、蠅がたかり、とうとうウジだらけになってしまった。
ここで実験を中断し、リセット。
いままで投入した生ごみの量は約2Kg、現在の重量は初期重量+1Kgなので、1Kgの生ごみが消滅した勘定になる。しかし、分解があまりにも遅い。やはり、バクテリアの活動に温度の条件が重要のようだった。
ボトルヒータを使った保温を開始 (2000/1/30)
最近寒い日が続く。日中屋外に出しておくと水分が飛ぶが、そのまま屋外に置くと夜間に結露して増量するため差し引きゼロになった。
菌床の温度は13℃前後で外気温よりはかなり高いものの、絶対的に低いためバクテリアの活動が鈍いようだ。
そこで、ワインボトル&アクア用ヒータを使って保温を開始した。
ワインボトルに水を入れ、センサ内蔵ヒータを入れて写真のように菌床に埋めておく。温度設定は、とりあえず35℃とした。空焚きが怖いので、プチプチの破片を入り口に詰めて水分の蒸発を防いだ。
菌床の保温を検討 (2000/1/22)
菌床の水分が増えてきたので外で新聞紙に広げてみた。そこそこ分解されていて、入れたはずの生ごみが目立たなくなっている。
ここ数日寒い日が続いているが、南側のベランダに出しておくと表面の水分が飛んで乾燥するので、天気の良い昼間は外に出し、夜は室内に入れる形で運用している。
しかし依然、分解が遅い。分解が活発になると温度があがるため、冬にヒーターは必要ないらしいが、それはバクテリアの分解が良好なときの話。セットアップして間もないときは保温してやらないと立ち上がりそのものに時間がかかるようだ。そこで保温を考えてみた。
(1)小さい素焼きの植木鉢を埋めて、豆炭を燃やす
温度が高くなりすぎて菌床がコゲてしまった。
(2)ペットボトルに熱湯を入れて埋めておく
いわゆる湯たんぽだが、すぐに冷めてしまいあまり効果がなかった。
(3)水を入れたボトルを埋め込んで、アクア用のヒータを入れて温調する
15~35℃の任意の温度で一定に保つことが出来る。水が蒸発するので空焚きのリスクがある。
(4)容器を保温する
プチプチを容器の周りに巻くだけ。
いろいろ考えた末、まずは(4)を実施して様子を見ることにした。
ついでにファンを設置し、強制的に空気を動かして水分の乾燥を助けるようにした。具体的な運用法はまだ決まっていない。
写真の体重計は重量のモニタに使用しているもの。
分解速度が遅い・・ (2000/1/17)
菌床の温度はだいたい18℃、気温より若干高い温度で安定している。
生ごみも一応分解されてはいるが、分解速度が遅い。菌床の水分も室内ではあまり飛ばないため、湿り気は徐々に増えている。これはやっぱり、ヒータがいるんじゃないだろうか。いまの分解速度では、とても連続投入は出来ない。
臭いは相変わらず。菌床に鼻を近づけない限りいやな臭いは感じられない。
気温より温度が高くなってきた (2000/1/1)
この生ごみ処理では、少量ずつゴミを与えて分解に寄与するバクテリアを増やす「ならし運転」(立ちあげ)という作業が必要になるという。
始めた当初、外気温と菌床の温度差がなかったが、菌床の方が1.5℃の温度が高くなった。これは、バクテリアが増えて、分解良くなってきたせいかもしれない。
同じものを入れ続けると分解菌が偏る可能性がある。最初はいろんなものを少しずつ入れて、できるだけ多くのバクテリアを増やすとよさそうだ。以下は、今まで入れた主なゴミのリストになる。
茶殻、白菜、キャベツ、なす、カニの甲羅、エビの殻、豆腐、ブロッコリー、鶏の骨がら、魚類、こんぶ
朝夕出る生ごみの中から出来るだけ多くの種類を少しずつ入れて、入れたときに菌床をかき混ぜて空気をよく含ませた。
今は寒い季節なので、菌床は室内のできるだけ暖かい場所に置いている。菌床に鼻を近づけると、若干の腐敗臭を感じる。臭いがこの程度で済めば実用になる。
腐葉土を使った処理を開始 (1999/12/24)
植木鉢と園芸用の土で生ごみが処理ができる[1]、そんな話を耳にした。生ごみを分解するバクテリアは土の中にいて、別途用意する必要が無いという。そこで早速実践してみることにした。
容器は植木鉢ではなく、失敗したポンパーの容器を再利用。菌床は園芸土ではなく「腐葉土」。設置場所は「室内」。
分解は好気性のバクテリアなので、ポンパーの蓋は撤去した。
EMポンパーを使って破綻 (1999/12/24)
