スポーツカーの選び方~疲れるクルマはスポーツカーではない

クルマのことをよく知らない人に、スポーツカーって何?と聞くと、「加速のいいクルマ」「スピードの出るクルマ」などという返事が返ってくることが多い。これはあまりにも寂しい認識だ。そこで、どんなクルマがスポーツカーといえるのか、おさらいしてみよう。
スポーツカーに関係する要素には次のものがある。

1.各操作入力に対する応答の早さ
2.各操作入力のリニアリティ
3.エンジン音、排気音(エキゾーストノート)
4.スポーツムードを演出するデザイン
5.動力性能(パワー、トルク)
6.車重、慣性モーメント
7.スタビリティ
8.快適性
9.ライフスタイルの演出

スポーツカーにはレース(競技)をするためのクルマという意味もあるが、本記事では、レースをしない(公道しか走らない)一般ユーザ向けのクルマ(ロードゴーイングカー)を対象にしている。1~4は「スポーツフィール」を形成する要素で、5~7は「スポーツ性能」に関する要素になる。「スポーツフィール」と「スポーツ性能」の要素をバランスよく備えているクルマは、自分の意のままにクルマを操れる「人馬一体感」があって、運転そのものを楽しいと感じさせてくれる。
 スポーツカーと混同されすい言葉があるので、以下に整理する。

  • GTカー  GT=「グランドツーリング」「グランツーリスモ」のことで、長距離を高速かつ快適に移動できるクルマ。例:レガシィ、ステージア。レース用のクルマを指す場合もある。
  • スポーティカー  外見だけをスポーツカーに似せたクルマ。ちょっとスポーツな味付けをしただけのクルマ。例:セリカ
  • レーシングカー  レースをするために作られたクルマ。

上述した1~7の各要素について、以下に詳しく説明する。

 

操作系の応答とリニアリティ(1,2)について

 アクセル、ブレーキ、ステアリングなどの操作に対する応答や、リニアリティが高いと、クルマを自分の意志通りに操れる性質が高くなる。こういった特性はレベルの高いクルマだけが備えているものなので、ファミリーセダンや軽自動車しか乗ったことのない人にはピンと来ないかも知れない。 
 アクセルフィール
 アクセル開度に対して出力がリニアなことが問題になる。ちょこっと踏むだけでグワっと出力が出るもの、最初の開度が大く踏み込んでもほとんど変わらないものは好ましくない。
ブレーキフィール
 踏力に対して制動がリニアなことが問題になる。ちょっと踏んだだけで強い制動がかる(カックンブレーキ)、フワフワで感触に乏しい、強めに踏むとすぐABSがかかるものは好ましくない。良いものはブレーキパッドがディスクに触れる微妙な感触まで足で感じ取ることが出来る。
ステアリングフィール
 センターから切り始めたときの応答、途中から切り増ししたときの応答、反力が問題となる。ステアリングフィールは、パワーアシスト機構だけでなくサスペンション、タイヤ、車体などすべてを総合した結果として表れる。
 センターの遊びが大きい、ステアリングがやたら軽く手応えが無い、直進性が強すぎるものは適さない。重すぎたり、軽すぎるものは好ましくない。良いものは、タイヤの接地感や路面の感触までステアリングを握る手のひらに感じ取ることが出来る。
シフトフィール
 MT,ATがあるが、ATはパワーロスが大きく応答も鈍いため好ましくない。ATやCVTのマニュアルモードは応答が遅いうえにタイムラグが大きく、使えないものが多い。
 MTのシフトフィールは、ゲートの入りやすさ、入れた時の感触、音、レバーを動かした際のゲートの滑らかさが問題になる。段数は5段がベスト。6段は操作は煩雑になり、構造が複雑なため入りが渋いものが多い。レバーやストロークには適度な長さがあって、短いほどいいという物ではない。短すぎると操作に余計な力が必要になり、入りも渋くなりやすい。
 シフトフィールは「クルマを操る」実感を得る上で重要な要素になる。どんなに立派なシフトも応答が遅かったり入りが渋いと楽しさが半減してしまう。
クラッチフィール
 踏力が問題で軽めがよい。やたら重たい強化クラッチは疲労に繋がる。強化クラッチはジャダーが出やすいこともマイナスポイント。
ハンドブレーキフィール
 引くときのラッチ音、解放時の音と剛性感に注目してほしい。シルビアやスカイラインなどの日産車は解放時に「キン!」という小気味よい金属音がしてなかなかよい。

