ケイカル板を外壁に使うのは無理なのか

軒天でよく使われるケイカル板。破風など雨に濡れる所では劣化が著しく使えないとされてきた。今回はこの問題の原因を考え、雨に濡れる場所でも使える方法を検討してみた。

 

ケイカル板とは何か

消石灰、珪藻土、木質繊維などを混ぜて固めたもの。次の特徴がある。

水をよく吸い、乾きも早い(調湿)
燃えにくく、耐熱性が高い
石膏ボードのように粉々に割れることが無い
表面は粉っぽい(両面テープなどは付かない)
塗装が容易
非常に安価(サブロクで千円前後から)
雨水で浸食する

水をよく吸い、乾きが早いことから高い調湿作用がある。屋外では軒天など雨が直接かからない場所で使われる。

 

なぜ雨がかかるとダメなのか

組成の中の、消石灰(水酸化カルシウム)が原因。二酸化炭素が溶けた弱酸性の雨水がこれに触れると、白い炭酸カルシウム(石灰岩と同じもの)に変化する。そのため、普段雨に濡れる所では白くなり、膨れが出るといわれる。

水が入らないよう、完璧に塗装してあれば大丈夫、といえるが、完璧はありえない。クギの隙間や微細な傷など、わずかな部分から雨水が侵入し、塗装の内側を浸食して被膜が浮いたり破れる。これが、水のかかるところでは使えない、とされる理由。

 

それでも屋外で使いたい!

何らかの事情で、どーしてもケイカルを屋外で使いたい場合がある。シーラー[1]などを塗ればいけるのか、これを実験で確かめる。

 


 

実験検証

ケイカル板の小片にいろんな工程で塗装を行い、5%クエン酸溶液に1週間浸漬してみた。これは数十年分の雨水濡れに相当すると考えられる。また、変性シリコンとの接着性も調べた。

材料

シーラーはアサヒペンの水性シーラー、塗料はアサヒペンのバリューコート(水性)を使った。また、油性塗料(ラッカー系)も用意した。

水性シーラー

5%クエン酸に1週間浸漬して結果を見る。

ケイカル板をクエン酸に浸漬している様子

 

結果

表1ケイカル板の塗装法案によるクエン酸浸食の結果
×:塗り回数、+:上から塗り重ね

  結果

コーキング
接着性

備考
無塗装(N)  
水性シーラー(S)  
S×2 ×  
S×3 ×  
水性塗料(T) ×  
S+T ×  
油性塗料 × 裏面は△
       

ケイカル板には表と裏がある。ツルツルした方が表、ざらざらした方が裏。全般的に裏の方がダメージが少ない。

浸漬後の様子 浸漬後の様子

浸漬後の様子

左:シーラーのみ(S) 右:S+T

水性塗料だけを薄塗り3回

20%に薄めた水性塗料だけを薄塗り3回

浸漬後の様子

裏面 左:シーラー(S) 右:S+T

浸漬後の様子

左:無塗装 右:油性(ラッカー系)

 

見た目のダメージは無塗装が一番少なく、表面に何か塗ると下地から膨れが出て外観が著しく悪くなることが判明。ただし、シーラー1回塗りは無塗装とあまり変わらなかった。

シーラーも塗り重ねるとダメになる。重ねると表面に被膜を作ってしまうためと見られる。表面に被膜を作らず通気性があったほうが見た目のダメージが少ないようだ。

油性塗料のサンプルは少なく、裏面は問題ない結果だったが、追加検証が必要。とはいえ、表面のダメージが少なく見えても端面は例外なく膨れる。基本、水濡れするところでは使えない材料である。

浸漬後の端面

端面の様子

変性シリコンなどのコーキングは粉っぽい状態の無塗装が最もよく密着した。

 

結論

 ケイカル板は水が浸みたら劣化する。完全防水すれば雨に濡れる外壁や破風でも使えるとみられるが、手の届かないところで完璧防水を求めるのは困難。ここはやはり、直接水のかからない軒天に使用をとどめるのが無難。

 表面に被膜を作ると膨れの原因になる。軒天に使う場合でもすぐに乾くよう、表面に通気性を残す形で塗装するのがよさそうだ。

 

<参考購入先>
ケイカル板 断熱用途に小片が売られています
シーラー

<参考文献>
1.ケイカル用含侵シーラー