ホームセンターEM菌を利用した発酵資材(EMボカシ)が売られている。EM菌は嫌気性なので、味噌作り同様、空気に触れさせない徹底した気密処理が求められるが、このことはあまり知られておらず、EM菌を利用した処理器具も密封が徹底できる仕組みになっていない。そのため、この種の器具を買った人のほとんどが失敗していると思う。
写真は クリエートEM ポンパーという商品。容器にバクテリアと生ごみを入れて、生物分解だけで処理する商品。価格は千円ちょっと。生ごみ家電にくらべると安価で電気を使わない。
生ごみを分解するバクテリアは嫌気性。そのためこの容器は蓋が密閉できる構造になっている。
使い方はポンパーに生ごみを入れて、このマルチパウダーを振りまいてフタをすることを繰り返すだけ。生ごみで一杯になったらそのまま1~2週間発酵させて、園芸用の堆肥ができあがるという。
能書きによると、嫌な臭いはでないことになっているが、実際に運用してみるとすぐに臭いが出始めた。だんだん腐敗臭が強くなって、数週間後には運用に耐えらないほど強くなり、そのまま放置になった。
投入した生ごみは腐敗が進行し、堆肥になるどころか、捨て場に困るほど猛烈な悪臭を放つ廃棄物になってしまった。
およそ半年ぶりにポンパーの蓋を開けてみたところ。中を見るのが怖いので恐る恐るだった。
表面を覆っている白い物はカビの一種。左下に見える四角い物体はお餅。体積は半分程度になっているだろうか。その場にいられないほどの強烈な悪臭を放っていた。
あとで判ったことだが、この商品、ゴミを入れるたびに表面をラップ等で覆って嫌気性の環境を徹底しなければならなかったようだ。これをしないと、ゴミに空気が触れて腐敗する。このことは説明書に書いてない。機会があれば再検証してみたい。
<関連商品>
EMポンパー
ミミズ式生ごみ処理の実験と経緯
以下は園芸用のトレイを利用した実験 (2009/12~2010/6)の結果です。
写真は底部に多数の穴が開いた園芸用トレイで、1枚数百円。適当な隙間を保って複数重ねることが出来る。これを2枚重ねて適当に土を入れ、地面から底上げして底部の通風を確保。上面は半透明のプラスチック板で塞いでレンガで重しをした。ミミズは釣具店で2パック調達。園芸土を基材として使用しスタート。
運用は、上のトレイがゴミでいっぱいになったら上下を入れ替えて新たにゴミを投入する形。ミミズがゴミが豊富な方に移動することで、完成したコンポストとミミズの分離を容易にする狙いがある。これを使って2009/12~2010/6まで半年間運用した結果が次。
ヒメミミズが発生(2009/12)
運用開始1ヶ月で1cm程度の白いミミズ(写真)が見られた。これは元々いたミミズの子供ではなく、ヒメミミズというらしい。
乾燥気味のダンゴに(2010/4)
ゴミ投入が少ないせいか、内部はつねに乾燥気味で底部と枠の周囲は完全に乾いてしまい、中央付近だけやや湿気がある状態が続いた。 バクテリアのみの分解では最終的に粘度になり、乾燥すると硬い塊になるが現状それに近い。ミミズは水分の多い土壌を好み、このような乾燥気味の環 境は辛いようだ。
トレイには穴が沢山あいており、ミミズの脱走を懸念したが乾燥した土壌が障壁となって脱走はなかった。 乾燥土壌ではウジが生きられないらしく、冬場に短期間見られたほかは発生しなかった。
ネコに荒らされる(2010/5)
ネコが重いレンガを押しのけてフタをこじ開ける。レンガを追加してしても効果がなかった。これは以前も経験したことだが、いったんネコの巡回が始まると恒常的に被害に遭い猫との知恵比べが始まる。ネコよけのトゲトゲシートも効果がなかった。
運用中止とまとめ(2010/6)
土壌が団子の固まりになってしまったこと、ネコの荒らし対策に行き詰ったことにより中止した。
ゴミ処理そのもの効果は確かにあるが、バクテリアのみによる分解なのか、ミミズによるものなのか、いまひとつ判然としない。ただ悪臭は少なく、見た目も悪くない。
トレイを上下反転するしくみは土の分離を容易にするためだが、底面の穴が小さすぎてミミズが通りにくいことがわかった。ミミズと土が分離できないと内部の入れ替えができない。粘土の塊で終わる結果になった原因の一つだった。
内部のミミズは健在だが、それとは別にヒメミミズが発生した。半年たった今は細かい毛をまぶした感じで数え切れない数に増えている。釣具店で購入したミミズは増えていて、ゴミを食べている様子はあるが、効率良いとは言い難い様子だった。
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