3.心地よいエンジン音、排気音(エキゾーストノート)について

 エンジンフィールについては、回転数に対するトルクの出方の均一性(谷がないか)、高回転での音色や音量の変化が問題になる。ターボはその性質上、低回転のトルクが細くトルクの出方も不自然になりやすい。この点NAの方が良いが、ターボのそんな特性も慣れると気にならなくなる。
 回転をあげるとエンジンが苦しそうな音色を出したり、うるさいほど音量が増大し不安を感じさせるものは適さない。  エンジンの方式や気筒数は無関係と言っていい。多気筒が必ずしもよいとは限らない。BMWのように4気筒でも文句なくいい物が存在する。
 排気音は室外の音を良く聞かせるオープンカーにとって重要となる。この点、ロードスターはよく出来ている。

スポーツムードを演出するデザインとは

 エクステリア、インテリアの両方に関係し、中から見た外の景色や、ヒップポイント(座面の高さ)のほか、シートのホールド※といった機能的なデザインも関係する。これらがよく作られていると、シートに座るだけで乗る人の気分を高揚させる。スポーツカーのカラーに赤がよく使われるが、これも気持ちを高揚させる演出の一つである。  スポーツカーにはスポーツカーらしいボディデザインが望ましいが、エアロパーツやホイールを変えてドレスアップしたところで一般からの注目度は低く、自己満足に終わるのがオチだ。
※シートの重要性について

     滑りやすいシートはそれだけで走る気力を萎えさせてしまう。シートはホールドがよく、疲れにくいことが重要である。コーナリング中の横Gを支えるには肩のホールドが重要になる。膝で支えるためのアクセサリもあるが、実際肩の方がずっと支えやすい。シートに座ったら、背中が左右に滑りやすくないか、肩をシートの左右に押しつけた状態で、ハンドル操作に支障がないかがチェックポイントだ。高級車には皮シートの設定もあるが、滑り止めのない皮シートは、スポーツカーのシートには適さない。

5.適度な動力性能(パワー、トルク) 必要以上のパワーはかえって害になる

 スポーツカーというと、真っ先に目がいくのは「何馬力」といったスペックかもしれない。スポーツカーにとってパワーは大切な要素だが、走りの気持ちよさと、馬力の大きさは必ずしも比例しない。高性能なクルマに乗ったことの無い人は、スポーツカーに「加速感」を期待し、これに憧れるケースが多い。しかし実際は、過剰な加速感は多くの人にとって不快だ。例えば、R32 GT-Rは目の前がブラックアウトしそうになるほど強烈な加速をするが、吐き気がして楽しむどころでは無くなってしまう。
パワーについては「大は小を兼ねる」と考える人がいるかもしれない。しかし、パワーが大きいほど足が固められ、タイヤの扁平率も高くなる傾向にあり、乗り心地(快適性能)やステアリングフィールの悪化を招く※。この点から、必要以上のパワーは無駄なだけでなく、スポーツフィールの多くを失う原因になることを知っておいてほしい。
 ※大馬力のクルマには扁平率の高いタイヤが付いてくることが多いが、205/55より幅をアップしたり扁平率をあげると路面のおうとつにハンドルを取られやすくなって不快である。

6.車重、慣性モーメントは小さいほどよい

 車重と慣性モーメントは運動性能に決定づける要素になる。車重が軽く慣性モーメントが小さいことは、加減速のみならず、操作入力に対する応答の早さ、出足など、あらゆる面にプラスとなる。  インプレッサSTiのように装備を後付して100キロ重くなったケースがある。装備を増やすのは簡単だが、軽量化はそう簡単に出来ない。100キロの重さは、加速時に数百キロの重さに等しくなる。「軽い」ことは、いかなる装備、パーツよりも価値あることを知っておいてもらいたい。
スポーツカーに許される最大重量は、これまでの経験上、1.3トン前半が限界であって、車重が1.4トンを超えるといくらパワーがあってもいろんな操作に対する応答が鈍い。慣性の大きさを、パワーで補うことはできない。

7.適度なスタビリティ

 クルマのパワーに対して適度なスタビリティというものがある。パワーに対してタイヤのグリップが勝ち過ぎていると、つまらない、面白みのない結果になる。  ハイグリップを特徴とするスポーツタイヤは、必ずしも必要ではない。  駆動方式はFR,RRが望ましい。4WDは加速や悪路走行といったクルマの性能を高めることに有利だが、スタビリティが高すぎると面白みの無い結果になりやすい。

8.快適性能について

 エンドユーザーが楽しむスポーツカーでは「快適性」も必要な条件である。ロードノイズが大きい、突き上げが強くて乗り心地が厳しい、操作系が重くて疲れるようでは「走りを楽しむ」ことが出来ない。  動力性能と引き換えに快適性能を犠牲にしたハイパフォーマンス・カーは多い。このようなクルマに乗ると最初は感激するが、30分も経つと疲れてクルマを降りたくなってしまう。

9.ライフスタイルの演出について

 スポーツカーは、「カッコいい」ライフスタイルを演出できる道具だ。これをうまく利用すると、見る人の「視線」「表情」によってうれしい気分になれる。これは上述したクルマ自身の特性はあまり関係なく、外部に与える印象だけで決まる。つまり、「見た目」「音」といったものだ。
これはクルマだけでの問題ではなく、オーナーとセットで見たときのバランスが重要になる。オーナーの「ファッションセンス」や「美的感性」がクルマと同レベルでないと見る人に違和感を与える。クルマのデザインレベルが高いほどオーナーにも高いセンスが要求される。  日本はセンスと無縁な人が多く、立派なクルマを持っていても「成金」「クルマおたく」「ヤンキー」のどれかに見えてしまうケースが多いようだ。

10.タイム(速さ)は重要でない

 競技目的でクルマを求める人はごく一部だ。ところが世間では、「速い」だの「遅い」だの、「どこぞのタイムが何秒」とかいった議論が活発で、速さがスポーツカーの重要な指標と思いこんでいる人が多いようだ。速さに関する性能は、公道しか走らないユーザにとって本来どうでもよいことである。それに、速さを追求すると、5項でも述べたように乗り心地やステアリングフィールなど、「走りの楽しさ」を生み出す多くの要素が犠牲になる。  インプレッサSTi、ランエボなどは、どちらかといえば競技向けのクルマであり、「走りの楽しさ」を求めるエンドユーザが選択するクルマではない。

 エンドユーザがスポーツカーに求めるのは、結局「気持ちの良い走り」ではないか。ところが、多くの人が「気持ちの良い走り=大パワー」と勘違いし、大馬力のクルマをフンパツして買って、普段はその性能を生かす機会もなく、厳しい乗り心地を我慢しながら乗っているケースが多いように思う。 上記の特性を頭に入れた上で、自分に合ったスポーツカーを探して欲しい。パワー、車重、スタビリティがバランスしているクルマは軽く感じられ、キビキビ思い通りに走れる。低速でも十分な体感加速度が得られ、ゴーストップの多い日常ユースでも運転の楽しみを存分に味わうことが可能だ。

 

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